
築40年マンションが洗練空間に一新。
水まわりも移動して理想の間取りに
水まわり移動で間取りの自由度アップ。
リノベーションの盲点も見事クリア
リノベーションに向けての要望の1つは、「窓のないバスルーム」を「通気性の高い、窓のあるバスルーム」に変えることだった。
しかしここはマンションで、窓の新設はできない。つまり、この要望は必然的に「窓のあるスペースにバスルームを移動させる」ことを意味し、大きな課題になる可能性があった。なぜなら古い集合住宅で水まわりの位置を変えるのは、難しいとされるケースが多いからだ。
設計を担当した八田政佳さんによると、「水まわりの移動が課題になりやすいのは、配管工事によって室内に何らかの影響が出ることが多いからです」とのこと。
とはいえ、「古い集合住宅でも、水まわりを移動できるケースはたくさんあります」と八田さん。なんとも頼もしい言葉のカラクリはこうだ。
このお宅の場合は水まわりの位置を変更すると新たに排水の勾配を取らねばならず、勾配を取るには床を5cmほど上げる必要があった。床が5cm上がるということは、その分、天井が低くなるということだ。
「ですので、リノベ後の天井高は近年のマンションより少し低めになっています。でも、そういった一部の影響を許容すれば水まわりを移動できるケースは多く、間取りの自由度がぐんと高まります」
また、八田さんいわく「天井は高いほどいい」というものでもないという。「空間を『心地いい』と感じるポイントは、高さ・幅・奥行きのバランスのよさ。それでいうと広さ55㎡ほどのこのお宅では、天井高はある程度おさえたほうが落ち着く空間になると考えました」
施主さまもこの提案に賛同し、玄関脇の窓のある個室を水まわりにする間取り変更が可能となり、希望は無事かなえられた。
プロからすると住宅で一番大切なのは躯体で、次が断熱と水まわり。どんなにデザインや使い勝手がよくても、ベースがしっかりしていないと住みにくい家になるという。
「今回、水まわりの移動で配管が全面的に新しくなりました。リノベーションは内装に気を取られがちですが、『見えないベーシックなところ』をケアする意識も必要。そうすれば、また何十年も安心して快適に過ごせる住まいになるはずです」
家族が一緒に過ごせるおおらかなLDK。
キッチンは料理好き羨望の魅力がいっぱい
当時、結婚したばかりの施主さまは、将来的に家族が増える可能性が高い状況といえる。しかしリクエストは、「3LDKのマンションを1LDKにする」というものだった。
というのも、このマンションで育ったご主人は男3人兄弟の5人家族で、朝から晩まで全員がLDKにいる暮らしを送ってきたのだそう。「その生活が楽しかったので」と、自分が子どもをもっても、1つの空間で家族が一緒に過ごせる住まいを望んだのだ。
玄関から奥のLDKに続く廊下の両サイドには2つの個室があったが、1つは先述の通りバスルームになった。残りの1室は家族の寝室として残し、奥のLDK+和室は和室をなくして広々したLDKに。南の窓から広い範囲に燦々と光が入る心地よい空間に一変した。
中でも料理が趣味という奥さまの希望を細やかに取り入れ、八田さんが設計したオリジナルキッチンは、料理好きにとって理想的なスペースになっている。
カウンターは奥さまの身長に合わせてあり、シンクのフチは、洗い物の際に食器をちょっと置くこともできるよう幅を取って設計。天板の奥行きも115cmと、一般的な90cmよりかなり大きい。「天板はダイニング側にせり出したデザインなので、スツールを置けばカウンターとして使えます。2人の生活なら食事もできますよ」と八田さん。お子さまが生まれ、成長したら、ここで勉強するのもいいだろう。
背後にはカップボード、サイドにはパントリー収納と、収納も豊富に造作。家電や食器、買い置き食材がすっきりおさまるうえ、家事動線も抜群だ。
もちろん、住戸全体の内装デザインも大幅に一新した。「シンプルモダン」という施主さまのリクエストに応え、壁は白、床はダークブラウンのフローリングに。造作家具や建具は床と同じ素材を用い、統一感のある洗練された空間となっている。
築古の集合住宅・55㎡という制約条件の中で、八田さんはプロならではの知識と発想で間取り、使い勝手、デザイン性の全てを格段にグレードアップし、快適な新生活を後押しした。現在、施主さまは2人の男の子に恵まれ、広々したLDKはお子さまが走り回る格好の遊び場に。リノベーションの際に思い描いた「家族が一緒に過ごす生活」に、とても満足しているという。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
|---|---|
| 延床面積 | 55㎡ |
| 間取り | 1LDK |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | H邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

