
光、風、音を感じながら、
自然と共に暮らす森の中の別荘
自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。
そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。
田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

田辺 誠史
たなべ まさし
合同会社 TAWs DESIGN
埼玉県 川口市
人と空間が自然環境と交感し、心身共に幸福感で満たされること。日々の生活の営みが、豊かなつながりを育む場になること。伝統や文化を現代のライフスタイルで解釈しながら、ここにしかない価値を創出し、豊かな暮らしへ繋がる場をデザインしたいと考えています。
土地の声を聞くからこそ実現できる
自然と調和した家
田辺さんが建築において最も大切にしていることの1つに、「自然の力を利用する」といったものがある。太陽からの日差し、木立がつくる陰、そよぐ風といった自然環境を上手に取り込んで、快適な暮らしを実現するという、いわゆる「パッシブデザイン」の考えだ。たとえば夏の高い日差しは遮り、冬場の低い陽光は室内に差し込むよう、屋根の角度や軒の張り出しを計算する。室内に風の通り道ができるよう、窓の配置を工夫するといったもの。
住宅の採光や通風に自然の力を上手く利用するという考えは、冷暖房機器や高気密・高断熱といったテクノロジーが発達する前の日本の家屋では、ごく当たり前に行われてきたこと。そんな日本人のDNAに組み込まれているであろう、自然と共にある住宅は、現代のテクノロジーと融合することで、住宅としての快適さはもとより、心落ち着くものとなるのだ。
田辺さんは家の設計を行う際、事前に必ずその土地の過去の天候や風の流れを詳しく調べ上げるのだという。気象データを何年分も遡って調査し、「夏は午前中の気温は低めだが、午後に向かってぐんぐん上昇する」「秋に割と長く雨が続くことがある」「冬には意外と南風が吹くことが多い」などといった、その土地ならではの特徴をつかむのだ。さらには建設予定地に自らが足を運び、直接自分で確かめることも欠かさない。
「データでは、南風が吹いてくるとなっていても、実際現場に行ってみると、周りの建物が風を遮ってしまっていることもあります。自分でその土地の自然環境を感じることで、環境の把握だけでなく、建築のインスピレーションが湧くこともあります」と語る田辺さん。
田辺さんは、手間暇を惜しまず「土地の声」を聞き、それを上手く建築に落とし込む。さらには、デザイン性も兼ね備えてしまう腕がある。だからこそ自然と調和した快適な住まいが実現できるといっても過言ではない。
Oさんの別荘にも、そんな田辺さんの手腕が遺憾なく発揮されている。
室内外がシームレスにつながり
自然と一体となる大空間
邸内に入ると、まず驚かされるのは、天井の高さからくるリビングの開放感だ。勾配屋根を利用した吹き抜けの天井は、屋根を支える丸い方杖も趣がある。外観からは、2階建てのようにも感じたが、中に入ると大空間の平屋づくりだということがわかる。ご夫婦の使い勝手を考え、階段を使わず横移動だけで済むようにとの思いと、開放的な空間にしたいという2つの要素を、勾配天井を使うというアイデアで見事に実現してみせた田辺さんの手腕には驚かされる。
そして、リビングの引き込み窓を開けると、この家一番の魅力といってもよい眺望に出会える。大きなウッドデッキが広がり、その先に生い茂る木々が見える。リビング、ウッドデッキ、庭がシームレスにつながる、さらなる大空間へと変貌を遂げる。
その魅力は、眺望だけではない。そよぐ風や草花の匂い、虫の音といった自然が五感を刺激してくれる、なんとも贅沢な場所なのだ。
Oさんご夫妻も、この場所が大のお気に入り。自然に包まれ自然と一体となる感覚。都会の喧騒を離れ、心穏やかでゆったりとした時間を過ごされ、リフレッシュされているだろう。
室内に目を移すと、リビングの隣には、来客時の寝室としても活用される和室がある。琉球畳が美しい和モダンな空間。一部がフローリングとなっており、扉を開け放つと、リビングと一体感をもたせている。もちろんこちらも、引き込み窓を開くとウッドデッキ、さらにその奥の庭の眺望を楽しめるものとなっている。
一方北側には、浴室などの水回りや収納をコンパクトにまとめた。大きな箱の空間の中に小さな箱を入れ子のように入れるというBOX in BOXという手法。勾配天井がもたらす空間の広がりや、北側からの採光と風の通りを活かすための仕掛け。玄関側、キッチン側の両方から行き来がしやすいよう回遊性をもたせた造りにしたり、天井をFRP製のグレーチングとすることで、光や風が入るといった工夫もなされている。
「ダイナミックな空間による開放感」と「コンパクトにまとめ利便性を高く」といった、相反する要素を田辺さんは、BOX in BOXという手法で、見事に両立させてみせた。
結果として「環境と空間がとても気持ちよく、暮らしやすい」とOさんご夫妻も大満足され、今ではこの別荘が終の棲家に変わったのだという。
「自然環境との調和」「利便性の確保」といった一見難しいとも思える要素を、卓越したアイデアで実現に導き、真に暮らしやすく心落ち着く家を造る、田辺さんの真骨頂を見た気がした。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 軽井沢の別荘 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県軽井沢町 |
| 敷地面積 | 1,000㎡ |
| 延床面積 | 126.68㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | O邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

