
配置の妙で叶えた、日射とプライバシー確保
優しい光に包まれて穏やかに暮らす家
閑静な住宅街の中に光溢れた家を建てたい
庭に繋がるLDKで光もプライバシーも
依頼を受けたのはカヤマ設計室の香山安武さん。要望を叶えるために、まず、家の配置について考えたという。敷地は東西に長く、西側が接道している。東側には小学校、南側には隣家が迫るという環境の中、建物を敷地の北側かつ東側にめいっぱい寄せた。
幸いなことに、敷地は小学校の裏庭と接しており、そこには人があまり立ち入らないため視線を気にする必要がなかったからだ。また南側の隣家とは間に庭や駐車場を挟んで距離を取った。そのうえで、隣家の東側半分が2階のない下屋だったため、庭を東側に配置した。
間取りはどうだろうか。土地の形に沿って東西に長い2階建ての家は、中央に階段が配置されている。家を真ん中で区切るような形で、1階は庭に繋がる東側にLDK、西側には水回りや客間を計画。2階は寝室などプライベートな居室を集めた。
「明るくするために、庭とLDKを繋げたかった」と語る香山さん。しかし、南側に庭を計画し、大きな窓をいくら計画しても、カーテンが開けられないのでは意味がない。それを香山さんは配置の妙で見事に解決した。東側の窓もそうだ。小学校の裏庭に植えられた木々を楽しむことができる、贅沢な環境を実現。小学校を背負い、さらに住宅街の中にありながら、落ち着いた環境で1日を過ごせる光に満ちた家ができた。
様々な角度から入る日射で明るいLDK。
優しい光が織りなす陰影のコントラスト
日ごろから、家の中で暗い部分と明るい部分のメリハリを意識しているという香山さん。玄関を入り、明るさを少し抑えた廊下を抜けると、さんさんと光が降り注ぐLDKが現れる。天井を低めに設定したダイニングの向こうには、2階までの吹き抜けのリビングが。ワンルーム空間でありながら、シーンに合わせて居心地が変化するつくりだ。
庭がある南側はリビング、ダイニングともに大きく開口。特にリビングは掃き出し窓とし、そのまま庭に出ることもできる。庭では犬を飼っているのだとか。大きな掃き出し窓のおかげでLDKのどこからでも犬がのんびりしている様子を見られるのは嬉しい。リビングから庭に出て一緒に遊ぶなど、至福の時間を過ごすことができるだろう。
小学校に面した東側や、北側にも窓を計画した。1階部分に加えて吹き抜けの高い位置にも開口したおかげで、一日を通して室内は明るい。「あらゆる角度から入った光が、白い壁に反射するので全体的に明るいのです」と香山さん。
様々な角度から木漏れ日のようだったり、またサンルームにいるかのようにだったり、多様な光が入ることで、室内の雰囲気もまた表情が豊かになった。壁の角や天井の切り替わりによって影が生まれ、それが美しいのだ。時間や季節の変化とともに、光と影のコントラストの濃淡も移ろっていく。小学校の借景や、窓から入ってくる風。お施主さまが望んだ「日の光による明るさ」だけでなく、自然が感じられる要素もふんだんに取り入れた。
もちろん家の使い勝手や居心地も申し分ない。現在は小さなお子さまが2人いらっしゃるお施主さま。現在はリビングエリアがお子さまの遊び場になっているそうだが、キッチンからでも様子が伺えるため安心だ。大きくなったら、2階の吹き抜けに配置した子ども室の窓からコミュニケーションもとれる。
ダイニングの一角に駐車場に向けて計画した小窓も、お住まいになられた後に便利だとお喜びいただいた箇所だそう。玄関に出なくとも外の様子が伺えるうえ、道路側からは窓の気配があまり感じられない。安心に暮らせるポイントのひとつだ。
ライフプランに合わせ、十分な収納も用意した。階段下を活用したパントリーは、キッチンからアクセスしやすく広さもあり、奥さまお気に入りの場所なのだとか。さらには、玄関から廊下に進む動線に加えて、外部収納、シューズクロークを抜けて室内に進む動線も計画。「玄関横に客間としても使用する和室を配置しました。収納をお客さまたちからは見えない場所に配したことで、玄関をいつでもきれいに整えておくことができます」と香山さんは語る。
遊びにいらしたご友人たちから「まるで実家のような安心感があって落ち着く」と感想をもらい嬉しかったとおっしゃるお施主さま。確かな設計力によって実現した光と影のコントラスト、自然との距離感、シンプルな設え、様々な要素がさりげなく組み合わさり、上質な居心地が得られるようになったのだろう。
瓦屋根と漆喰の壁に洋風の素材を組み合わせ
際立つ質感が魅力的なフォルムを実現
プランニングを進めながら出てきたご要望のひとつが外観だ。瓦屋根と漆喰の壁でかっこよくしたいという案を受け、香山さんは早速サンプルを左官職人へ依頼。大きめのサンプルをつくってもらい、艶感や質感の出方を検討した。道路に面した外観は小さな窓がひとつついているばかりで、蔵のようなどっしりした存在感がある。赤穂浪士で有名なこの土地ならではの、城下町的なイメージを反映したのだという。
庭側から見た、家の正面からの外観も香山さんのセンスが光っている。「東西に長いですから、そのままではのっぺりした印象になってしまいます」と、階段がある辺り、家の中心部のみ漆喰ではなく黒のガルバリウム鋼板としたのだ。質感の異なる素材を取り入れ、和風の建物にモダンなアクセントを加えたばかりか、渡り廊下で2軒の家が繋がっているような表現を用いて洗練された佇まいとした。
外観も室内も、お施主さまの意向を的確にとらえ暮らしやすい家をつくり上げた香山さん。初めてゆえに右も左もわからないというようなとき、香山さんのような建築家が一緒なら、お施主さまご自身のペースで想像以上に満足な家づくりができることだろう。
基本データ
| 作品名 | 古浜町の家 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県赤穂市 |
| 敷地面積 | 203.56㎡ |
| 延床面積 | 119.05㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 施主 | M邸 |
撮影:後藤 健治
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

