
答え合わせは20年後。岐阜の地域材で建てた
「実験住宅」で、経年変化の暮らしを楽しむ
いい家を建てて、長く住み継いでいく
リアルな過程を発信する建築家の自邸
自身がロールモデルとなるべく、2025年、岐阜県加茂郡坂祝町に自宅兼事務所を建築した。
地域材や国産材で建てた木の家は、経年によるどんな色の変化があるのか。緑に囲まれた家に住むことで、人はどんな豊かさを得られるのか。
完成して終わりではなく、暮らしの中で様々な発見をし、答え合わせをしていくワクワク感がある「実験住宅」。
自宅兼事務所の建築地に選んだのは、角地の雑木林。
シンボルツリーとなるヒメシャラ・スモモ・ウメの木を残しつつ、新たに植栽も増やし、木々の成長とともに緑に囲まれる住まいを計画した。
「植栽が落ち着くのは20年ほど先ですが、ご近所の方にも興味を持って見守ってもらえたら嬉しいですね。外壁は杉板の大和張り。
それには、経年変化を楽しむ目的と、無塗装で仕上げたらどうなるのかの実験的な意味合いもあって。
塗装をしなければ塗り直しのメンテナンスもなくなりますし。
『上手くいったら人におすすめできる』と思い、まずは自分で試してみることにしました」。
来客用と家族用の動線をゾーニングした
プライベートと仕事を両立できる間取り
主屋の1階には、リビング、ダイニングを兼ねた打合せスペース、キッチン、ワークスペース、納戸を配置。寝室や水回りは2階に集約し、就寝・入浴・洗濯・着替えなどのプライベートを切り離すことにより、日常生活と仕事のメリハリをつけられるよう工夫されている。
「仕切りのないワンルームの間取りですが、吹抜けから見上げた際、ベッドや洗濯物などの生活感が視界に入らないよう設計しました。また、玄関から入る形だと気を遣わせるかなと思い、お客様はデッキを通り、掃き出し窓から直接出入りする動線としています。
デッキの上には深い軒をかけたのがポイント。雨に濡れないし、日除けになるし、雨漏りのリスクも抑えられます」と佐藤さん。
家族用玄関のあるバックヤードの軒下空間は、収納スペースとしても活躍中。
「収納を増やすために家を大きくして建築面積を広げるのではなく、軒下の外部空間を上手く利用すれば、建築面積とコストを抑えられます。
わが家ではエコキュートや室外機などの設備のほか、薪やガーデン用品なども軒下に置いています。軒下を通れば雨に濡れずにガレージに移動できるのも便利。
深い軒には色々なメリットがあるんですよ」と教えてくれた。
6畳用エアコン1台で真夏も快適
メンテラクを目指したZEH+の家
自邸は断熱等性能等級6、UA値0.36、ZEH+の省エネ性能を担保しつつ、数字だけにとらわれない心地よさを追求した。
扉で仕切らない吹抜けのワンルームは、お部屋の隅々まで温度のムラがなくどこにいても快適。
大空間向けのエアコンではなく、あえて6畳用を3台取り付けたのも、省エネ・省コスト・省メンテナンスの視点を大切にする佐藤さんらしい工夫だ。
「夏は2階のエアコン1台だけで快適。トリプルガラスで開口部の断熱性能を高めたのが効いていますね。
冬は1階のリビングのエアコンをメインで稼動し、暖かさが足りない時だけもう1台追加するなど、状況に合わせて使い分けています。
この方法だと故障時も6畳用を交換するだけで済むので、費用負担を抑えられるんです」。
また、第三種換気を選んだのもメンテナンスをシンプルにしたいという理由から。
「手が届く場所にある換気扇の掃除なら手間が少なく、マメな性格じゃない自分でも続けられるかなと(笑)。
第一種換気が絶対ではなく、温熱性能のバランスを見ながら、間取りや住まう人のライフスタイルに合わせて最適な形に整えていくことが大事だと考えています」。
木の家と一緒に生きていくことで
暮らしはもっと豊かで心地いいものに
庭のスモモの木には沢山の実が成るなど、自然が身近な暮らしを楽しんでいる佐藤さん。
外とのつながりを感じられる中間領域として設けたアトリエは、ものづくりのイベントを開催したりメダカを育てたりと、格好の遊び場になっているそう。
「住むことだけを考えたらアトリエは必須ではないですが、そういう+αの要素があるからこそ、心が満たされるんだと感じています。
コストを考えると迷う部分ではあったのですが、つくって本当によかった。
遊びに来てくれた人も皆、羨ましがってくれるんですよ」。
家も人も、健康に長く生きられる“健康寿命”を意識した住まい。「木とともに生きること」「木の家づくり」を、佐藤さんは自らのライフワークだと話す。
「身近な木を使うことで山が守られ、CO2の削減、森林の循環利用にもつながっていくんです。
だから私は地域材や国産材を使って、自分にも環境にも心地いい家をつくりたい。そんな選択をしてくれる仲間が一人でも増えるといいなと思っています。
木が乾燥して馴染んでくる中でパキッと音が鳴ったりして、ビックリもするんですけど、同時に『木の家って生き物なんだな』って感じて。
そんな生活を『楽しそう』と思ってくれる方と一緒に、家づくりができたら嬉しいですね」。
自宅兼事務所での相談をベースにした地域密着の家づくりはもちろん、東京など遠隔地の家づくりも「声をかけていただけたら喜んで対応します」と笑顔の佐藤さん。
一生大切にできる木の家を建てたい。
そんな方にはぜひ、木の家づくりへの深い愛情と情熱を持つ佐藤さんにコンタクトを取ることをおすすめしたい。
基本データ
| 作品名 | 姫沙羅の家 |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県加茂郡坂祝町 |
| 延床面積 | 97.73㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+鳥たち |
| 予算 | 4000万円台 |
設計者情報
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