
素材を生かし、風景の一部として佇む
自然とひとつになるガラス張りの家
ご自分が所有する島を
毎日眺められる家が建てたい
家を建てるための敷地は海を挟んで反対側、いわゆる陸側の小高い山の上にあった。依頼を受けた白浜誠建築設計事務所の白浜誠さんは、初めて敷地を見たとき本当に驚いたという。
「松尾さまは、お父さまから敷地を受け継がれたのですが、そこにはお父さまが長い間かけて集められていた巨石や木材がたくさんあったんです。もちろん整地もされておらず、野趣あふれる雰囲気でした。そのような素晴らしい環境のなかで家を建てるお手伝いができるなら、こんなにハッピーなことはないと思いました」と白浜さんは語る。
以前設計を手がけた店舗にお客さまとして通われていたなど、白浜さんのセンスやスタイルをよくご存じだった松尾さま。共通の知り合いを通じて出会い、初回の顔合わせで既に響き合う部分があったそう。強い信頼関係のうえで、具体的な要望は「家のどこからでも島が眺められるガラス張りの家」という1点のみが伝えられた。それ以外はお任せというかたちで、家づくりはスタートした。
広大な敷地に負けないフォルム。
自然そのままの姿で岩や木材を使用
一目で感動を覚えたという敷地を生かし切るためにまずこだわったのは、家そのもののフォルムだ。製材するまえの木材や背丈ほどもある大きな石がごろごろと並ぶこのスケール感に対して、小さな家では釣り合わないと考え、1階と2階のボリュームをずらすことで横に引き延ばした。おかげで島に向き合う広さも最大化し、バリエーション豊かに島を眺めることができるようになった。すべての居室が横並びで配置されているため、本当に家のどこからでも島が眺められるのだ。
また、玄関には建物と直交する水盤を計画した。島に向かってまっすぐ伸びる水盤は、まるで家と島をつなぐ橋のようでもある。帰宅したとき、水盤の流れに沿ってまず島へと視線が伸びていく。島を見ることが一番の要望だったからこそ、家に入る前からこの家は島に向かっているという軸線を強調したという。
既存の巨石や木材は使用してもしなくてもよいとのことだったが、使わない選択肢はなかったという白浜さん。この土地の風土として生かし、残していくために活用すべきと考えた。
そこで、巨石や岩のうち、動かせるものは水盤脇に積み上げ、2階のテラスを支える構造とした。石や岩は加工せず、積み上げながら強度を上げていく「崩れ積み」の手法を採用。自然のままの力強さが感じられる。
木材は外壁や室内の壁面として使用している。もともと素材が持っている荒々しさやラフさをそのまま表現するため、帯鋸で切断。ザラザラとした表面をあえて加工して整えることはせず、そのまま張り付けた。さらに留め具には鉄釘を用い、木材と一緒に経年変化していくように配慮した。厚みもばらばら、かつ集められていた木材はマツ、ケヤキ、ナラ、サクラなど多種多様で、これらを一緒に使うことでより一層表情豊かになった。
島と反対側のファサードはほぼこの木材のみで構成されており、家は今も残る巨石や山の景色と調和している。敷地の中に家を建てたというより、家も含めてこの土地のランドスケープを完成させたといったほうがしっくりくる。「木材の壁は、フェンスのようなイメージなんです」と白浜さん。ゆったり腰を落ち着けて、フェンスにもたれながら島を眺める。そんな唯一無二の景色にふさわしい、心に訴えかける体験も一緒にデザインしたといえるだろう。
室内も行き止まりをなくし、
どこまでも視線が伸びる開放的な家を実現
心地よく暮らす雰囲気づくりのバランス感が優れているのも、白浜さんのプランニングの特徴のひとつだ。鉄骨造で計画され、天井など構造を見せている部分があるにもかかわらず鉄骨の印象が薄い。鉄骨に木材を重ねるなど、木の素材感や柔らかさをプラスしているからだ。「やはり住まいですから」と白浜さん。ただ、空間はとてもシャープに感じられる。実はそれもエッジを効かせてカットできる木材を用いたからこそだという。シンプルに暮らしたいという松尾さまのライフスタイルにぴたりと合っている。
また家具も、家が持つ木や岩の雰囲気を邪魔しないようにひとつひとつ白浜さんがデザインした。快適性にもこだわり、木のフレームを採用している。同じくキッチンも白浜さんがデザイン。家のフォルムをリフレインした形は、ゲストが来た時に会話のきっかけにもなるかもしれない。
ライフスタイルに合わせた提案もしている。お客さまを招き、おもてなしすることも多いということから、景色はもちろん体験も楽しめる仕掛けも多く用意した。たとえば2階から続くルーフテラスには、焚火を楽しめる一角を計画。夜には眼下に広がる海や島を眺めながら、ワインを楽しむのもいいだろう。
この家でお住まいになって、そろそろ10年になるそうだが、完成時そのままにきれいな状態で暮らされているという松尾さま。それだけ大事にしてくださっているんだと思うと、嬉しいですよねと白浜さんは語る。
「家づくりにおいては、お施主さまがここに家を建てたいと思った気持ちを、素材や材料からだけではなく建築で、可能な限り目に見えるように表現したいと考えています」と白浜さんは話す。この「Rock House」は日ごろからそのような姿勢で家づくりと向き合う白浜さんが手がけたからこそ、できた家だといえるだろう。
基本データ
| 作品名 | Rock House |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県北九州市 |
| 敷地面積 | 1997.46㎡ |
| 延床面積 | 219.22㎡ |
撮影:©️Jonathan Savoie
設計者情報
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