
多趣味を受けとめるナチュラル空間!
安心快適も実現した秘密とは
小技を利かせたデザインで木を楽しむ、明るく開放的なLDK
現在のN邸は、Nさんのご実家が所有していた築50年の空き家を取り壊し、新たにつくった住まいである。敷地はNさんのご両親が営むコンビニとその駐車場の裏手に位置しており、家の前は不特定多数の人が出入りする環境。こうした立地条件から、在宅中のほとんどの時間を過ごすLDKはプライバシーを守りやすい2階とした。
依頼を受けた建築家の長谷山泰三さんの設計は、使用頻度の高い玄関からLDKへの動線が洒落ている。玄関を入ったらまず階段へ向かうのだが、階段のある玄関ホールにビルトインガレージが見える窓が設けられ、Nさんの愛車をチラ見できるという仕掛け。そして前述の階段で窓越しの緑を横目に2階へ上がると、フロアぶち抜きの開放的なLDKが広がるのである。
LDKの第一印象は、「明るい、爽やか!」。この印象をもたらす立役者は南の窓からたっぷり入る陽光と、天然木のすがすがしい風合いだ。ウッドテラスの豊かな緑が広がる窓のほか、大きなハイサイドの窓もあり、ダイニングやリビングで視線を少し上に向ければ青い空がすぐそこに。その高い窓からはまばゆい光が燦々と降りそそぎ、フロア全体を明るく照らす。
木の風合いを気持ちよく楽しめるのは、長谷山さんの細やかな心遣いによるところが大きい。たとえば、空間のイメージを大きく左右する床と天井。LDKはNさん夫妻の希望でどちらも贅沢に無垢のスギ板を用いているが、床と天井の板はちょっと違う。床は黒い節のあるスギ板、天井は無節のものと使い分けているのだ。
長谷山さんによると、「節はスギの特徴のひとつで味わいを生みますが、上下共に節があると視覚的に重いんです。ですので天井は節のないスギ板を使い、木の風合いを楽しみつつ、すっきりした印象も得られるようにしました」とのこと。
梁と柱は丈夫なマツ。表に出して見せることで木の存在感を際立てた。LDKの中ほどには、30cm角の太い大黒柱もある。「これは構造上で必要な柱なのですが、本当は、こんなに太くなくても大丈夫なんです(笑)。太くした理由はインテリア性です。LDKが広いので、ここの柱は太い方がデザイン的に落ち着きます」
梁はつなぎの金具が見えないように施工したり、ドアや窓の枠に用いた木は “みえがかり(見える部分)”だけを細くして洗練された表情にするなど、デザインに対する長谷山さんの工夫は枚挙に暇がない。そのどれもが、言われてみると「ああ!」と納得するのだが、素人は言われなければ気づかないほどさりげない。
この「さりげなさ」こそが、計算し尽くされたプロの仕事といえるのだろう。それほど、無垢材をふんだんに使ったN邸のLDKは、デザインのバランスがとても自然。深呼吸したくなるような清潔感にあふれ、五感がすんなり馴染む居心地のよさに頬がゆるんでしまうのである。
地震に強く、空気もきれい。快適空間で暮らしを満喫
このパネルは柱だけでなく面、つまり壁でも耐震を高める効果があり、Nさんたちが望んでいた仕切りの少ない大空間の実現にも一役を買っている。長谷山さんは住宅の性能、とくに耐震への意識が高い。常に新しい工法にアンテナを張り、有効と判断したものを採用しているという。
実際の住み心地は上々なようで、「私は冷え性で家の中に寒い場所があるのが嫌だったんです。この家は換気システムと高気密・断熱の相乗効果で一度温まると室温が下がりにくく、どこにいても同じ温かさ。窓を閉めていても空気がきれいで快適ですよ」と奥さま。ご主人も「東日本大震災のときもまったく問題ありませんでした」と笑顔だ。
家の居心地がいいと、家での時間も充実する。奥さまの趣味であるパンづくりのための専用台が置かれたキッチンは、実に広々。造り付けの食器棚やカウンターの収納スペースには、料理好きとひと目でわかる器具や調味料がずらりと並ぶ。
リビングの一角にかかった、ロフトに上がる可愛らしい梯子は「僕がつくりました」とNさん。「NさんはDIYがお得意なんです。ビルトインガレージも僕は空間をつくっただけ。道具を置く赤い棚を付けたのはNさんなんですよ」と長谷山さん。「Nさんご夫妻は、ご自身の自由なセンスでこの家を楽しんでくださっているのがわかる。設計者としては嬉しいですね」
テレビ台の上の梁にはみずみずしいグリーンが絡む。ウッドテラスに出ると、四季折々に花を咲かせるたくさんの鉢植えが置かれていた。料理に愛車とグリーンの手入れにDIY。「休日は、ドライブに出かけたりもしますよ」とは言うものの、Nさん夫妻は家でやりたいことが盛りだくさんな様子。長谷山さんがつくった快適で心地よい住まいは、“家での楽しみ”を倍増させる最高の舞台となっているようだ。
作った人:長谷山泰三さんコメント
最初は築50年の空き家のリフォームのご相談だったのですが、床は落ちかけ、かなり悪い状態でリフォームは難しいと判断。建て替えをご提案しました。内装はご希望に合わせて無垢材をふんだんに使用。建材はすべて質感、見せ方の細かなところまでこだわり、すっきりとバランスのとれた空間を目指しました。気密、断熱、耐震と共に換気も意識したシステムなどを取り入れ、住宅としての性能も高い仕様です。安心して快適に住んでいただけると思いますよ。
住んでいる人:ご夫婦コメント
テレビ番組のように、古い家屋もリフォームで一変するかと思ったのですが現実は違いましたね(笑)。建て替えにあたっては、無垢材の使用と仕切りのない大空間を希望しました。スギの床は話に聞いていた通り感触がいいですし、明るく広々としているのでDIYやインテリアなど家での楽しみが増えました。断熱、換気を始めとする性能強化は長谷山さんのご提案でしたが、家の中全体の室温が安定して住み心地は抜群。思い切って建て替えてよかったと思います。
基本データ
| 施主 | N邸 |
|---|
撮影:アトリエあふろ(鈴木暁彦)
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

