
三方を住宅に囲まれた密集地なのに明るい!
光溜まりがもたらした寛ぎを感じられる住まい
横が無理なら上から光をとればいい
階段室を内包した光溜まり
唯一の難点ともいえるのは、敷地周りの3方向はすぐそばまで隣家が迫っているということ。唯一外部へ開かれている南面も間口はそれほど広くはない。となれば、室内の奥方向は暗くなるのは避けられないような土地だ。
林さんも「ここは採光と通風がカギとなるな」と感じるほどだったという。
それでもOさん夫妻の「明るく清潔感のある家を建てたい」との気持ちを最大限叶えたいと、いろいろ思考を重ねたという。
そうして林さんが導き出したアイデアは大きく2つ。
1つめは、横からの光が望めないのであれば、上方向(空)からの光を部屋の中に導き、1階に「光溜まり」をつくるというアイデア。建物の中央付近に階段室を内包した吹抜を設置。階段も蹴込板をなくしたスケルトン階段とした。トップライトからの光が下に降りてきて、白壁に反射し内部を照らす。そこへさらに南面からの光が重なって光溜まりとなり、内部空間全体を明るくさせるという仕組みだ。
この吹抜は、光だまりをもたらしただけではない。風の通り道となることや、高さからくる開放感ももたらした。そして何より、上下階が完全に分離するのではなく、吹抜を通じてゆるやかにつながっているため、家族の気配が感じられるという効果も生んだ。子をもつ親にとっては、2階で遊んでいる子どもたちの様子がなんとなく伺えるというのは、とてもありがたいことに違いない。
階段室を内包した吹抜で光溜まりをつくり、採光と通風といった課題を解決したばかりか、家族のコミュニケーションにも良い効果をもたらしてしまう、林さんの発想力には驚かされるばかりだ。
子供部屋は陽当りが悪くても構わない
日当たり良好のセカンドリビングを
子供達は、昼間学校に行って不在だったり、リビングで過ごすことも多い。さらに子供が独立してしまったら、一番環境の良い場所がただの荷物置き場となってしまうことも考えられる。
そうであるならば、子供部屋にとって採光はそれほど重要ではないだろうと林さんは考えたのだ。この提案にOさんご夫妻も「そういえばそうですね」とご納得。
「逆に陽が差し込み明るい南面に、家族が寛ぐことのできるセカンドリビングを設けることを提案しました」と林さん。このセカンドリビングは、例えば見たい番組が重なったときに移動してもよし、他の家族に邪魔されず趣味を行うでもよし、畳スペースもあるので親戚や友人が訪れた際の客間にもなる。用途を限定しない余白空間のフレキシブルなスペースだ。
この提案にOさん夫妻も「いいですね!」と大賛成してくれたのだという。
実際、現在は子どもたちの遊具が置かれ、まるで自分たちの基地であるかのように楽しそうに使っているのだという。
また、このセカンドリビングの存在は、奥様にとってもとても嬉しいものとなったのだという。それは、最初の要望にもあった「清潔な家」ということに関係する。
家を清潔に保ちたいという思いはあるものの、幼い子供がいるとキレイに片付いている状態をキープするのはなかなか難しい。「お客様を呼びたいと思っても片付けが大変だし、散らかったままの部屋に招くのはもっと嫌。突然の来客なんて無理」と思う人も多いことだろう。
しかし、セカンドリビングがあることでその心理負担は一気に解消される。子どもたちには散らかしてよいのはセカンドリビングだけと教育してもよいし、来客があるときも、とりあえず1階のリビングさえ片付けておけばよいのだ。
この用途を限定しない、ユーティリティーなスペースは家族が身も心も寛ぐ場となっているのだ。
お客様との対話を大切に
何が一番大切なのかを共に考える
その根底には「使い勝手の良さ」を味わってもらいたいから、という林さんの思いがある。長く住む間には、子供が大人へと成長を遂げたり、さらには独立していったりと、住まう人や生活のスタイルも変わっていく。むしろ竣工時に想定していたとおりにすすんで行くことのほうが珍しいくらいだろう。だからこそ、どんな使い方もできる、どのようにでも可変できる自由度の高い空間が必要なのだ。いわば、家の余白や余裕、懐の広さがある家を作っているのだ。
「点検で数年後に訪れたときに、自分が思っていた使い方と違う使い方をされていることがあります。そんな風にも使えるんだ!と、新たな発見になるとともに、嬉しい気持ちにもなります」と林さん。
この懐の広さは、ただ単に何にでも使えるスペースを設ければよいというものではない。施主の家族それぞれに望むものやライフスタイルは違うし、家が建つ土地の環境も違う。案件1つごとに、この家、この家族にとって何が一番大切なのかを探り、答えを見つけ出すのだ。
林さんはそのための手間を惜しまない。土地の段階で現地を何度も下見に行き、風や光、周辺環境をインプットする。打ち合わせにもしっかりと時間をかけ、キッチンやお風呂を選ぶ際は、ショールームに同行もする。施工中の現場にも足繁く通い、作業の進行をくまなくチェックする。林さん自身が「あまり効率の良い仕事のやり方とはいえない」と言うくらい、手間暇を惜しまないのが、林流なのだ。
施主との対話を重視し、丁寧な仕事を行うからこそ、施主にとって居心地の良い家に仕上がる。Oさん夫妻も「光の入り具合も良い」「1階も実際の床面積より広く感じられて開放感がある」「回遊性のある家事動線が使いやすく、居心地がよい」とコメントを寄せてくれた。
Oさんに限らず、林さんに家の設計を依頼した人達は、こう思っているに違いない。
「林さんに家を建ててもらった」のではなく「林さんと共に家を創った」と。
基本データ
| 作品名 | 光溜まりのある住まう空間 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市 |
| 敷地面積 | 149.00㎡ |
| 延床面積 | 132.34㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | O邸 |
設計者情報
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