日常の風景だった竹林が特別な景色に。 程よく遮り、程よく繋がる快適空間の秘密
ご一家で暮らす家をつくるための建て替えを依頼された、建築家の伊原洋光さんとみどりさん。敷地を見に行くと、元の家の背面に美しい竹林があることを発見した。視線や風が抜ける広々とした室内空間に、唯一無二の竹林の景色がプラスされ、機能性と心地よさがハイレベルで両立する家ができた。

小さな家でも広々と暮らしたい。 中庭を配した、開放感あふれる住まい
栃木県に立つK邸。延べ床面積は86.74㎡と決して広くはないが、両サイドから明るい光が入るLDKは、開放感に満ちている。LDKに廊下の役割を兼ねさせることで効率的に広さを確保するなど、技とアイディアに満ちた、吉田裕一建築事務所の吉田裕一さんの家づくり。その詳細をご紹介しよう。

大きく張り出す屋根を越え意識が外へ外へと 開放的な居間と魅力的な景観が繋がる家
広々とした敷地に家族4人で暮らす家を建てることにしたお施主さま。建物は敷地に対して少し小さめの2階建てを選んだ。建築家の戸川さんは、ゆとりある敷地と緑豊かな環境を存分に楽しめるようにと考えたという。連続する窓や吹き抜けで開放感を高めつつ、大きく張り出した屋根が庭や外部へ意識を誘う環境を整えた。

本館に隣接して「HANARE」を計画。利用者皆の安全性、利便性が向上した歯科医院
長らくこの地で親しまれていた歯科医院の、隣の敷地に「離れ」を計画するプロジェクト。望まれていた川の氾濫対策や、駐車場の増設を実現するため、建築家の林さんが提案したのは1階がRC造、2、3階が木造という混合造だった。中央に通路ができたことで、車での入出時の安全性も高まったという。

薄暗さを活用!明るさと手触りと香り、心からの”安らぎ”とは?
古くて日当たりのよくない都内のマンション。その環境をデメリットと考えず、プラスの要素として活かしきることで、お客様をお迎えするのにふさわしい、しっとりと落ち着いた最上級の和モダン空間をつくりだすことができました。

土間縁側で内と外がゆるやかに繋がる 夫婦の時間も家族の集まりも心地よい家
昭和初期に建てられた農家建築を取り壊し、夫婦2人の住まいを建てることを計画したMさん。依頼を受けたアトリエウィの宇佐美さんが提案したのは、以前の家の面影が感じられるフォルムを持ち、昔の暮らしぶりを、現代にマッチした形で再現できるような、土間縁側をもつ家だった。

エアコンが足もとに? 家族を笑顔にする 高気密・高断熱二世帯住宅
住まいにおける不満で挙げられることの多い「暑い」「寒い」といった冷暖房問題。それをたった1台のエアコンで解決してしまったのは、田口建築設計事務所の田口さん。新築のご自宅に導入した、次世代の空調「階間空調」の秘密に迫ります。

施主の理想を実現した、家族の和をはぐくむ都会派西海岸住宅
注文住宅は、施主の理想を実現するためのものである。建築家にとっては、それにどう向き合い、応えるかが腕の見せ所。「アメリカ西海岸風の家」というテーマに対し、建築家の幸田真一さんは、どのようなアプローチをしたのだろうか。

映画の家?3年間工事を止めて待った!理想の家追求ストーリー
さまざまな人生経験を重ねてくると、良いものを見極める目が養われます。Sさんもご自身の経験から、自分が生活する住まいに対しては明確な理想像を持っていました。その理想を大事にしてくれる建築家を探し続け、とうとう出会ったのが菅原浩太さんでした。





