
まるで公園!広い庭とテラスで
内と外がつながる、開放的な住まい
全ての部屋からテラスを望む
外に開いた居住空間
打合せの際にKさんから葛西さんに伝えられた要望は、「移動が少なくて済むシンプルなデザインの平屋」。そして、「子ども部屋2室、リビングとご夫婦の寝室」、「屋根付の駐車スペース」、「低い天井高で落ち着いた空間」だったそう。それ以外は基本的にお任せということで、葛西さんのプラン作りは始まった。
Kさんが購入した土地は東西に長いため、必要な間取りを平屋で確保しても、どこかに空き空間ができる。この空きをどう生かすかを考えた末に思いついたのが、駐車スペースと建物を両端に配置し、その間の空間を公園のような広い庭とするプランだった。
380㎡の敷地のうち庭の部分が180㎡ほどを占めるという大胆な設計プランに、周囲の人も驚いていたよう。「建築中は誰も個人の家が建つとは思わず、公民館か何かを作っていると思われていたようです」と葛西さんは笑う。
こうして完成したK邸。道路側から庭スペースへの入口には白いエントランスが設けられており、公園と間違えて入ってしまう人がいても不思議ではないつくりである。さらに、駐車スペースも、人々が憩う公園の東屋のよう。まさに「誰でも気軽に入ってこられるような空間にしたい」。という、Kさんの想いが反映されたプランとなっている。
そして、さらにユニークなのが、K邸の間取りである。庭から両開きの扉を開けると、そこには庭に向かって広がるような台形のテラスが現れる。このテラスを取り囲むような形でコの字型にリビングや個室などの居住空間が配置されており、どの部屋からもテラスを通して外部空間を感じることができるのだ。
このプランを見たKさんはすぐに気に入り、一発OKをいただけたそう。「テラスと庭をつなげ、晴れた日には庭でバーベキューをするというイメージも膨らませていました」。と、葛西さんは振り返る。
建物の高さをミリ単位で調整し
周囲に溶け込む外観を実現
「内部空間と外部空間の関係性や可能性」を常に考えて設計するという葛西さん。
今回も公園の雰囲気に近づけ、空を近く感じられるよう、建物の高さはミリ単位で工夫したそう。建物の高さを抑えることで建物の圧迫感を下げ、コストも下げることができたのだという。
寒冷地ということで外部空間を取り入れることによる断熱の問題が気になるが、外壁の断熱を外張り断熱と充填断熱の付加断熱工法とし、床下空間にも寒冷地用のエアコンを2台入れ、冬でも温かく過ごせるのだそう。
その甲斐あってKさんも、新たな住まいでとても気持ちよく暮らしていらっしゃるとのこと。「リビング・居室がすべてテラスに開いているため、カーテンのない生活がとても開放的だそう。テラスから空が見えるところも気に入っていただけているみたいです」と、葛西さんも嬉しそうに笑う。
インタビューの最後に、葛西さんが設計するうえで大切にしていることについて聞いてみた。
「前述しましたが、やはり外と中をいかにつなげるか、周りの建物のたちかたや敷地の形状などを考えて工夫し、周辺環境からあまり閉じすぎないよう地域との接点をつくりだすことに気を付けています」。と話す葛西さん。今回の公園はパブリックなイメ―ジだが、外への開き方はお施主様の要望によって適宜考えているという。
自社施工ができるという強みも持つ、mizuiro architects 一級建築士事務所。K邸のように繊細に外部と内部をつなぐ家づくりも、設計視点・現場視点を兼ね備えているからこそ実現できることなのかもしれない。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 福島の家 |
|---|---|
| 所在地 | 青森県南津軽郡 |
| 敷地面積 | 386㎡ |
| 延床面積 | 153.84㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | K邸 |
撮影:JIGEN FOTOGRAFIAR
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

築36年の住宅をフル・リノベーション クルマ好きの建築家とつくり上げた「ガレージハウス」
ご両親が長年住んでいた一戸建てを活かし、新たな住まいをつくることを決意した40代のO夫妻。思い入れのある家をフル・リノベーションして誕生したのは、使い勝手のいいガレージと明るいLDKを有する現代的な邸宅だった。築36年の邸宅は、果たしてどのように生まれ変わったのか。設計を担当した高橋貴大一級建築士事務所の高橋さんにお話を伺った。

