
これがスイートルームの居心地!
多彩な使い勝手と贅沢なあしらい
贅沢な広さ、ほどよい独立感が嬉しい“半地下”リビング
そんなMさんが、くつろぎの空間として最もこだわりを持っていたのがリビングだ。とにかく広く、ゆったりとした造りがいい。リビングから直接、主寝室へ行ける動線も欲しい。リビングでインナーガレージの愛車を眺めたい……etc.だが、Mさん一家は夫妻と2人の娘さん、奥さまのお母さまの5人家族。邸内にはダイニングやキッチン、バスルームなどの水まわり、家族それぞれの個室も必要だった。約86坪と都内にしては広い敷地とはいえ、そこまで贅沢な空間使いは可能なのだろうか? 北園さんに聞いてみた。
「個室や水まわりもゆとりある造りをお望みでしたから、ご希望を叶えようとすると容積率をオーバーしてしまう計算でした。そこで、傾斜のある敷地を活かし、リビングは地面から1m出ているだけの半地下としたんです。この方法だと半地下部分が容積率の制限を受けずにすみ、すべて地上とするよりも居住空間を広く取ることができます」
膝を打ちたくなるようなプロの知恵で完成したリビングは、地上に出ている部分に設けたハイサイドの窓から明るい自然光がそそぎ込み、半地下といっても暗い印象はまったくない。Mさんの希望は「夜、ゆっくり過ごしたい」というものだが、日中の陽光はやはり気持ちがいいし、窓の存在はそれだけで空間の開放感に一役を買う。
リビングの広さは軽く20畳を越え、大きく取ったガラス窓の向こうには、愛車が鎮座するインナーガレージ。その横にはMさんの希望通り2階の主寝室へ直接行ける専用階段がある。家族が集う1階のダイニングとは、幅を広く取った別の階段を介してひと続きになっており、2つの空間でありながらお互いの様子がわかる一体感は十分だ。それでいて、床に半階分の段差があるためほどよい独立性もキープ。ダイニングに家族がいても、リビングでは適度な距離感で“自分の時間”を楽しめる。
家族が寝静まった頃、ホテルのスイートルームを思わせる広いリビングでゆったりくつろぐひとりの時間。ワイン片手に愛車を眺め、お気に入りの映画を鑑賞し、心地よいまどろみを感じたら専用階段をのぼってベッドへ向かう。そんな過ごし方ができるこの家は、まさにMさんのイメージ通り。忙しかった日中の疲れもすっかり癒え、明日への英気を養えるに違いない。
立体パズル!? シーンに合わせて選べる多彩な動線
まず、家族の個室を設けた2階への、2通りのアプローチ。ひとつは、前述のリビングから主寝室につながる専用階段。もうひとつはダイニング内の階段だ。この階段は、2階のお母さまや娘さんの居室に面した通路に続く。つまり、お母さまや娘さんは共用スペースを通って家族の顔を見てから自室へ行くが、夜中にMさんがリビングから主寝室に向かう際は、専用階段を使えば家族を起こさないよう気遣う必要がない。
玄関からリビングへの動線も2つある。メインは玄関を入った左手に広がるキッチン・ダイニングを通ってリビングに行くパターン。そして玄関から右手に行ったところにも、リビングに続く小さな階段が設けられている。玄関を入ると左からも右からもリビングにアプローチでき、来客時はキッチン周辺を通らずとも、直接リビングに案内可能というわけだ。
半地下、1階、2階と室内に3つの床レベルがあるM邸は、外部空間にも面白い段差があった。2階の各居室から出られる長いバルコニーと、半地下のリビングの上につくられた屋上テラスだ。この屋上テラスへの階段はリビング内にあり、ホームパーティーではリビングと屋上テラスを行き来する動きのあるおもてなしも自在。青空の下の開放感がありながら、2階のバルコニーより一段低いので外壁などで適度に囲まれ、人目を遮るプライベート感も併せ持つ。
「Mさんは、ライフスタイルに合わせた住まいへのご要望がはっきりしている方でした。でも、ご要望の一つひとつはバラバラで(笑)、それらをつなぎ合わせてどのように一軒の家を成立させるか、設計はまるでパズルを解くような作業でしたね。でもその分、面白みのある空間になったと思います」と北園さん。
ただ平面的に空間が並ぶのではなく、スキップフロアによる段差や動線の工夫で主要なスペースが立体的に混じり合う。そこから生まれる空間の一体感と独立感のバランスは絶妙で、ひとりの時間も、家族や仲間との時間も理想的な形で楽しめる。素人が図面を見ると一瞬「???」と面食らってしまうM邸だが、実際に暮らしてみると、居心地も使い勝手も驚くほどいいのである。
【北園徹さんコメント】
実は、Mさんはご自宅を建てるのが3回目。今回はとにかくゆったりとした居住空間をお望みでしたので、半地下の空間を取り入れて容積率の制限問題を回避しました。おかげで、リビングはもちろん、ご家族の個室や玄関、水まわりに至るまで、どの空間もかなりゆとりある造りに。また、スキップフロアで回遊性を持たせ、感覚的にもより広く感じられるようにしています。Mさんは判断の早い方で「半地下、面白い!」と快諾してくださり、打ち合わせはとても楽しかったですね。
間取り図
基本データ
| 家族構成 | 夫婦 |
|---|---|
| 施主 | M邸 |
撮影:石黒 守
設計者情報
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