
娘が望んだ南欧風に、
父が望む和の空間はどう収まったのか!?
親子の好みが違っても心地よく暮らせる二世帯住宅
連絡を受けて敷地を見に行き、その広さに圧倒された菅原さん。「周囲に遮るものが何もありませんでした。大きな平屋をつくってもまだ余裕があるほどです。」上から見ると、親世帯と子世帯を隣どうしに並べたシンプルな長方形で、各世帯の間に共有の玄関を置いた。
「コストとの兼ね合いもありますから、共有できるところはひとつにして、そのかわりに日頃、使う場所は立派にすることにしました。仲の良いご家族で、共有部分はわりとあっさり決まりましたね。ここはもう一緒でも良いよね、といった感じで」と菅原さん。
親子でゴルフに行くことも良くあるというHさんご一家。シューズクロークは共有にして、ゴルフバッグを置くスペースもあるゆったりとした設計にした。メインの水周りは共有しつつ、リビングと寝室、外のデッキ部分は完全に分離した。
「南欧風をご希望ということで、全体としてはリゾート地のゲストハウスをイメージしてデザインしました。お嬢さまは南欧風をご希望されていましたが、お父さまの方は今まで純和風の家に住まわれていたこともあって、畳で横になれる部屋が欲しいというお話がありました」と菅原さんは思い出す。お父さまの寝室は和室にして、仏壇や掘りごたつのある部屋もつくった。軒の出をこだわったのも、純和風の家に長年暮らしてきたお父さまだった。
昔の家の面影が色濃く残る親世帯に対して、子世帯は白を基調としたモダンなリビングに。外にはウッドデッキをつくって、オープンテラス風にした。「寝室には、ちょっとした遊び心でベッドのヘッドボードにあたる部分に、海外製のクロスで装飾をしました。一番奥に子ども部屋があるんですが、そこは生まれてくる赤ちゃんのために、明るいグリーンやティンカーベルの壁紙を選ばれて、ポップな感じになっていますね」と菅原さん。
共有部分は親子で話し合い、自分で決められる各世帯のキッチンは奥さまもお嬢さんも思う存分に悩んで、全体の打ち合わせの回数は40〜50回にものぼった。家族それぞれに自分で考え、選択した部分がある家。Hさんご家族の誰にとっても、我が家として満足のいく二世帯住宅になった。
作業効率と見た目を最優先した家事スペース
料理、洗濯、土地関係の事務仕事が効率よくできるように、キッチンを中心に洗濯機置き場やプリンターを置く作業台などをコンパクトに配置した。外から直接、この家事スペースに入ってこられる勝手口もあり、戸外からの動線も良い。
収納も綿密に計画した。しまいたいもののサイズや量を把握し、オリジナルの家具を製作。何がどこにあったら使いやすいかを考えて、家具の設置場所もしっかり確保した。家事に必要な生活用品も、大地主ゆえ膨大な量の土地関係の資料も美しくおさまった。
しかし、どんなに整えてはいても家事や仕事をしていれば、生活感は出やすくなってしまう。そこで、家事スペースとリビング側との間を完全に仕切れるようにした。ロールカーテンをしめてしまえば、来客時でもリビングの生活感は一切、感じられない。仕切ってしまえば、人目に触れることが望ましくない土地関係の資料も隠してしまうことができる。
菅原さんは、実際にご家族が生活し始めた後にも訪れたそうだが、部屋はきれいだったという。“片付く家”の真価が発揮されているようだ。
基本データ
| 所在地 | 神奈川県藤沢市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 497㎡ |
| 延床面積 | 203㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+両親 |
| 施主 | H邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

家族4人で一日中、真鶴の絶景を満喫。仕事も余暇も同時に楽しむための住まい
真鶴の雄大な海を眺めながら、ゆっくりお風呂に入りたいという希望からスタートした別荘づくり。建築家の德家さん夫妻は、くつろぎを得ることはもちろん、日常的に質の高い暮らしができる環境の家を計画。既存建物の解体から別荘の新築まで、トータルに担当したからこそ実現した贅沢さがあるという。

旗竿地、斜線規制…。土地のデメリットをみごとに解決! 開放的で明るい「スキップフロアの家」
東京の人気エリアに立つS邸。四方を家に囲まれた旗竿地でありながら、建物の中は驚くほど開放的で、室内には明るい光が降り注いでいます。地形、斜線規制といった土地の難点をデメリットと思わず、Sさんが思い描いた広がりのある空間を実現した山口健太郎さん。設計のカギは、空間と空間をゆるやかにつなぐ「スキップフロア」という発想にありました。

木や漆喰など、ナチュラルな素材を 生かした空間で、家族の自律も促せる家
「家づくりはお子様の教育にもつながるチャンス」と言う富田さん。家は住む人がどう使うかが大事と、家族全員を巻き込んでの家づくりを理想としている。暮らしやすさはもちろん、立地を生かしたデザインなど、設計士としてのこだわりを盛り込みながら、住む人の暮らしの将来設計まで考え抜かれた実例を紹介しよう。

【注文住宅の事例集】ナチュラル 戸建て 東京 水石浩太さん
内と外、2つを交差する境界があることによって、家の中にも外のような空間のある不思議なお家。建築家、水石さんの事例を是非見てください!

リノベvs新築!悩み抜いた結論が、住んでからの毎日を変えた
これから、どこでどう生きていくのか。住まいを定めるということは人生を考えることにもつながります。家を買った経験がある長谷川さんご夫婦にとっても、終の住処を考えることは、悩みや迷いと無縁ではありませんでした。

暮らしのリアルに寄り添う開放的な洗練空間 ピロティ&中庭付きのモダンな平屋
モダンな外観が目を引くこの家には、生活感のない洗練された見た目とは裏腹に、暮らしのリアルに寄り添う工夫が盛りだくさん。飾らない日常を真摯に見つめる中村喬さんの設計思想、完成した住まいにちりばめられた温かな心遣いを紐解く。

暮らしが広がる土間、吹き抜けリビング…。 こだわり溢れる「住まい手オリジナルの家」
東京の人気住宅地に佇むS邸。お施主様であるSさんのこだわりが細部にまで行き届いた、まさに「住まい手オリジナルの家」である。Sさんの要望をしっかりと受け止め、妥協することなく形にしたのは、Lods一級建築士事務所の幸地俊一さん。二人三脚で実現した理想の家づくり。その詳細をご紹介しよう。

夫婦、各々でやりたい事を実践するために 熱海の急斜面に建てた平屋の別荘
転がり落ちそうな崖地に別荘を建てられるのでしょうか? と相談を受けた建築家の米村さん。豊富な別荘建築と崖地斜面地の設計経験によって、お施主さまの要望を叶え満足度の高い別荘をつくりあげた。夫婦2人が心地よくすごすための、ワクワク感を大切にした空間づくりの極意に迫る。

家とともに人生を歩む。 日ごとに愛着が増す、ゆとりある家
小山田剛さんが自宅兼事務所として建てたのは、温もりあるシンプルな家。建築家としてだけでなく、夫、そして父親としての目線からも考えられた住まいは、大らかに家族を包み込んでいる。小山田さんが家の中に散りばめた「小さな豊かさ」をひも解くと、家と暮らしにおいて本当に必要なことは何かが見えてくる。


