
借景がまさにアート!
夢を贅沢に詰め込む、こだわりの別荘づくり
全開口の大きな窓を開放すれば、50畳超のオープンスペース
「私が設計を担当した軽井沢の別の別荘を気に入っていただき、そのテイストで…というお話をいただきました」と話す佐藤さん。Tさんはずっとマンション暮らしだったこともあり、別荘には非日常的な空間を求めていたそう。充実したユーティリティスペースに、アイランドキッチン、軽井沢の自然を感じられる広いテラス…。そんなTさんのイメージを形にすべく、佐藤さんのプラン作りが始まった。
「最終的にプランが確定するまで、9回ほどプレゼンをしました」と当時を振り返る佐藤さん。1回目に提案したのは、道路に面した側にカーポートを置き、主寝室を北側に置くプランだったそう。これに対してTさんからは「やはり主寝室はやはり日当たりのいい南側にしたい」、「テラスに階段が欲しい」といった要望が。ここからはTさん自身のイメージも具体的になり、6回目のプランでようやく全体像が決定。そこから最終的な詰めに入っていったという。
思う存分意見を交換して完成したT邸には、佐藤さんとTさんの高い美意識が随所に生きている。外観は木材とジョリパッドの吹付。片流れのひさしにひさしの下を斜めにデザインして、視覚的な変化を演出した。室内に入ると、そこに広がるのは、32畳の広さがあるLDK。「とにかく景色を優先して設計しました」と佐藤さんが語るように、アイランドキッチンに立てば、どの方向を見ても美しい軽井沢の緑を堪能することができる。キッチンの正面に鎮座するのは、重厚な雰囲気の薪ストーブ。周囲は掘りごたつのように一段低くなっており、このストーブを囲んで団らんすることもできるのだという。
このLDKで薪ストーブと並んで印象的なのが、テラス側に備えられたのは、全開口の大きな窓だ。「景色を邪魔しないよう、扉を消してしまいたかったんです」と話す佐藤さん。この窓は網戸・雨戸、すべてが壁に収納されるようになっており、すべて開け放てば20畳あるテラスとリビングが一体となり、開放感も抜群。都会では味わえない、まさに別荘ならではのダイナミックな空間だ。
大和張りの天井、ブルーグレーの左官…。細かいこだわりが随所に
佐藤さんと、Tさんの、家に対する並々ならぬこだわりはさらに続く。吹き抜けの天井には木製のシーリングが取り付けられているのだが、最初は木製のものがなかなか見つからなかったそう。Tさんがハワイのホテルでたまたま見つけた写真を佐藤さんに送ったところ、最後は佐藤さんがネットで輸入しているショップを見つけ、買い付けたのだという。
そして、このLDKの反対側に配されているのが主寝室だ。壁はお気に入りのベッドリネンに合わせたブルーグレー。これは塗料ではなく左官とのこと。壁肌を荒らさずこの色を出すのには、かなり苦労したという。その甲斐あって「ヨーロッパの雑誌で見た雰囲気にしたかった」という奥様の希望通り、まるでパリのアパルトマンのようにお洒落な空間が完成した。
窓から見える景色を邪魔しないよう、鉄骨でシンプルに作られた階段を登ると、そこにあるのはロフトスペース。ここは寝転んだり、自由に使えるスペースとして作ったそう。ただ広いロフトを設けるより、橋を架けるような感じにしたかったんです」と佐藤さん。ここを渡ると、まるで中に浮いているような浮遊感が味わえるのだという。
また、薪ストーブの位置に関しては「当初Tさんは、薪ストーブが景色を邪魔するのでは…と難色を示されていましたが、木々の緑と薪ストーブの佇まいが相まってさらに美しい景色になると思い、ストーブ置場を掘りごたつのように一段下げることを提案して納得していただきました」。と佐藤さん。お互いが妥協することなく、こだわりぬいて完成したT邸。Tさんも以前より頻繁にこの別荘に訪れるようになり、改めて軽井沢の景色の美しさに感動しているそう。「深緑の季節だけでなく、秋には隣の紅葉も借景として楽しめるんですよ」と佐藤さん。この家も軽井沢の自然と同様、四季折々で違った美しさを見せてくれるに違いない。
基本データ
| 所在地 | 長野県・軽井沢 |
|---|---|
| 敷地面積 | 1294.91㎡ |
| 延床面積 | 169.32㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | T邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

