
高さ約4mのガラス張りで圧倒的な開放感
上質な素材使いが魅力のコートハウス
内と外の一体感、魅力的な素材使いがテーマ
海の街の開放的でモダンな住まい
稲垣さんと花形さんは、外部空間を大きく取り込んだモダンなデザインを得意とする建築家。施主のAさまはミャンマーチークを中心とした輸入木材を扱う貿易会社の方で、今回の自邸建築にあたり、仕事を通じて親交があったdesusの2人に設計を依頼。KLASICでもご紹介しているdesus設計の『Garden House』もAさまの会社のチークを使用しており、現地を訪れた際にテラスと大胆につながる開放的な住空間を気に入ってくださっていたのだそう。ご自身の住まいでも、庭やテラスと一体化する『Garden House』のようなLDKをお望みだった。
完成した『CH6』は、ご要望に応えたのびやかなLDKのほか、トレーニングルーム、ジャグジー付きのルーフバルコニーなど魅力的な空間が盛りだくさん、マリンスポーツがお好きでアクティブなAさまが、海の街の暮らしを存分に満喫できそうな住宅となっている。
また『CH6』は、仕事で輸入木材を扱うAさまの住まいということで、チークをはじめとする上質素材をどのように使うかも、設計テーマの1つだった。ぜひ参考にしたい素材使いのトピックも多いのだが、それは後述するとして、まずはこの家の象徴ともいえる中庭付きのLDKからご紹介していきたい。
一体感に圧倒される中庭とLDK
知識とアイデアを駆使して要望をかなえる
LDKの開放感にここまで強烈なインパクトがあるのは、設計のテクニックで見事に演出された中庭との一体感のおかげだろう。チーク張りの天井は中庭まで深く張り出し、LDKと中庭は文字通り「1つ屋根の下」。同様に、どっしりとしたLDKの石壁も中庭までひと続きで伸びている。きわめつけは中庭と面する境界部分で、高さが約4mある天井まで全面がガラス張り。サッシの存在感をなくすようにデザインされた大開口も奏功して内外がシームレスにつながり、とにかく一体感がすごいのだ。
リビングでくつろぐときも屋外の光や緑を間近に感じ、リゾートにいるような心地よさに包まれる──こんな居心地を毎日味わえるとはなんて幸せなのだろうと思うが、設計には高度な配慮や工夫を要したようで、稲垣さんと花形さんはこう話す。
「『LDKは1階に』というご要望でしたが、計画地は建物が並ぶ住宅街で、開放感や採光を担保しながらプライバシーを確保するための工夫が必要でした。また火災発生時の延焼を防ぐ防火規制がかかったエリアで、無作為に大きなガラス窓を設置できないという制約もありました」
そこで2人は、中庭の隣家側を高い壁で仕切り、プライバシーを確保。また、この壁を防火壁にすることで防火規制をクリアし、LDKの大きなガラス窓を可能にしたのだという。こんな話を伺うと、家が望み通りになったり、ならなかったりするのは、設計者の知識と発想力に大きく左右されるのだとつくづく思う。その点、『CH6』はセンスの良さだけにとどまらない、desusの全方位的な頼もしさを実感する家でもある。
チークの魅力をあますところなく表現
安定のセンスの良さで「まかせて安心」
『CH6』はファサードを目にした瞬間から、素材の魅力に引き込まれていくような住宅だ。玄関ドアやその周辺、深い軒天には贅沢にチークを使用。ネイビーの外壁×チークの鮮やかなコントラストを、オリエンタルな文様のスチールパネル、ルーフバルコニーの手すりに入った花ブロックや植物などが引き立てる。
アジアンリゾートを彷彿とさせる佇まいで実感するのは、desusのコーディネートセンスの素晴らしさだ。この家でも、植栽も視野に入れながら個性的なアイテムを巧みに使い、洗練されたファサードに仕上げている。
同じことは、本物志向の素材が上質なリゾート感を醸すLDKでもいえる。
ここはAさまと相談の結果、一部に黒雲母入りの重厚な石壁を取り入れ、天井と床はいずれもチークを使うことが決定した。だが、上下が木だと、印象が野暮になってしまうリスクもある。そこでdesusの2人は、床の張り方を変えるという方法を取った。床は幅広のフローリング材をタイルのように揃えて張ることですっきりさせ、重々しさを回避。また、LDKで一番大きな壁には、砂岩水磨きを採用。色味や質感は重厚な石壁に負けず、それでいて重くもなく、これ以上ないほどの大正解。選び抜かれた素材のベストバランスで品の良さと高級感を創出したLDKの内装は、眺めれば眺めるほど完璧すぎてぐうの音も出ない。
『CH6』はほかにも、2階のトレーニングルームの床はヘリンボーンで張ったチーク、船大工の職人さんによってチークの甲板に用いる技法で施工されたジャグジー付きルーフバルコニーなど、上級者の素材使いのオンパレードで見ごたえ十分。
ちなみに床板を張るときは、板材の配置を決める「木配り」をAさま自らが行い、大工職人さんは「一生分のチークを張った」と冗談交じりにおっしゃるほどこの家の施工に没頭。『CH6』は施主さま・施工関係者・desusの3者が一丸となってつくり上げた家であり、稲垣さんと花形さんは「私たち設計者や大工職人さんと一緒にいい家をつくりたい。そんな風に考えてくださるAさまとの家づくりは本当に楽しかったです」と振り返る。
Aさまに限らず、desusの2人は施主との信頼関係が厚い。おそらく理由は1つではなく、同じ目線で住まいへの思いやアイデアを膨らませてくれることも、抜群のセンスと確かな知見で研ぎ澄ましてくれることも、信頼につながっているのだろう。何より、『CH6』を見ればわかるように、2人がつくる家は住み心地もデザインもシンプルとオリジナリティのバランスが絶妙で、不足も過剰もいっさいない。だからこそきっと多くの施主は、「desusにおまかせすればきっとカッコいいものができあがる」と理屈抜きの安心感をもてるのだ。
間取り図
基本データ
| 作品名 | CH6 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県逗子市 |
| 敷地面積 | 212.86㎡ |
| 延床面積 | 174.60㎡ |
| 予算 | 6000万円台 |
| 施主 | A邸 |
撮影:ヤマベスタジオ 山邊章史
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

