
オンもオフもココで!
絵のような中庭と壁一面に8000冊の書棚
中庭を一枚の絵のように眺めるロの字型のプラン
新天地の条件としてこだわったのが、自然に恵まれた閑静な住宅街で、ご夫妻の趣味である散策、芝居やクラシックコンサートを気軽に楽しめる住環境にあること。
たとえば、毎日自宅で仕事の原稿を書きつつ、ちょっと気晴らしで散歩したいというSさん。自宅でスケッチや庭づくりを満喫したいというご夫人。お二人が思い描いたライフスタイルを実現できる街として選んだのが、自然と文化が息づく古都鎌倉だった。
購入した土地は、広大な鎌倉中央公園に隣接する高台で、富士・丹沢の山々を一望できるロケーション。春になるとさらなる美しさを演出する桜の彩り、年間を通して柔らかく降り注ぐ陽光や海風も心地よい。「最高の土地を探すことができたので、次に、夢を形にしてくれる建築家をだれに依頼するか。慎重に選ばせていただきました」。
複数の建築家との面談を経て、ご夫妻が指名したのが、東京・豪徳寺でHAN環境・建築設計事務所を主宰する松田毅紀さん。「家自体の力で夏涼しく、冬暖かいを実現する、パッシブデザインの考え方に共鳴したので」とご夫妻は決め手を語る。
熟慮を重ね決定した家づくりのテーマは、家のどこにいても自然を感じられる住まい。「外に出る気にならないくらい快適な空間でありながら、ふと散策に誘われるほど戸外の魅力も感じていただける家を目指しました」と松田さん。
完成した住まいは、建物の中心に植栽を施した中庭がある「ロの字型」の2階建てコートハウス。戸外にも適所に前庭や和庭を設け、家のどこにいても緑の癒しを感じられるように。実際に出て楽しむ庭、眺めるだけの庭など、それぞれの性格をはっきりさせて植栽を施した。ご夫妻の一番のお気に入りはリビングだ。「ソファに座り、中庭を1枚の大きな絵画のように眺めたい」という希望を受け、窓枠やブラインドのたまりを隠す工夫がなされている。リビングは壁や天井を白で塗装し、中庭は壁に黒の杉板を採用することでコントラストをつけているのも秀逸だ。
また、約8000冊余りの書籍を収納する本棚をつくることも、プランの前提条件にあった。そこは、コートハウスならではの外壁の長さを活用して、本棚を分散配置。空間の連続性を損なわずに十分な収納量の確保を実現した。読書家のSさんは、2階西側のレストルームで、丹沢の山を眺めながら読書を楽しむこともあるという。
「都心のマンションにいた頃と、生活がまるで変わりました。朝は鳥の声で1日が始まる」と爽やかな笑顔。「快適すぎて、オンもオフも自宅で過ごすことが多い」というご夫妻だが、休日になると、ふと由比ガ浜までウォーキングしたり、映画や芝居を鑑賞したりという生活を楽しむ。鎌倉への移住、そして松田さんに依頼したことを心底喜んでいるご様子だ。
湘南特有の気候を活かしたパッシブデザイン
また、夏対策として、厳しい直射日光を遮る落葉樹やパーゴラを庭の各所に設置したり、排熱換気を重視した高窓を設けたり。冬対策として、柔らかな陽光を部屋の隅々にまで採り込む窓を配置したり、断熱性を考慮して窓周りに障子やブラインドを設置したりと、自然と寄り添う暮らしを提案。このようにパッシブデザインを多く取り入れたプランは、松田さんならではのこだわりである。
【松田 毅紀さん コメント】
住まいは建物だけでなく、家の中から見る景色、つまり庭のあり方までしっかりと検討すべきと考えます。Sさんご夫妻も同じ感覚をお持ちだからこそ私をご指名くださったと思います。一緒にプランニングして、楽しかったですね。
【夫婦】
週送られてくる図面に意見や質問を添えて送り返す、訂正された図面にふたたびコメントをつけてより良いものを練り上げる。家づくりの時間はとても充実して喜ばしいものでありました。建築家と四つに組んで家を建てるなら、聞く力のある松田さんは得がたいパートナーになってくれます。
基本データ
| 所在地 | 神奈川県鎌倉市 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | S邸 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