明るい吹き抜けのLDK!いつも家族の存在を感じられる家。
共働きということで、休日に一気に洗濯などの家事をこなすというGさんご夫婦。そんな多忙なGさんが望んだのは、家事動線が良く、どこにいても2人の子どもたちの存在を感じられる家だった。随所に建築家・江藤さんのアイディアとセンスが光る、Gさん邸の家づくりを紹介しよう。

「ただいま」が楽しくなる! 3つの屋根で包み込む家
お子さんとのコミュニケーションを大切に「ワクワクできる家」をイメージしていたTさんご家族。依頼を受けた建築家の古市さんは、3つの屋根からなる個性的な『包みこむ家』を提案。カーブを効かせた続き間のキッチンダイニングを1階につくり上げた。『包み込む』意図と、そこにある『ワクワク』とは?

鋭角のコーナー越しに堪能する郊外の風景 定年後も仕事に打ち込める防音完備の住まい
半導体の研究者であるお施主さまのご希望は、部屋の隅が透けたすっきり美しい部屋と、研究を継続するための防音・防振設備の整ったラボ。建築家の木島さんは、鋭角に惹かれるお施主さまに、多角形で面積以上の広がりを感じられる空間を提案した。直角の少ない室内からの眺望の豊かさには、誰もが驚くことだろう。 (メイン画像:木島千嘉建築設計事務所 提供)

完成後の暮らしが楽しみになる。 ミニマルな設計で叶えたゆとりある家
ビルをリノベしたようなラフな雰囲気の家を希望されていたお施主さま。予算の都合もありRC造ではなく木造で家を建てることになった。建築家の藤本さんはお施主さまのライフスタイルや趣味に合わせてメリハリを効かせたコストダウンを提案。趣味のDIYも存分に楽しめる、明るく気持ちのよい空間ができた。

完成してからがはじまり 時間をかけてつくりこむ家
家が完成するとはどういう状態だろう。工事が終わったとき? 引っ越しを終えたとき? それとも、住む人が思い描いた暮らしができるようになったとき? もしかしたら、家には完成という言葉はそぐわないのかもしれない。そう思わせる建築家が、N.A.O代表の加藤直樹さん。加藤さんが設計したHOUSE Kに迫ります。

親世帯と子世帯、それぞれの希望を叶えた 完全に独立した家が並ぶ2世帯住宅
長く暮らしていた家を2世帯住宅に建て替えることに決めたお施主さま。希望したのは、それぞれのエリアが完全に独立した、2階建ての家だった。建築家の傳寶さんは世帯ごとの希望を丁寧に叶えつつ、どちらも風や光に満ちた家を計画。家2つ分と大きな規模の建物でも街並みに馴染み、悠然と佇む家の秘密を探る。

夢じゃない? 手が届くラグジュアリーの見本は使い心地も抜
30代の医師夫婦が求めたのは、忙しい日々をリセットできる癒しの住まい。高い塀を配したコートハウス風の邸宅には、ラグジュアリーとリラックスが調和する豊かな時間が流れています。でももちろん、使い勝手は最高。手が届く、いや、手に入れたいラグジュアリーの見本になりそうです。

「都心の家」の複雑な課題を解きほぐす、マネジメント力の建築家
「都心の家」を得意とする建築家がいる。細江英俊(ほそえ・ひでとし)さん。世界遺産となった国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエの愛弟子が設立した設計事務所で修行を積み、公共施設やオフィスの設計を多く手がけてきたベテランだ。その特徴は、「徹底的にクライアントに寄り添いつつ、複雑な法規制や条例を丁寧に解決していくマネジメント力」。その職人技を、ひもとこう。

プライバシーと採光を叶える「ずらし」の妙 個の時間も、家族の団欒も楽しい2世帯
住宅密集地での二世帯住宅づくりは、プライバシーの確保、さらには採光・通風など解決すべき課題は多い。その難問を様々な手法で見事に両立させてみせたのは、顧客との「対話」を通じて価値観や家づくりのプロセスを「共有」することを大切にしている建築家、河野有悟さんだった。

