
趣味もフロアも悠々!
一人暮らし「ならでは」の暮らしと家づくり
部屋と部屋、中と外。全てがつながる開放的な住まい
Kさんの要望はシンプルだ。一人暮らしゆえに部屋ごとに仕切らず、ゆったりと開放的な空間にしたい。そして、仕事で疲れた体が休まり、休日には趣味の日曜大工を、後々には畑仕事なども楽しみながら日々の暮らしを送りたいということだった。
K邸に入ると、天然木が心地よいワンルームのような大空間が広がっていた。「1階はリビングとダイニング、趣味の作業スペースに境界線を設けず、それぞれが曖昧に交わる一つの空間に。リビングスペースの吹き抜けと階段を通してつながる2階には、和室と主寝室を配置しました」。全ての部屋が一つの空間となり、実際の面積以上の広がりを感じる。
K邸には部屋を結ぶ廊下、仕切りとなる壁やドアがほとんどない。独立した部屋として空間を仕切れるのは、客間として障子を設けた2階の和室のみ。来客時に備えて、主寝室には視線を遮るために開閉できるブラインドを設置した。
また、効果的に窓を設けることで、光と風を取り込む心地よさを創出。「東側には隣家と被らないよう朝陽を取り込む小窓を、南側にはステンドグラスをアクセントにはめ込みました。朝の目覚めは陽の光が差し込む主寝室で微睡み、日中は家の壁を移ろうステンドグラスの彩り豊かな光の影が現れます」。
家の中に居ながらにして、太陽の光で時間や季節の経過が感じられる──。久保田さんとKさんは、この家を愛着を込めて“日時計の家”と呼んでいる。
ハイサイドライト(高窓)で常に空気が循環するため、窓を開けると心地よい風が抜け、夏場も冷房が不要なほど快適なのだとか。リビングの窓の外には季節で移ろう庭、高台に立地する2階の主寝室からは市街の遠景や夜景も望める。外との隔たりを取り払ったような開放感が、Kさんに居心地の良さを感じさせる大きな魅力となっているようだ。
家を建てた後も継続して続く理想的な三角関係
「施主とともに数件の工務店へ足を運び、いわばお見合いをして選定しました。図面を見せ、見積もりを取り、家造りに対する姿勢や想いを伺って…。この家は岐阜県中津川市の加子母という場所の木材を使っていますが、これも工務店さんとの良き出会いがあってこそです」。
加子母の檜や杉をふんだんに用いた家は、時を経て全体がいい飴色に。Kさんはもちろん久保田さんも、美しさを増す木材の成長が楽しみだという。
実際に使用される木材は目で確認。時には、木材に関する細かなレクチャーも工務店にお願いした。さらに、施主のKさんは自身の細かな要望を、プロ顔負けの詳細なラフ画で提出。それを久保田さんが図面にして、工務店がコストの精査や実現に向けての調整を図る。三者が実に根気強く、密に連絡を取り合うことで、Kさんの想いが詰まった家を実現できたと言っても過言ではない。
施主と工務店との間にユニークなエピソードがある。Kさんは自宅を建築後、3年ほど海外赴任することとなった。家は使わず放置すると、アッという間に傷んでしまう。かといって、他人に貸し出すのも気乗りしない。そこで、今まで前例はなかったものの、Kさん曰く「無理にお願いして…(笑)」工務店とメンテナンス契約を結んだ。家の換気や庭の草むしりまで、Kさんの元へは逐一写真で報告が届けられたという。
「家は完成した後もいろいろな変化が起こります。今回、工務店は建てるだけでなく、住まいの守り手にもなってくれました。いつまでも住まいの主治医として一緒に時を過ごしてくれる、信頼できる工務店の存在は設計者にとっても力強いパートナーです」。家は建ててから、20年、30年と長い付き合いが始まる。建築家、工務店との継続した関係は、施主にも望ましいことだ。
Kさんは今、久保田さんの提案を受けて、庭にビオトープを作り始めている。「さっそくカエルが棲み着いてね」と話すKさんの顔は、いやはやなんとも嬉しそう。畑仕事のとっかかりとして種をまいたコスモスも見事に咲いた。庭には加子母とのご縁から植えた栗の木があり、今では秋になると収穫も楽しめるようになった──。
10年の時を経て「住むにつれてどんどん居心地が良くなっています」と施主のKさん。久保田さんの目論見通り、いや目論見以上に、家はKさんの暮らしを豊かに、快適に支えている。Kさんは自分だけの理想の隠れ家を手に入れた。
【久保田鏡湖さん コメント】
家は住み手とともに時間を過ごし、日々手入れをしながら一緒に齢を経るものです。そのような愛着を持って暮らせる家を建てていただきたい、また家で暮らす楽しさを知っていただきたいと思い、あえて完成してから10年を経た住まいをご紹介しました。この物件は、住まいに使われる木材を、加工される前段階から確認し、木が育った環境などを施主が知ることができたのも良かったと思います。10年経った今さらに建物に愛着をもって住んでいただけるのが、何よりもうれしいですね。
【Kさんコメント】
仕事の疲れを癒せ、趣味に没頭できる快適で楽しく暮らせる家をお願いしました。岐阜県加子母の木材を使った家は木の香りに包まれ、明るく風通しもよく本当に居心地がいい。今では趣味の日曜大工のほか、コスモスを地植えしたり、睡蓮鉢のビオトープを作ったり、秋には庭に植えた栗を収穫したりと、楽しみいっぱいです。築10年を経ても家屋のコンディションが良く、住むにつれどんどん魅力を増すのは、住まい手のことを考えた設計とそれを実現してくれる工務店さんがあってこそだと、心から実感しています。
基本データ
| 所在地 | 愛知県豊田市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 214.2㎡ |
| 延床面積 | 113.4㎡ |
| 家族構成 | 一人暮らし |
設計者情報
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