
開放感抜群の、壁が少ない木造住宅。
SE構法が実現した、内部と外部が繋がる家
ここに家を建てるなら、と考え抜いて
選択した「SE構法」
自邸を建てるにあたり、土地探しから始めたという井水さん。1年ほど経ったころこの土地が見つかった。道路を挟んだ西側は生産緑地で、人の目を気にする必要もない。高台にあるため見晴らしがよく、富士山が見える日もあるそうだ。さっそく家のプランニングに取り掛かった井水さん。この土地が持つ利点である眺望を最大限に生かすため取り入れたのはSE構法という、木造でありながら鉄骨造のように木材でフレームを組んで家をつくる方法だった。
その理由を井水さんに聞くと「そんなに広い敷地ではないので、室内空間を最大限に広く、大きく見せたいと思ったからです。また眺望も生かせると考えました」とのこと。SE構法では一般的な木造に比べて柱や壁を少なくできるため、空間が区切られることなく一体感を持たせることができる。さらには、一番の魅力である見晴らしを十分に満喫するための大きな開口部もつくりやすくなるのだ。
それだけでなく、SE構法では集成材を使用するため構造計算ができる点も魅力だったという。無垢材を使用する場合、木材の種類や乾燥の具合によって強度が変わるためそれが難しい。井水邸のような木造2階建ての場合には構造計算は必要ないものだが、それでも、しっかりと構造計算をして耐震性などが確保されれば安心感につながる。「安心で丈夫な家をつくるという意味でも、SE構法は適していると思います」と井水さんは言う。
もちろん、一般的な木造の家にすることも考え、それぞれに模型もつくり比較検討を重ねたという井水さん。その結果、「眺望を生かす」「心地いい空間をつくる」「丈夫な家にする」という目指したい指針の全てにおいて、明らかにSE構法のほうが優れていると感じられたのだそうだ。
家の内と外が自然に繋がる。
全てが1つの大空間に感じられる心地よさ
キッチン・ダイニングと和室がひと続きになった2階は、広々とした和室をリビング的に使用できる間取り。SE構法を用いたおかげで空間を遮る柱がなく、また空間の仕切り壁を設けた場所も、天井と壁の間に隙間が空いていることから、2階全体が一つの天井の下に収まり、一体感がある。つまり、浴室から和室まで、それぞれ壁や引き戸で区切られてはいるものの、視線が抜けるので圧迫感がないのだ。
圧巻なのはダイニングに設けられた大きな窓。その幅はなんと3.5mもある。一般的な木造のつくりかたであれば窓の中心に支えとなる柱が必要になるが、SE構法のおかげで省くことができたという。室内の床面と窓から続くウッドデッキは高さを同じに、シームレスにつなげた。加えてダイニングの壁一面といってもいいほど大きな窓は、可能な限り壁の中に引き込めるように計画。窓を開けていると視界を遮るものがないため、ウッドデッキまでダイニングと感じられる広がりが生まれる。
井水邸のダイニングでお話を伺った日は天気がころころと変わったのだが、晴れていたときは小鳥のさえずりを間近に聞くことができ、その後、雨になると雨に濡れた緑の香りも伝わってきて、木陰で雨宿りをしている気分になった。一瞬ここが家の中であることを忘れてしまうくらいに、内部と外部が一体となっているのだ。
床面がフラットで、履物を変える必要もなくしたことで外に出やすいのも一体感が増している理由のひとつ。「天気がいい朝は、ダイニングのテーブルを半分だけウッドデッキのほうに出してご飯を食べたりするんです」と井水さん。朝の澄んだ空気と差し込む光で、さぞかし気持ちのいい朝を迎えることができるのだろう。
外部空間とのつながりを大事にする井水邸は、内部空間もナチュラルな雰囲気を大切にしたという。SE構法のフレームとして組んだ柱や梁をあえて隠さず、木材の質感を生かしている。ダイニングの大きな窓枠は木材を使用して特注でつくったほか、和室の窓の縦格子にも木材を用いた。他にも畳の質感が気持ちいい和室は壁面に珪藻土を、浴室には石材をと2階の空間全体にバランスよく自然素材のものを配置。自然を感じられる、この上ない心地よさを持った生活空間ができあがった。
いいなと感じる理由を積み重ね、
この土地だからこそできる家がある
エコを意識するという奥様の要望も、家づくりにしっかりと反映させた井水さん。例えば、切妻屋根の形が現れた2階の天井。東側は梁や構造材が見えるつくりになっているが、西側は梁を天井でカバーし、屋根と天井の間にいわゆる天井裏をつくっている。西側は日射の影響を受けやすく、熱が必要以上に室内にはいってしまう。天井裏には換気扇がついており、溜まった熱い空気を強制的に換気することで室内を快適に保つことができる。さらに、全ての窓ガラスは遮熱性・断熱性の高いLOW-Eガラスを採用。真夏でも2階全体を小さなエアコンひとつで涼しくできるというのだから驚きだ。
逆に、冬は大きな窓から豊かに光も入り暖かく過ごせるそうだ。「床暖房も付けたのですが、今までほとんど使ったことがないんです」と笑う井水さん。他にも太陽光発電を設置したり、エコキュートを取り入れたりと高い意識でエコに取り組んだ。
この家で暮らして10年以上が経つという井水さん夫妻。「心地よさは抜群です。長く住んであらためて、心地よさの裏には夫による計算や工夫がつぎ込まれているんだなということを感じています」とお話しになる奥様。普段さりげなく享受している心地よさについて、どんな小さなことを質問しても明確な答えが返ってくるのだそうだ。たとえば、テーブルと和室の掘りごたつ、ダイニングと和室それぞれにあるカウンターの高さを全てそろえていること。室内の使い勝手の良さは、こうしたさりげなく配された井水さんの計算によって生まれる。
「落ち着く高さって必ずあるんです。そこはミスをしないようにしました。私は建物を見に行くことが好きで国内外問わず出向きますが、いいなと感じることには必ず理由があるのがわかります。高さだったり、素材だったり、外部との関係だったりそれはさまざまですが、そういう『いいもの』をどれだけ取り入れられるか。家づくりはそれの積み重ねかなと考えています」と井水さんは語る。
井水邸づくりは土地探しから始まったが、こういう家が建てたいと考え土地を探したのではなく、この土地が見つかったからこの家ができたのだという。たとえ一般的に条件が悪いといわれる土地でも、基本設計を大事にすればその土地に合った家が必ずできるという井水さん。「土地に合う」ということは建物の形や内部空間の話だけではない。地域性や外部とのつながりも大事にし、地域に馴染むことも大切だという。「ライフスタイルを見極め、かつ土地にもこれが一番適しているというのを見つけるのが私の仕事です。お任せいただければ非常にいい家をつくる自信があります」と言い切る姿に、心強さを感じた。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都国分寺市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 118㎡ |
| 延床面積 | 94㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | I邸 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

