
10年経っても自慢の住まい
施主の希望を実現し、長く愛される家

遠藤 千春
えんどう ちはる
Vent計画設計室
山梨県 甲府市
女性ばかりのメンバーです。 子育て・仕事と家事との両立・2世帯同居など、それぞれの経験を活かし、お客様にとって心地よい住まいを創り上げることがVent(ヴァン)のモットーと日々、設計に心を込めています。 戸建て住宅の設計・監理を中心に、木のぬくもりを活かした保育園等の中規模木造施設も設計・監理を行っています。
会ったその日に「この人に頼みたい」
2年越しの設計依頼
それから約2年。定期的に見学会の案内などを送ってはいたものの、特段のやりとりはなかったある日、1本の電話がかかってきた。「土地が見つかったので、お願いします」と。
「ずっと気にかかっていた方だったので、とても嬉しかったのを覚えています。ご実家からも近くの本当に良い土地で」と遠藤さん。
Kさんご夫妻は、この2年遠藤さんに家を建ててもらうべく、土地を探していたのだった。遠藤さんのつくる家や遠藤さんの人柄に「虜になった」と言ってもいいのかもしれない。遠藤さんは、施主に寄り添い、「共に暮らしをつくる」ことを実践している。そのため、対話をとても重視している。きっと最初の出会いのときも同じだったに違いない。初めて会ったKさんの奥様の話をきちんと聞き、適切なアドバイスをした遠藤さんを、奥様が信頼し「この人にお願いしたい」と思わせたのだ。
また、遠藤さんがつくる家もその人柄どおりの住まいだ。遠藤さんの知人が、遠藤さんにお客さんを紹介する際「この人のつくる家は、やさしいんだよ」というのだという。きっとこの「やさしい」には、いくつもの意味がある。「ほっこりと寛げる空間」「温かみのある家」「住んでいて暮らしやすい」などなど。
きっとKさんの奥様も、それを感じ取ったに違いない。
寒冷地なのに大きな吹き抜け?
暖かさも施主の好みも両立
Kさんご夫妻の希望の1つに、リビングの上の吹き抜けがあった。冬場は冷え込む山梨で、吹き抜けは難しいと感じるかもしれないが、そこは抜かりない。冬場の寒さ対策として、地中蓄熱利用の仕組みを取り入れた。地中の熱が24時間ゆっくりと放射され、家全体をゆるやかに温めるのだ。
これにより、リビングに開放感がもたらされた。また、お気に入りのテーブルが置かれたダイニングは、2面採光で陽光が降り注ぎ、一年中心地よく過ごすことができる。
L字型のオープンキッチンは、ダイニングテーブルに合わせ、ナラ接ぎ材を用いてオリジナルで考案。壁はタイルを貼り、Kさんご夫妻の希望のテイストを演出。棚のガラスもアンティーク調だ。ステンレスカウンターのL字の継ぎ目は、段差をつけてガスコンロ側を低くしている。
こうして、ダイニングテーブルにマッチした空間が出来上がった。
とはいえ、すべてKさんご夫妻のリクエストに従ったわけではないと遠藤さんは言う。「施主さんの言うことを全てそのまま受け入れると、全体のバランスが崩れることがあります。
そこをどうまとめていくかに、いつも心を砕いています」と遠藤さん。
遠藤さんは、じっくりと対話を重ねることで、施主が望むことの本質を見抜き、豊富な経験と卓越したスキルで、施主の予想を上回る結果を導き出す。だからこそ遠藤さんには仕事の依頼が絶えないのだろう。
自らが体験者だからこそ気づく
使い勝手の良い家に
玄関には、大きなシューズクロークが設えられた。そのうえ、室内に入ってすぐのところには、簡易的なオープンクローゼットも。ここにコートや当時まだ幼稚園児だったお子さんのバッグなどを置いておくことで、すぐに出かけられる。帰ってきたら、またここに置いておけば、出かけるときに焦ることもない。キッチン横には勝手口につながる大きなパントリー。車を複数台所有するKさんご夫妻。Kさんの車は、家からせり出した軒に停めることで、雨に当たらず家の中に入れる。一方、奥様の車は勝手口に停めることで、すぐに荷物をパントリーに収納できる。2階の通路には、窓を設け下階への光を導いただけでなく、サンルームのように洗濯物を干すのにちょうどよいスペースにもした。逆サイドの通路は、ご主人の書斎スペースも作った。
家事動線も、洗濯機のある洗面所からキッチン、パントリーへはリビングやダイニングを通らずに行ける。それだけではなく、ダイニング・キッチン・リビングが回遊できる間取りになっている。
こういった使い勝手のよさや利便性は、挙げていくとキリがないほど。Kさん邸に限らず、遠藤さんが手掛ける住宅には、細かな気配りが至るところに見受けられるのだ。
これは、遠藤さんが働く女性として、多くの仕事を抱えつつ、日常的に料理をはじめとした家事や育児をせねばならない環境で、「仕事・家事・育児」を効率的にこなすという、リアルな体験から得たものなのかもしれない。
リアルな経験を踏まえた提案は、施主に安心感をもたらし、実際に暮らし始めてから「思い描いていたとおりの暮らし」を可能とするのだ。
「お客さんの多くが、年月がたっても当時と同じような暮らしをされていて、リフォームしたいというお話が来ないんです」と遠藤さん。実際、Kさんの家も完成から10年を過ぎようとしているが、いつ訪問しても、当時とほとんど変わらないとのこと。幼稚園児だったお子さんは、大きくなった今でも同じ部屋で、姉妹それぞれの個性を活かした工夫をしながら過ごしているのだという。区切ろうと思えば簡単にできるようにしてあるにもかかわらずだ。これは、真に使い勝手が良いからに他ならない。
遠藤さんは、これからも施主とじっくりと対話を重ね、寄り添い、長く愛される「やさしい家」をつくることで家族の「理想の暮らし」を実現していくに違いない。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 山梨県甲斐市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 259.90㎡ |
| 延床面積 | 139.12㎡ |
| 間取り | 3LDK |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | K邸 |
設計者情報
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