
建築家と不動産会社とのタッグで不安を解消
「三方よし」リノベで叶えた理想の住まい

幸地 俊一
こうち しゅんいち
Lods一級建築士事務所
東京都 品川区
クライアントそれぞれの価値観に寄り添い、そこに住む「人」と「土地」に合った、より美しく、より心地よく、より新しい「家」を探求します。
資金計画や内見も3者で
建築家と不動産会社がしっかりサポート
そんな物件にOさんは「ここでは、家に自分達の暮らしを合わせていかねばならない。今後、子供ができるかもしれない自分たちが、思い通りの暮らしをすることができるだろうか?」と疑問を感じ、10年来の草野球仲間だった、一級建築士の幸地さんに相談をしたのだそう。
自由度であれば戸建て一択となりそうなものだが、幸地さん自身が数年前に中古戸建を購入、自宅兼事務所としてリノベーションした時期で「当時は子供もいなかったけど、今も快適に暮らせているよ」と中古リノベも選択肢の1つであることを伝えたのだという。
その上で「建築家とタッグを組んで、施主に寄り添った物件を提案してくれる、面白い不動産会社がある」と、紹介したのが創造系不動産株式会社だった。
創造系不動産は、土地や建物を単に右から左に販売・仲介するような仕事はしない、異色の不動産会社だ。社員の多くが建築士の資格をもち、社外の建築家ともコラボレーションしながら、顧客それぞれにとって最適な建築空間を共に生み出すことを大切にしている。
「当社では、建築家目線でお客様の理想の暮らしやライフプランをヒアリングしたうえで物件を紹介したり、資金計画のシミュレーションも行っています。一般的に中古物件は、
新築に比べ融資条件が厳しいことが多いのですが、我々が金融機関との間を取り持つことも行っています」と、自らも一級建築士の資格をもつ、創造系不動産の山岸さんは語る。
「お話くださったこと全てに納得がいき、信頼できると感じました」とOさん。こうしてOさん夫妻、幸地さん、創造系不動産の三位一体の家探しが始まった。
家探しの様々な選択肢の中、最初に絞り込んだのが地域。Oさんがこれまで住んできた地域の環境を気に入っていたため、新居も同じ地域が良いと思ったのだという。その地域は、新築物件の出物が少なく、将来のリセールを考えると、中古マンションが候補となった。そうして3者でいくつかの物件を見ていく中、出会ったのが築35年を超えるマンションの一室だった。
「築年数は経っているものの、駅からの距離や周辺環境、眺望も抜群。管理もしっかり行き届き、修繕積立金も十分あり、リノベーション次第でとても良い住環境を創れるのではないかと思いました」と山岸さん。
もともとヴィンテージマンションに興味があったという奥様も「私の周りでは新築戸建ての方が多く『何もかも自分たちで決められる自由がある反面、大変だった』という話を聞いていて、私にはある程度の制限のある中で工夫して暮らすほうが、性に合っているのではと感じました」と語る。
中古物件のリノベは、守らなければならない規約があり何もかも自由にできるわけではない。幸地さんは、山岸さんと当時の竣工図や規約を読み解き、売り主と交渉をしながら、最大変えられるパターンと、最小限しかできないパターン2種類のプランを出したのだという。
「広さや可変性など、今後の生活をイメージしやすい物件で、どちらのパターンになっても住みたいと思えるプランをご提案いただきました」とOさん。
規約を守りながらも秀逸なアイデア力で
光あふれるシンプルモダンな空間を実現
玄関の扉を開け、中に入ると目に飛び込んでくるのが、ソファーの置かれた土間。レトロテイストな、手洗い台や鏡、照明がこの場をほっこりとした空間にしてくれている。O邸は寝室以外の部屋を1つの大空間とした1LDKとしたため、ここは貴重な「籠れる場所」といえる。LDKで過ごすのとはまた違った気分で、ゆったりとした時間を過ごすことができる場所だ。
「ここと隣のSICは、もともと洗面所とユニットバスだったんです」と幸地さん。今回のリノベにあたり、バスルームを、日の当たらない場所から、廊下の先にある窓があった部屋へ移動することを提案。
リノベ案件において、洗面所やバスルームは、構造や配管の都合、部屋の取り方などを勘案し元の位置となるケースが多い。しかし、幸地さんはあえて移設を選んだ。それは、「朝、目覚めたあとの洗面や、癒しの時間であるバスタイムを気持ちの良い場所で過ごしてもらいたい」との思いから。
