
何かが違う…。何が違う?
木造に見えない、上質モダンな木造住宅
どこまでもすっきりと、シャープに。
RC造のようにモダンな木造住宅
木造でもモダンな住宅はあるが、どうしても「木造感」がどこかに残る……と思っていたら、究極にシャープな木造住宅をつくった建築家がいた。八田政佳建築設計事務所の八田政佳さんだ。
千葉県船橋市の住宅街に立つI邸は、八田さんが設計した2階建ての木造住宅。施主さまはご夫妻と小学生のお子さま1人の3人家族である。
デザイン性の高い住宅を希望していたIさまが、開口一番に八田さんに伝えたのは「木造に見えない木造住宅にして欲しい」というリクエスト。このお題に対し、どんな思考を巡らせたのかを八田さんはこう振り返る。
「最初に考えたのは、“木造らしさ”。木造らしさを消せば、ご要望に沿う住宅になるのでは?と思ったからです」
完成したI邸は、全面が大判タイル張りの高級感あふれる住宅だ。フラットな屋根や正面の袖壁など、RC造を思わせる外観デザインが目を引き、「木造住宅に見えない木造住宅」を見事に体現している。
しかし、なぜI邸は木造に見えないのか。何かが違うことはわかっても、それが何なのか、素人が見抜くのは至難の業だ。すると八田さんは「マニアックなこだわりの積み重ねなんです」と笑いながら、実に興味深い工夫とこだわりを教えてくれた。
プロの視点と対処法で、
木造らしさを消した3つのポイント
1つは、「勾配屋根」。RC造住宅の屋根はフラットで、ナナメの屋根は非常に少ない。そのためI邸では、屋根はもちろん玄関ポーチの庇も肉眼ではわからないほどの勾配で水はけを確保。勾配屋根のない整形の住宅に仕上げ、RC造らしさを生んでいる。
2つ目は「外壁と同面のサッシ」だ。いわれてみると、RC造の住宅では窓が奥まったデザインをよく見かける。そこで、I邸では道路側の外壁の一部を凹まして、凹んだ部分に窓を設置した。
3つ目は「土台水切り」。これは建物の土台となる木材に雨水が侵入しないよう、外壁の最下部に取り付ける金具。八田さんはこの点も、「外壁は大判タイルをたくさん張りたい」というIさまの要望もくみ取って、全面タイル張りが可能な金属構法を取り入れることでクリア。雨水侵入防止や床下換気に配慮しつつ、タイルを地面まで張り伸ばした。
少し補足すると、接着剤で大判タイルを張る場合、落下リスクを考慮して、木造住宅では一定の高さまでしか張れない製品がほとんどなのだという。しかしI邸のように、外壁に取り付けた金属レールにしっかりとタイルを留め付ける金属構法なら高い位置もOK。全面タイル張りが可能になる。
3つのポイントは高度な知識と技術を要することばかりだが、「僕が大切にしているのはどんなことでもあの手この手で考え抜き、ご要望をかなえる。それだけです」と八田さん。
実は、前述の金属構法のコストは一般的な接着剤使用の場合の約4倍。高額なので八田さんも普段は提案しないが、デザイン性を重視するIさまに選択肢の1つとして提示したところ「それでもやりたい」とおっしゃったのだという。
八田さんは「施主さまが選べることを大事にしたい」と話す。自分のアイデアや、専門的な視点でどれだけこだわったかを決して施主に押し付けない。要望に沿いながら常に「選ぶ自由」を提供し、きっちりと結果を出す。そんな設計スタイルも、八田さんが多くの施主に支持される理由なのだろう。
白い玄関ホールとホテルライクなLDK。
豊富な引き出しで希望をかなえる建築家
まず、強烈なインパクトがあるのが玄関ホール。広々した白い空間で目に入るのは屋外の緑、そして浮遊感のあるオブジェのような階段。白だけで構成されているが、微妙な色合いや素材の違いで不思議と表情豊か。ファッションでいえば上品なワントーンコーデ風で、美術館や高級アパレルショップを思わせる空間だ。
裏庭と中庭に面し、たっぷりの外光や緑に彩られたリビングダイニングは約30畳。床、天井、壁は外壁と同じ大判タイルや自然塗料の左官塗りで、こちらも素材の質感が美しい。
また、よくよく見ると照明器具の姿がない。Iさまの好みに合わせ、邸内のメインスペースは間接照明オンリー。柔らかく広がる光は空間の美しさを引き立て、高級感をランクアップさせている。
八田さんは細部も丁寧にデザインしていて、エアコンは目につかないようキッチンの天井裏に設置。ドア枠や巾木も目立たないように設計している。洗練を極め、心からくつろげるホテルライクなLDKは、そうした細やかな配慮の集大成なのだ。
とはいえ、八田さんは、決してデザイン至上主義の建築家ではない。
例えば巾木はないほうがすっきりするが、掃除機などがぶつかる衝撃や汚れから壁の最下部を守る重要な役割がある。だから八田さんは「なくす」という判断は絶対にせず、I邸では巾木が見えない入り巾木としている。
「性能を落としてまでデザインをよくしようとは思いません。住宅設計は芸術品をつくっているわけではなく、生活をつくるものだと思うので」
八田さんの話を伺い、過去作品も拝見して思うのは、建築技法やデザインの引き出しが非常に豊富だということだ。
たとえカッコよくても住みにくければ本末転倒。その点、どんな要望も知識とスキルをフル稼働して応えてくれる八田さんなら、間違いなくハイデザインで住みやすい家ができるだろう。I邸とは真逆な「木のぬくもりを感じる家」だって、びっくりするほど素敵につくってくれるに違いない。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 西船橋の家 |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県船橋市 |
| 敷地面積 | 332.87㎡ |
| 延床面積 | 208.11㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 5000万円台 |
| 施主 | I邸 |
設計者情報
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