迷ったときは建築家に相談!2000万円台で実現した、2つの「壁」を持つ注文住宅
注文住宅には憧れはあるけれど、建築家に依頼すると高そうだし、ハウスメーカーの方が何となく安心かも…。このようなイメージを持っている人は少なくなさそうです。今回、ハウスメーカーとどちらに依頼するか迷った末に建築家に託し、結果として理想の住まいを手に入れることができたBさんご夫妻。周囲の景観に馴染みつつ、Bさんご一家が心地良く暮らせる住まいが完成に至るまでの経緯を、髙濱史子建築設計事務所代表の髙濱 史子さんにお話しを伺いました

次は夢の地下ゴルフ練習場?120%満足だから、また建てたい!
初めは家を買おうとしていた山田さんご夫婦は家を建てることになり、自分たちが住む家を考える機会に恵まれました。初めに描いた夢こそ実現しませんでしたが、ふりかえれば家づくりは楽しい時間でした。あれこれ考えて建てた家は自分たちの家だという実感がわきます。

安心の伝統工法、現代の耐震性能の両立は、かくして実現された!
本当に安心して暮らせる家――、それは建て主自身が、「何を使って、どう建てたか」をよくわかっている家なのかもしれません。建築家と協力しながら、建築資材の一つひとつまで自ら吟味し、信頼を寄せる伝統工法にこだわって建てた、納得のわが家です。

モットーは施主様のキャラクターに合う家作り 心地よく、長く住まい続けられるために
滋賀県大津市に、とても目を引く建物が誕生した。広大な横長の敷地に、1階がカフェで2階が住居、そして施主様(グラフィックデザイナー)の事務所小屋が同じデザインで建てられている。とある名所にほど近い場所にあるため、この敷地の前を多くの方が通り、足を止めて建物を眺める人も多い。この作品が誕生した背景をご紹介しよう。

縦にも、横にも、上下にも広がる空間使い 敷地の周囲の緑を暮らしに取り入れた家
「どういう家なら楽しく住めるか」を考え、住むプラスアルファの要素を加え、他人に自慢できる家をと、常に住む人の暮らしのことや家づくりの満足度を意識しているという建築家の塚本さん。そんな塚本さんが設計事務所を起ち上げて最初の顧客となるM様邸は、敷地条件を生かしたコンセプトワークにも注目してほしい。

建物の15度回転と室内の段差が創り出す カーテンがいらない平屋の快適生活
神奈川県の北鎌倉に、独創的な平屋の住宅が誕生した。この作品が持つ特徴は主に3点。最大1mの敷地高低差を、室内の段差で解消した点。建物を15度回転させるだけで、プライバシーを確保した点。夏でもエアコン1台で過ごせる費用対効果が高い断熱性を確保した点だ。工夫が詰まったこの作品をご紹介しよう。

和と洋の融合で自然と調和 人生の最終章を豊かにする夫婦の住まい
子供たちが巣立ち、夫婦2人だけの生活となったとき「新たな住まい方を、長く住み慣れたこの地で」と思う方も多いことだろう。そんな施主の思いを汲み、暮らしやすさとデザイン的な美しさも兼ね備えた家を設計したのは、KATIS建築設計事務所の石川厚志さん。人生の最終章を豊かにする夫婦の終の棲家に迫る。

1棟4役? 毎週3時間かけて通いたくなる 富士山の見える別荘
あるときは、家族が休日をのんびり過ごす別荘として。あるときは、社員の保養所・研修所として。またあるときは友人や取引先を招く迎賓施設として。さらには一人集中して仕事に没頭できるプライベートオフィスとしての顔をもつ建物。非日常の高級感と使いやすさを兼ね備えたセカンドハウスを作ったのは、建築家の牧野嶋さんでした。

何かが違う…。何が違う?木造に見えない、上質モダンな木造住宅
「木造に見えない木造住宅」という施主のリクエストに応え、まるでRC造のようにモダンな住宅をつくった建築家の八田政佳さん。どんな希望も全力でかなえようとする設計姿勢、技術・デザインの引き出しの多さで人気を博す八田さんの家づくりの魅力とは?


