
生活の基盤となり、暮らしを楽しむための家
緩やかなゾーニングで叶えた開放的空間
キッチンにも庭にもつながる土間が要。
大きな開口から豊かに光と風が入るリビング
元々は東京にお住まいだったTさま一家。新幹線が停まるなど利便性が高く、それでいて自然豊かな小田原へ移住することに決めた。とりあえず賃貸住宅で暮らしながら、理想が叶う家が建てられそうな土地を探し始めたという。
設計を担当した合同会社 team AeO 一級建築士事務所の德家統さんと明美さんはこう語る。「こんな家に住みたいというイメージや、やりたいことがもうすでに明確にわかっていらっしゃる印象を受けました。ですので、2区画続いた現在の敷地が売りに出たときも、ここならできる、と即決されたのです」
打ち合わせにいらしたときの、「家を遊び尽くしたい」というTさまの言葉が印象的だったという2人。もちろん、家づくりの過程においても家族皆さまで楽しまれていたそうだ。
大きなご要望は「庭との一体感」「庭と繋がる土間が欲しい」「薪ストーブを置きたい」ということ。2人は土間こそがこの家の核となると考え、まずは土間に対する理解を深め、意図を共有することからプランニングを始めた。
土間の使い方のイメージを詳しく伺うと、趣味用品の収納に加え、魚やジビエをさばきたいといった要望もあった。そこで、趣味と実用を兼ねた空間として庭にもキッチンにも近い場所に土間を配置。そのうえで扉を2方向に設け、一方はキッチンまで一直線の動線を確保し、もう一方の扉からはそのまま庭にでられるように計画した。
家のフォルムはL字型。2区画分という贅沢な敷地を生かし、庭に向かって開けた広い間口が魅力的な建物だ。敷地の北側、西から東に向かって長辺があり、東側の端から南に向かって短辺が伸びている。先述の通りキッチンと土間を直線で繋ぐため、L字の角の部分にキッチンを、短辺の先端に土間を配置した。長辺はリビング・ダイニングエリアで、大きな3枚引きの窓でほぼ全体を開口。おかげで室内は南側に計画したテラスや庭からの光が豊かに入ってくるようになった。
キッチンからも大きな窓から庭にすぐ出ることができる。土間でさばいた魚を、そのままテラスに持っていきバーベキューするもよし、キッチンへ運び調理して、庭でのお食事に出すのもよいだろう。暮らしが楽しみになる家の輪郭が見えてきた。
生活空間を整えながら暮らしを楽しみ尽くす
2つの玄関とサブ動線が家を機能的に
「来客用の玄関から入ってダイレクトにLDK空間へ進む動線の他にサブの動線を計画したことで、人の動きも、あふれがちなモノもすっきりと整いました」と2人。まず、帰宅時にはクローゼットに身の回りの物を収納してから住空間へ入るようにしたおかげで、リビングが散らかりにくいとのこと。キッチンやパントリーにも近く、購入した食料品などが片付けやすい点も便利だ。
来客用の玄関の脇には、ゲストルームを配置した。ダイニングやリビングと少し距離が取られており、さらに家族の個室は2階にあるため気兼ねなく過ごせる。Tさま夫妻のご両親がお泊りになることを考え、手洗いもすぐ近くに配置。心憎い配慮が感じられる。
効率的な動線が光るのは1階だけではない。2階の家事動線もこれまた使いやすさにこだわって計画した。中心にあるのは家族全員分の衣類を収納するクローゼットだ。クローゼットは洗面脱衣室と繋がっており、身支度しやすい。また、クローゼットと洗面脱衣室ともに、洗濯物干し場としても兼用するギャラリーにダイレクトにアクセスできる。
南からさんさんと光が入り、複数の窓によって風の抜け道も多いギャラリー。冬になれば薪ストーブの煙突も近くを抜け、輻射熱で暖かい。洗濯物を干すにはうってつけの場所だ。使い勝手のよさの理由はもう一つある。窓際には収納棚を兼ねたワークカウンターを設置。アイロンがけもその場ででき、1階2階を行き来する必要がないことはもちろん、ひとつひとつは広々とした空間だけれども、移動はミニマム。集中して家事を終えられるようになった。
お施主さまこだわりの薪ストーブを最大活用
風の動きも活用し、快適空間をつくる
もうひとつの大きな要望である薪ストーブは、1階キッチン脇、タイルが敷かれたエリアに設置された。1階はリビングが2階までの吹き抜けになっており天井が高い。個性的だと感じるのは、そちらに置いた方が熱は家全体にすばやく広がりそうなイメージもあるけれども、あえて天井があるテラスに設けたことだ。
「実は天井があるほうが暖まりやすいそうなんです」と2人。吹き抜けだと熱がそのまま上に昇ってしまうが、天井があれば伝って横に熱が広がり、1階をくまなく暖めることができる。さらに吹き抜けを通じて熱が上がり家全体を暖めるため、確かに効率的だ。薪ストーブはお施主さまがこだわり抜いたクッキングストーブ。冬は毎日稼働し、コトコトと煮込み調理をすることも多いのだとか。キッチンにも庭にも近い箇所に設置した利点がここでも生きる。
庭に向け3枚連続した引き戸が、デザインとしても居心地としても最良のアクセントとなっているこちらの住まい。大きな開口にもかかわらず、折り畳み式の網戸を出し入れしながら、例えば蚊の多く出る時期でも気持ちよく開放できる。
さらに、トップライトやハイサイドライトもそこかしこに開口しており、風が平行にだけでなく上にも抜ける。これがとても気持ちよく、本当の酷暑が来るまではエアコンなしでも過ごせるというのだから驚きだ。奥さまのテレワークスペースはリビング脇、2階へ向かう階段の上り口にあり、ちょうど風の通り道になる。穏やかな庭の景色が眺められ、風を感じる贅沢な環境ではさぞかし仕事の効率も上がるに違いない。
土間やテラスで想像していた通りの使い方ができて嬉しい、とおっしゃるお施主さま。これからもますますこの家でやりたいことが増えていくことだろう。やりたいこと、理想の暮らしを強くバックアップしてくれる。まさにこの家はお施主さまにとって「BASE, HOME, LIFE」なのだ。
間取り図
基本データ
| 作品名 | BASE, HOME, LIFE 小田原のすまい |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県小田原市 |
| 敷地面積 | 262㎡ |
| 延床面積 | 175㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 施主 | T邸 |
撮影:淺川 敏
設計者情報
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