目指すのは快適な「シュミグラシ」!現代の長屋が愛される理由
都心からおよそ40分。東武東京スカイツリーライン「蒲生(がもう)」駅から徒歩5分ほどの、約2,900㎡の土地に誕生したのは、「蒲生シュミグラシ WA nest(ワ・ネスト)」と名付けられた斬新な賃貸集合住宅です。趣味や仕事と暮らしが一体化した20の住戸に、地域に開かれたコミュニティスペースが併設された、「現代の長屋」。その魅力を、現地で探りました。

好きなモノと暮らす。こだわりを持った土間のある家。
武蔵野の緑豊かなエリアはここ30年ほどで宅地化が進み、住宅ばかりが続くロケーションに変貌した。だが、そんな環境の変化の中にあっても変わらないものがあり、今回取材に伺った場所には玉川上水が並行して流れ、そのロケーションをいかに生かすかが設計のポイントとなった物件だ。そんな立地を考慮し、暮らしの拠点として施主のこだわりに満ちたお宅にお邪魔した。

すぐ隣の母屋と庭を共有。視界いっぱいに 緑を取り込む大開口を実現した「斜めの軸」
親世帯の家が立つ敷地の一角に子世帯の家を建てる依頼を受けた建築家の平野さん。お施主さまが望む解放感を実現するためにも、母屋の緑豊かな庭を子世帯の家にも取り込みたいと考えた。ただ、家を建てるのは母屋のすぐ脇。いかに視線を庭へ向かわせ、母屋と程よい距離を保つか。可能にしたのは「斜めの軸」だ。

家族やペット・友人との寛ぎやテレワークも 自然豊かな場所に佇む上質セカンドハウス
キャンピングカーで全国津々浦々を巡っていた施主のAさん。車の買い替えを機に、拠点となるセカンドハウスを計画されたそう。その設計を任せたのは、顧客の「想い」を実現する家づくりに定評のあるef設計の木下さん。木下さんは、自然豊かな環境にマッチしたセカンドハウスを実現してみせた。

普段の提案をさらに探求し、実現した自邸 自分の居場所をそれぞれが見つける家
「美住のすまい」は、いのはな建築事務所の鈴木さん夫妻の自邸。普段お施主さまへの提案する事柄をさらに突き詰め、表現した家だ。コスト感にこだわり、メリットとデメリットを見極め適正な土地を選ぶことから、素材選びや間取りなどひとつひとつを吟味して、ライフスタイルに合った家をつくり上げた。

自邸に選んだのは築40年のマンション。 長く快適に住むためのスケルトンリフォーム
建築家の田中晴代さんの自邸は、結婚後に購入しリノベーションしたマンションの一室だ。この家で暮らして8年、家族構成や働き方が変化していく中でこうしておけばよかったと感じる点がひとつもないという。このおおらかさはどのように生まれたのだろうか。

四季の太陽の動きもバッチリ計算!徹底的に快適な家づくりとは?
転勤で東京暮らしのNさんは、地元長野へ戻るのを機に、自宅の建て替えを決めました。長野の気候風土に合った「明るく開放的な住まいづくり」をテーマに建築家選びを開始しましたが、依頼することにしたのは東京在住の建築家、冨田享祐さん。「自然の力を最大限に生かしながら快適な暮らしの場をつくるという考え方に共感できた」というのが、その理由です。

自然に囲まれ、便利に暮らす!妥協できない矛盾に答えた素材使い
お互いの定年を数年後に控えた、Yさんご夫妻。「庭をつくり、緑あふれる生活がしたい」、「とは言っても、今の便利な住環境は気に入っている」、そんなふたりの希望を叶えるために、建築家・松本直子さんがつくりあげた家とは?

諦めない情熱と経験が導いた光の家 2つの壁を乗り越え叶えた理想の住まい
「娘の家の設計をお願いできないか」──かつての仕事の先輩からの依頼を受けた 建築家・森田久雄さん。しかし取り掛かると次々と難問が立ちはだかる。検査済証のない地下室。それをクリアしたかと思えば、伸びやかな空間を阻む法規制が立ちはだかった。多様な物件を手掛けてきた経験と諦めない情熱で、森田さんは施主の期待を超える光あふれる住まいを実現した。 (共同設計者 SUGI architects 杉 拓磨)