移設するという大胆な発想が、快適性だけでなく、玄関脇に大容量のWICができること・洗面が寝室やLDKから近くなるという利便性ももたらし、さらには「籠れる場」も生んだ。施主のことを第一に考える幸地さんだからこそ、為せる業。
廊下を進んでいくと、左手に、ステンレスの天板が美しいスタイリッシュなキッチンが見えてくる。2人一緒に料理をすることも多いというOさんご夫妻のため、回遊できるアイランド型のキッチンとした。また、キッチンの一角には、2人の趣味であるコーヒーのカウンターを提案。コーヒーマシンやカップなどを飾るディスプレイの役割も果たしている。
キッチンの先に広がるのが、驚くほど明るく開放的なLDK。もとの家ではLDKと和室として区切られていた空間を1つの大空間とした。
「実はこの物件は、規約で和室をなくすことができませんでした」と幸地さん。そこで幸地さんがとった手が、和室をオープンな小上がりとすること。
こうすることで、空間の広がりを損なわずに、地べたに座ったり、ごろんと横になることや、来客の際には客間としても使えるスペースができた。もちろん、畳の下のスペースは大容量の収納とすることも抜かりない。さらに、このスペースは、将来子供ができたときには手を加えることで、1つの部屋とすることも可能だという。
このLDKでもう1つ目を引くのが、窓の下にある板張りの小上がり。屋内にある「陽だまりの縁側」だ。和室スペースと同じように、寝転がったり、ベンチとして使うこともできる。
下の空間は、ロボット掃除機のステーションやAV機器の配線・収納スペースとして活用することで、LDKをスッキリ見せることにも役立っている。
実はこのスペースを提案したのは、創造系不動産の山岸さんだ。
「この物件は、バルコニーが小さいんです。何とか室内で屋外を感じられるような気持ちの良い場所を創れないかと思い、ご提案させていただきました」
不動産会社の人間が、施主の願いを実現するため、造作にアイデアを出すのは、施主のことを第一に考える創造系不動産だからこそ。さらにそのアイデアが快適性と実用性を併せ持っているのも、一級建築士でもある山岸さんの腕があればこそといえるだろう。
O邸の空間の素敵さは、間取りやゾーニングだけからもたらされたものではない。家具や照明、飾られている植物などのインテリアも大きな役割を果たしている。
Oさんご夫妻の好みのテイストを知るため「ランプの画像をいくつも用意して、好みに近いものを選んでもらうなどしました」と幸地さん。ショールームにも一緒に足を運び、カーペットやカーテンも相談しながら選んだのだという。
そうして仕上がったO邸は、全体としてシンプルで清涼感がありながらも光にあふれ、ところどころ置かれている奥様が生けた花が、ホッとする温かみを感じさせてくれる空間となった。
こうした幸地さんの家づくりに奥様も「私たちの抽象的な要望を、上手く汲み取ってくれて具現化していただきました。それも、ただ要望を受け入れてくれるだけでなく、プロ目線でアドバイスしてくれて、とても信頼できました」とコメント。
Oさんも「当初は、知り合いだから言いにくいこともあるかも?と思っていましたが、いろいろわがままを言わせていただきました。時には優柔不断な私を後押ししていただいたり、いろんな要望を実現していただきました」と、とても感謝している様子。
建築家に家づくりを頼むことを「敷居が高い」「要望が言いにくいのではないか?」と感じる人は多い。しかし幸地さんは、施主と同じ目線にたち「つい相談したくなる」建築家の1人。そしてその要望を的確に叶えてくれる建築家でもある。
建築家と不動産会社がタッグを組み、施主が本当に望むリノベーションを成し遂げた今回の事例。施主はもちろん、建築家、不動産会社にとってもメリットがある「三方良し」の家づくりは、日本の家づくりの新たな潮流となるのかもしれない。
基本データ
| 作品名 | 光が廻るリノベーション |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県川崎市 |
| 延床面積 | 81.39㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | O邸 |
撮影:アトリエあふろ(糠澤武敏)
設計者情報
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