歴史ある土地建物を驚きのバランスで守る!?セカンドハウス作り
先祖から受け継いだ300坪以上の敷地に建つ家を、セカンドハウスとして建て替えたい。そんな要望を受けて建築家の北園徹さんがつくった住居は、伝統的な日本家屋でありながらエキゾチックで前衛的。遠い過去と現在が、不思議なバランスで邂逅する空間だ。

ずっとここにいたくなる。光・風・緑を感じて豊かに暮らす「窓辺の空間」がある家
東京・自由が丘に自宅兼アトリエを建てた建築家の小野喜規さん・齋藤真紀さん夫妻。完成したのは、既存の庭木を活かした心地よい「窓辺の空間」がある住まい。ほどよい距離感で屋外の自然とふれあう「窓辺」は心落ち着く居場所になり、何気ない普段の暮らしがこんなにも豊かになることを実感できる住宅です。

敷地条件が厳しくても、豊富な光の通り道で 余すところなく明るい家
静かな住宅街の一角に自邸を建てることになった建築家の芝田知巳さん。引っ越し前の住まいは昼間でも照明が必要な状況だったことから、隅々まで明るい家をつくりたいと考えた。敷地条件などが厳しい中、芝田さんはどのように家中に光を届けたのだろうか。光だけでなく風も季節も感じられるS邸の秘密に迫る。

暮らしが広がる土間、吹き抜けリビング…。 こだわり溢れる「住まい手オリジナルの家」
東京の人気住宅地に佇むS邸。お施主様であるSさんのこだわりが細部にまで行き届いた、まさに「住まい手オリジナルの家」である。Sさんの要望をしっかりと受け止め、妥協することなく形にしたのは、Lods一級建築士事務所の幸地俊一さん。二人三脚で実現した理想の家づくり。その詳細をご紹介しよう。

バイクの趣味が中心!開放的なテラスと防犯を両立した秘訣とは?
夫婦ともにバイクが趣味というNさん夫婦が建てたのは、バイクガレージが中心にある家。車通りの多い道路に面した土地で、防犯と開放感の確保という相容れない2つの条件をクリアした、建築家・白砂孝洋さんの驚きのテクニックを大公開!

心地よい「居場所」を随所に配置した家
家づくりにおいて「居場所づくり」を大切にする「JuDesign建築設計室」の高橋さん。それも一箇所ではなく、家の中のいろんなところに居場所を作るという。例えば階段の踊り場を少し広めに作り、椅子を置いてみたり。その場所ごとに景色の見え方や感じ方が違い、その時の気分によって過ごし方を変えられるため、一つの住まいにたくさんの魅力を詰め込めるのだ。

生活の基盤となり、暮らしを楽しむための家 緩やかなゾーニングで叶えた開放的空間
小田原に移住を決め、東京から引っ越してこられたお施主さま家族。やりたいことも理想の暮らしもイメージがしっかりできており、それを叶えるための家づくりが始まった。暮らしを楽しみ、自然を感じ、豊かさ溢れる住まいを実現するteam AeOの2人は贅沢な敷地を生かし、開放感溢れる家をつくりあげた。

光、風、音を感じながら、自然と共に暮らす森の中の別荘
暑い夏、涼しい場所で過ごしたいとの思いで別荘づくりを決断。 自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。 そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。 田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

庭の心地よさを取り込んだ、リビングが暮らしの中心にある平屋
奥様の実家でもある築100余年の家を大切に守り、暮らしてきたSさんご夫婦。ご子息が巣立ち、夫婦二人のこれからの暮らしや耐震性への不安を考慮して、建て替えることにしました。Sさんご夫婦のリクエストは心地よく暮らせる平屋。石川さんが提案したSさんの住まいの工夫をご紹介します。