閉じたファサードの先に緑豊かな洗練空間。時間と空間の「レイヤーを重ねる家」
建築家の八田政佳さんが手がける家は、デザイン性と住み心地のよさを両立させていることが大きな特徴。重厚感漂うファサードの先に、緑あふれるくつろぎの空間が広がるM邸もその1つ。日常を豊かにする、時間と空間のつながりを意識した設計も必見だ。

庭の木々に遠くの山並み、籠れる離れまで いくつもの景色や居場所がある家
訪れた建物のフォルムや内装、居心地の良さに「素敵だな」と感じることは誰しもあるに違いない。そして「自邸をこの建築家にお願いしたいな」と漠然とした思いをもったことがある人もいるかもしれない。しかし実際にその建築家に連絡をとり依頼をするという行動を起こした人はほんの一握りだろう。施主のUさんご夫妻にそう思わせた店舗を手掛けたのは、京都を中心に活動する建築家田中郁恵さん。運命的な出会いから、どんな家をつくりあげたかに迫る。

ピアノを楽しみ、お昼寝も。家族をつなぐ吹抜けの広い土間
ハウスメーカーとの打ち合わせで「ピアノの部屋が欲しい」と要望したら、ピアノがぎりぎり入る小さな部屋を提示され、しっくりこなかったSさん。新たに相談を受けた建築家の松岡淳さんが提案したのは、なんとピアノを土間で楽しむという斬新なアイデアだった。しかもこの土間には、ほかにもさまざまな役割があるという。S邸の象徴的な空間となった大きな土間の魅力とは?

将来は店舗、文化教室、事務所にも変更可能 ライフスタイルの変化を想定した2世帯住宅
神奈川県藤沢市に、独創的な2世帯住宅が誕生した。湘南の気候を感じられ、大きな邸宅が残る街並みに溶け込んでいる。しかしこの作品の最大の特徴は、将来自由に建物の使用方法を変更できる点だ。そのため、特殊な構造を採用している。2世帯住宅を考えている方にとって、とても参考になる事例をご紹介しよう。

こんなに心地よい自然素材の上質空間!を低価格で実現の秘訣は?
「できるだけお金をかけずに、質の高い本物の木材で建てた家に住みたい!」。30代、共働きのSさんご夫妻は、建築家・市川均さんとともに、都会の喧騒を忘れさせる緑豊かなエリアにこの家を建てた。なぜ、ここまで費用を抑えられたのか?そこには、これまで多くの上質なローコスト住宅を手がけてきた市川さんならではの細やかな配慮や工夫があふれていた。

和と洋の融合で自然と調和 人生の最終章を豊かにする夫婦の住まい
子供たちが巣立ち、夫婦2人だけの生活となったとき「新たな住まい方を、長く住み慣れたこの地で」と思う方も多いことだろう。そんな施主の思いを汲み、暮らしやすさとデザイン的な美しさも兼ね備えた家を設計したのは、KATIS建築設計事務所の石川厚志さん。人生の最終章を豊かにする夫婦の終の棲家に迫る。

大切にしているのは、施主様との「対話」 ささいな一言から潜在的な想いを見つけ出す
大阪市天王寺区にある米田建築アトリエは、新築とリフォームをほぼ同じ割合で手掛けている。代表の建築家、米田さんが特にこだわっているのが、施主様との「対話」だ。その理由は、じっくりと話をすることで、施主様の潜在的な想いや要望が明確になるからだ。一例として、対話から生み出されたプランをご紹介しよう。

難しい敷地条件を生かし居心地のよさを向上 美しい海を眺めながら暮らす、週末住宅
小さな建物が点在する状態から、夫婦で住まう1棟の週末住宅への建て替えを決意されたお施主さま。敷地は高低差があるなど、難しい条件だったという。岸本姫野建築設計事務所の岸本さんと姫野さんはその敷地にできるだけ手を加えず、むしろ生かし切って居心地のいい家をつくりあげた。




