
狭小地でも明るく広々。
木のぬくもりに包まれるカフェ風リビング
敷地条件・予算のバランスを取り、
「好きなもの」を最大限に楽しむプラン
「敷地は約19坪とコンパクト。加えて、以前のお住まいを建てたときから法律が変わっており、現行法では建築可能な面積が減ることは避けられませんでした」と吉田さん。「明るく、広く感じられる家」「木のぬくもりを感じたい」「美術品を飾りたい」というリクエストに応えるため、まず決めたのは建物を2階建てにすることだった。
「敷地がコンパクトな場合、3階建てにして延床面積を増やそうと考える方も多いでしょう。しかし、延床面積が増えればその分、費用も高くなります。Mさまは奥さまと2人暮らしなのでそこまでの広さは必要ないでしょうし、自然な木の素材感をお好みで、美術品を飾るスペースなども望んでいらっしゃいました。そこで、建物は2階建てにして延床面積を抑え、内装や美術品スペースにご予算を充てたほうがいいのでは、と考えました」
吉田さんはいつも、こんな風に予算とのバランスを考えながら「欲しかったもの」を一番いい形で提案してくれる。もちろん、Mさまもこの提案を気に入ってくださり、1階にご夫妻の個室と水まわり、2階にLDKというプランで家づくりがスタートした。
気になるかわいさのある佇まい。
仕切りを設けず「広く感じられる家」に
角地という立地を活かしたファサードも印象的だ。角の部分を切り取った玄関ポーチの前から全体を見ると、シンメトリーですっきりとしたデザイン。なのに、どこかぽてっとした愛らしさもあるのはいかにも吉田さんらしい。
そんなキュートな建物の中に、Mさまが望んだ「明るく、広く感じられる」空間はあるのだろうか? ちょっと疑問を抱きつつ2階に上がると、驚くほどのびやかな空間が広がっていた。まず、階段をのぼりきると正面にキッチン・ダイニング。左手には天井の高いリビングと畳スペースがあり、南の窓から明るい陽光が差し込んでいる。
「Mさまは木の素材感がお好きなので、リビングは小屋風にしてみました」と吉田さん。その言葉通り、リビングは天井も壁も板張りで、3方向に勾配がついた天井はとても高く、居心地のよいカフェを思わせるおおらかな空間。対してキッチン・ダイニングは天井高を抑えてあり、ベースカラーは白で統一。畳スペースはリビングより床が高く、内装テイストも全く違う。
実は、これは吉田さんの計算の1つ。狙いは空間ボリュームや内装を変えることでスペースを分け、間仕切りをなくすこと。天井の高さはそれだけで広がりを生むが、さらに仕切りがない大空間にすることで、コンパクトでも広く感じられる家を見事につくり上げたのだ。
照明や家具も気軽に相談。
建築家とともに家をつくる楽しさ
注目したいのは、これらのMさまセレクトのアイテムと吉田さんがつくる空間が、とても好相性なことだ。吉田さんは内装の素材感や、光、動線、目線などにこだわり、Mさまの選んだものが映えるよう細やかに配慮。Mさまと吉田さんの絶妙なコラボレーションが、ギャラリーのように洗練され、カフェのようにくつろげるM邸を完成させたといえる。
「僕の設計は施主さまとの対話を重視して、ご要望やライフスタイルに合わせて提案していくスタイルです。Mさまも気になるものを見つけるとすぐに相談してくださり、その都度見せていただきながら空間を考えていきました。そうやって一緒につくり上げる過程も楽しんでいただけたらうれしいですね」と、ニコニコしながら語る吉田さん。
建築家というと、アーティスト的な気難しいキャラをイメージする人もいるかもしれない。でも吉田さんは、いい意味で、そんな敷居の高さを全く感じさせない人だ。それでいて、プロならではのアドバイスはきちんとくれる。建築家とともに家づくりを楽しみたい人にとって、願ってもないパートナーといえるだろう。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都北区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 61.63㎡ |
| 延床面積 | 83.18㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | M邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

築15年の鉄骨造の家を大胆リフォーム。 森のような庭を楽しむための贅沢な住まい
洋風な外観、建売住宅を彷彿とさせるインテリアの築15年の家を、リフォームすることに決めたお施主さま。素材感が楽しめる、格調ある家にしたいと考え建築家を探し始めた。依頼を受けた傳寶さんは、お望み通りの品格ある佇まいの家と、豊かな庭を実現。居心地も含め全てが上質な家ができた。

テーマは「日本建築の茶室」。光の陰影を生かした旗竿の家
一級建築士である手塚勝也さんが手掛けたのは、都内の旗竿地での家づくり。北斜面ということで採光に課題があったが、手塚さんはそこを逆手に取り「日本建築の茶室」をイメージした家づくりを提案する。そして完成したのは、光の陰影を生かした和の住空間だった。

明暗と空間にメリハリを 店舗のような落ち着きのある黒い家
奥様の実家の土地に親世帯・子世帯それぞれの家を同時に建てるという「究極の近居」を選んだYさんご家族。外観に統一感を持たせながらも、親世帯とは違った「自分達好みのテイスト」「自分達らしい生活」を実現した黒い家をつくったのは、空間づくりの匠空-KEN design officeの竹中さんでした。

趣味を超えた工房と理想の間取り!4年の設計期間を経た納得の家
家で仕事をしていて家事もこなすTさん。これからずっと過ごす家をつくるなら、納得のいくものにしたいと細部までこだわり抜きました。その甲斐あって、趣味のものづくりに没頭できる工房、お気に入りの椅子が映えるリビングと、どこをとっても申し分のない理想の家になりました。

エアコンが足もとに? 家族を笑顔にする 高気密・高断熱二世帯住宅
住まいにおける不満で挙げられることの多い「暑い」「寒い」といった冷暖房問題。それをたった1台のエアコンで解決してしまったのは、田口建築設計事務所の田口さん。新築のご自宅に導入した、次世代の空調「階間空調」の秘密に迫ります。

「展示場」として実際に見学できる 森の景観を活かしたホテルライクな邸宅
豊田市の住宅街にポツンと残された緑のなかに、『森にたたずむ邸宅』はありました。天然石による重厚な佇まいが目を惹くこの家を設計したのは長坂篤建築研究所(略称nalabo)。海外リゾートを思わせる、ホテルライクな邸宅の全貌を見ていきましょう。

家族が1つになる、1人にもなれる家 「ズレ」によってできる家族の「新たな間合い」
一見すると周囲の家々と馴染む普遍的な佇まいの家が、中に入ると驚きの空間に仕上がった。「普通であること」と「差異をつくること」を意図し、家族皆が大満足の家となった秘策「ズレ」に迫る。

光、風、音を感じながら、自然と共に暮らす森の中の別荘
暑い夏、涼しい場所で過ごしたいとの思いで別荘づくりを決断。 自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。 そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。 田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

那須の爽やかな景色と暮らし、冬も快適。 十字に重なるモダン邸宅
住み心地がよく、洗練された住まいを多数生み出している建築家の川久保智康さん。那須に建てたこの家は高原の美術館のような佇まいや、ホテル暮らし気分を味わえる邸内など、魅力は枚挙にいとまがない。「上質な建築に住まう幸せ」を実感できる住宅だ。