ここだから住みたい、ずっと住みたい 永く愛され地域と共に歩む集合住宅
住まう人を満足させるだけでなく、収益性も満たさねばならない集合住宅の建築。とかく、「効率的で利回り良く建てる」ことばかりに眼が行きがちな集合住宅づくりに一石を投じたのは、アリアナ建築設計事務所の三野さん。高いデザイン性とオリジナリティーで「ここに住みたい」と選ばれ、長く住み続けてもらえる住宅が完成した。 三野 貞佳 みの さだよし アリアナ建築設計事務所 大阪市北区

深い軒が生み出すコミュニケーションと 庭の景色を楽しむ唯一無二の家
施主は70代の夫婦。100歳を超えるお母様も快適に暮らせ、ときには家族や友人なども集まれる、人生の最終章に彩りを与える家づくりを任せたのは、自然や周囲の街並みと調和し、カタチとしての美しさだけでなく、心さえも動かす建築家、高橋翔太朗さんでした。

沖縄の気候風土、文化を熟知した匠がつくる 混構造と赤瓦屋根の二世帯住宅
本土と気候風土や文化が大きく違う沖縄の家づくりには、沖縄ならではの知識や工夫が必要。沖縄で生まれ育ち今も沖縄を中心に活動を続ける建築家、山城さんは建築士歴50年を超えるベテラン建築家。沖縄を熟知した匠の家づくりに迫る。

“スープの冷めない”程よい距離感。 二世帯住宅における、ひとつの最適解。
県道から坂道を上った小高い住宅地に佇む、落ち着いた雰囲気のL字型の住宅。ここは、みのわ建築設計工房の箕輪裕一郎さんが設計した自邸「大泉寺の家」だ。「二世帯の距離感」をテーマに、自身が生まれ育った家を建て替え二世帯住宅としてプランニング。さて、箕輪さんが導き出したその「距離感」とは。そして、家を設計する際にいつも心がけていることとは──。

土間が暮らしに広がりを生む2階リビングの住まい
お子さんが生まれ、マンションでは手狭になり、新たな住まいを計画したSさん夫妻。祖母から受け継いだ土地があり自由設計で考えたい、また建材を把握して自然にやさしい家を建てたいという思いから、知人の紹介もあって建築家の道家さんと家造りを行うことに。完成したのは大きな土間を1階に設け、家族が集うLDKを2階にレイアウトした、ちょっと個性的な家。その狙いとは?道家さんとSさん夫妻の家造りの工夫に迫りました。

築40年の日本家屋の梁や構造材を活用し 古民家然とした和モダンな家にリフォーム
「新築にはない魅力を引き出すこと」それが建築家・森さんのリフォームへのこだわり。今回紹介するN様邸はリフォームコンクールの受賞作品で、そんな森さんの設計思想を体現した実例。もともと使われていた構造材を活用し、N様の快適な暮らしに適した減築や改修を施して、和モダンな平屋に生まれ変わらせている。

常識を疑え! 北?に開いたリビング、屋内?にもなる縁側
"南向き信仰"が根強い日本では、家を建てるとなると、多くの人が当然のように“南向きの大開口”をイメージすると思う。でも、敷地条件や設計の工夫次第では南に大開口を設けなくても、明るさも風通しも申し分のない家が出来る。里山のふもとに佇むU氏邸は、そんな当たり前のことを改めて教えてくれる家でした。

野辺山の広大な自然に調和する伝統工法の佇まい
都会から緑豊かな野辺山に移り住んだご主人と奥様。野辺山が見渡せる大地に「こんな家に住みたい」との希望を叶え、自然素材のみを使用した伝統工法の住まいが完成する。そして広大な自然と調和した、心地よい新生活が始まった!

3階居室を確保するスキップフロアのある狭小住宅
「ここに家を建てることができるのか、まずそれが問題だった」というM様邸。電気なしでは昼間でも薄暗かったという家が、今はたっぷりと自然光が降り注ぐ家に。ご実家の床屋さんを見事な狭小住宅に生まれ変わらせたM様邸は今、狭小住宅を望む人の憧れの家だ。