2人だけの日常も大人数が集まるひとときも 夫婦の願いを叶えた数寄屋造りの邸宅
子育ても終えた夫婦にとっての理想のすまいとはどんな家だろう。夫婦2人が寄り添って暮らす程度のコンパクトなものが良いのだろうか。それとも、子や孫、親戚、友人など多くの人が集える広い家だろうか。この相反する要素を1つの家に見事に詰め込み、夫婦の理想の暮らしを実現させたのは、やまぐち建築設計室の山口さん。プライベートとパブリックを両立させたこの家の秘密に迫る。

空間づくりの妙が叶えた 子どもたちが伸びやかに過ごせる家
子どもたちが伸び伸びと生活し、家族が仲良く暮らせる家という施主の漠然とした要望に対し、「日本家屋のテイストを取り入れる」「1つの空間の中にいくつもの居場所を設ける」という方法で、見事に実現したのは、キトキノアーキテクチャの小林さんでした。

基礎断熱、パッシブ換気で居心地も省エネも 配置の妙で誰もが快適に過ごせるこども園
幼稚園からこども園に生まれ変わるため、0~2歳児を受け入れる新園舎のプランニングを依頼された建築家の一原さん。他の園のリサーチに加え、経験豊富な保育士たちからの意見もくみ取りながらプランニングをスタート。省エネはもちろん、使い勝手のよい、園児も職員も快適に、安全に過ごせる園舎を完成させた。

黒い壁のなかに白い家!?難題をクリアしたオシャレ二世帯の知恵
住宅が密集した都市部に家を建てる際、大きな課題となるのが採光とプライバシーのバランス。明るく開放的な住まいを希望すると近隣の住宅が間近に迫るため、結果的にカーテンを閉じたままの暮らしにもなりかねないからです。そんな心配も見事に解決した、建築家ならではの技が随所に光る二世帯住宅を紹介します。

スペースを生かしきる 狭くても、圧迫感なく人が集まる家
中古の一戸建てをリフォームし、ご自宅にしようとお考えだったK様。建築家の渡辺泰敏さんに相談し、一緒に物件探しをするうち「やはり新築がいいのでは」と方針を転換する。購入したのは一般的に条件がよくないといわれる旗竿地。しかし、これこそが建築家とともに土地選びから始めたゆえの最良の選択だった。

家族やペット・友人との寛ぎやテレワークも 自然豊かな場所に佇む上質セカンドハウス
キャンピングカーで全国津々浦々を巡っていた施主のAさん。車の買い替えを機に、拠点となるセカンドハウスを計画されたそう。その設計を任せたのは、顧客の「想い」を実現する家づくりに定評のあるef設計の木下さん。木下さんは、自然豊かな環境にマッチしたセカンドハウスを実現してみせた。

木や漆喰など、ナチュラルな素材を 生かした空間で、家族の自律も促せる家
「家づくりはお子様の教育にもつながるチャンス」と言う富田さん。家は住む人がどう使うかが大事と、家族全員を巻き込んでの家づくりを理想としている。暮らしやすさはもちろん、立地を生かしたデザインなど、設計士としてのこだわりを盛り込みながら、住む人の暮らしの将来設計まで考え抜かれた実例を紹介しよう。

外部、内部の両方で大きな意味を持つ大開口 住宅街に溶け込む「くの字」型の福祉施設
「道上のデイサービス」は敷地の三方を道路に接した角地にある。オーナー様の要望は「この場所に溶け込みつつ、よくある民家を改修したような施設とは異なるオープンな雰囲気の建物にしたい」というもの。建築家の橋本さんは「くの字」の建物を提案し温かみある室内環境と、周辺環境に調和する佇まいを両立させた。

中にこんなにも豊かな空間があったなんて! 外観からは想像もつかない開放感の洗練邸宅
「中にこんなにも豊かな空間があったなんて」。この家を訪れた人は、誰しもこんなギャップに驚くはずだ。「南向きの大窓」と「プライバシー確保」という相反する難題。建築家・大場浩一郎氏が導き出したのは、光を独占する「中庭」という答えだった。窓のない外壁と高い塀で、視線を遮りつつ圧倒的な開放感を得るその設計力。カーテン不要とも思えるほどの自由な暮らしを実現した、本質をつく家づくりの軌跡を辿る。