あえて収納を減らす、子どもと楽しむ住まいのリノベーション
リフォームして新たに生まれ変わったM様邸。無垢のフローリングにラワン合板のしつらえがとても美しいシンプルなお宅は、木と家族のぬくもりがいっぱいにあふれている。

住宅密集エリアでも開放的に暮らす。 快適さ、自由さを同時に叶えた半内テラス
住宅がひしめく土地で、明るくオープンな暮らしがしたいと望まれていたお施主さま。建築家の久志さんと國定さんは、生活の中心を2階に上げ、さらにバルコニーを壁や天井で覆った「半内テラス」でそれを叶えた。快適さを追求しながら、将来を見据えた家づくりにより実現したのは、日々が愛おしくなる暮らしやすさだ。

《大規模事例》ココで働きたい!抜群のデザインと快適環境に驚き
ドイツに本社を構えるSEW オイロドライブ・ジャパン(株)から、工場の建築依頼を受けた建築家・伊波一哉さん。クライアントからの希望は、快適な労働環境とデザイン性だった。光と風、手に入りやすい建材を駆使し、伊波さんは限られたコストの中で希望を実現してみせる。今あるものを最大限に生かし、アイデアと工夫で造り上げた工場とはどのようなものなのか?

未来を見据えた、可変性のある住まい。 都市の中で、光と白に満たされる住まい。
「Shinpoの家」は建築家・塩澤さんが自邸として設計した二世帯住宅。塩澤さん一家と義父、それぞれの暮らしに寄り添い、使い勝手を第一に考えて設計された。それだけではない。将来、暮らし方にどんな変化があっても柔軟に対応できるよう、多彩な工夫を随所に取り入れた住まいである。

築43年のマンションを一新。 やわらかな発想で実現した豊かな環境
建築家の小野さんが70年代の建築にこだわって物件を探し、見つけたのは1977年築のマンション。建物の丈夫さは申し分なかったが、自宅として快適に暮らすためには多くの問題を解決しなくてはならなかった。大規模リノベーションによって生まれ変わった空間を紹介しながら、「豊かな環境」について考える。

エアコンが足もとに? 家族を笑顔にする 高気密・高断熱二世帯住宅
住まいにおける不満で挙げられることの多い「暑い」「寒い」といった冷暖房問題。それをたった1台のエアコンで解決してしまったのは、田口建築設計事務所の田口さん。新築のご自宅に導入した、次世代の空調「階間空調」の秘密に迫ります。

狭小・密集地でもこの明るさ! 光あふれる空間を実現した五角形の家
三方を隣家に囲まれた20坪弱の狭小地に佇む五角形の家。外からは想像もつかないほど明るく開放的な空間が広がっている。この家を設計したのは、建築家の平野玲以さん。30代のご夫婦と小さなお子さん2人がすこやかに暮らせるよう、平野さんが施した数々の工夫に迫る。

鉄筋コンクリート構造・地上3階建てなのに2000万円台!「リブハウス」という名の住宅
鉄筋コンクリート構造・地上3階建て・ホームエレベーター付き・建築家がデザインする世界に1つだけの家…。漠然と「高額なイメージで自分たちには手が届かない…」と諦めてしまいがち。しかし、これらの条件をすべて満たした住まいが、思いがけず身近な存在になるかもしれません。建築家が自らの、そしてご両親と暮らす住まいとして具現化した家づくりご紹介します。

10坪のマンション、可動家具で大変身。秘密は「四次元設計術」
築38年、わずか36㎡のマンションをリノベーションし、自宅+仕事場+モデルルームとしてフル活用している、H2DO一級建築士事務所の代表・久保和樹(くぼ・かずき)さん。昼間は2人のスタッフと働く仕事場が、夜には妻と暮らす生活空間へ。さらに可動式の家具を動かすことで多彩なスペースが次々と生まれる、驚きの1室だ。

