
100㎡以下の土地に駐車場付き2世帯住宅を
無数の工夫で実現した、居住空間の確保とは
制約・要望・課題が多い時こそ
頼りになる、建築家の提案力
基本的な要望は
・2世帯住宅を建てたい。
・2世帯の床面積をほぼ同じにしてほしい
で、各世帯ともに
・駐車場がほしい
・トイレを2つ確保したい
・テラスがほしい
・カーテンを閉めなくて良い生活をしたい
・内装やインテリアにこだわりたい
といったものだった。
これらの要望は、それほど特異なものではない。しかし、土地が100㎡以下であることが、その実現を難しくする要因となった。
そこで効果を発揮したのが、提案力だ。特に思い切った工夫とアイデアの積み重ねにより、これらの要望をすべて実現できたという。
この作品を設計したのは、東京都目黒区にある“株式会社えびじ”の代表取締役、田井弘次さん。関東を中心に活動している建築家だ。
田井さんによると、法規制をクリアしつつ制約がある敷地と空間内で多くの要望を実現することが難しく、だからこそやりがいのあるプロジェクトだったそうだ。
「単にお施主様の要望を実現するだけでは、建築家が関与する意味がないと私は考えています」。
「多くの工夫やアイデアなどの発想力を発揮しなければ課題を解決できないケースこそ、建築家が必要とされるのではないでしょうか」。
実際に、この作品でも他の選択肢がない配置やプランを先に固め、それ以外の数少ない自由度がある場所にすべてのアイデアを盛り込んで要望を実現したという。
田井さんは「課題が多くて難易度が高いほど、やりがいがあるので燃えますね(笑)」と語り、詳細設計を担当したスタッフも「考えに考えて、できることはすべてやりました(笑)」と語ってくれた。
土地や周辺環境などに、課題や問題点があることは珍しくない。そのような時に、課題解決力と提案力で問題をクリアしてくれる建築家ほど心強い存在はいないのではないだろうか。
地下付き2階建ての完全分離型2世帯住宅
出来ることをすべて盛り込んだプランとは
加えて、その実現をさらに難しくする事情があった。
この2世帯住宅は一般的な親子世帯ではなく、お施主様の妻姉妹2家族が入居するものだったのだ。
親子世帯であれば、効率を求めて玄関や廊下・水回りなど一部を共有するケースもある。しかし姉妹とはいえ、異なる2家族なので完全に分離したプランにする必要があった。
また、それぞれの所帯に子どもがいるため、上下階で分けると生活音が気になる可能性がある。
こうした事情を解決するため、基本プランは敷地を上下ではなく左右で完全に分けることを前提として考えられた。
最大の問題は、両世帯が望む駐車スペースだったそうだ。1階が車庫でスペースを取るため、生活空間をその他の場所で確保する必要があったのだ。
第1種低層住居専用地域のため、3階など上に空間を広げることも出来ない。そこで考えられたのが地下室と、小屋裏収納の採用だった。特に法規制の範囲内で、考えられるすべての工夫とアイデアが盛り込まれた。容積率緩和が受けられる地下室の採用もその一例だ。
プラン作成は、まるで難解なパズルのようだったという。最初に、選択の余地がないものの配置から始まった。まず階段の位置が決まり、各世帯2つのトイレの位置を決定。階段の踊り場にトイレを設置することで、上下階のどちらからも使えるのと同時に無駄なスペースを作らない、唯一の場所だった。
北側の世帯で、2階から小屋裏収納に繋がるのは螺旋階段となっている。北側斜線制限のために通常の階段だと高さが不足して頭が当たるため、その回避策として考えられたものだ。
水回りも地下に配置するとポンプやメンテナンス用の設備が必要となり、コストUPとスペースをとることに繋がるので採用しなかった。このように無駄なスペースをとにかく排除し、効率を追求していったのだ。
こうした工夫は、各所のサイズ決定にも及んだ。既製品だと無駄を一切なくすことが難しい。そこで特注のオーダー品や造作家具を多用した。その範囲はキッチン・洗面所・浴室や収納など、ほとんどの場所に及ぶと言ってもいいだろう。
このように、居住空間を最大化する工夫は各所に及んだ。詳細はぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
最初の提案プランでほぼOK!
お施主様に受け入れられる理由とは
それは、お施主様の高い満足度だ。
居住空間を確保できただけでも満足だと思うが、これに加えて自分たちの好みや希望を反映したプランとなっていること。それが高い満足度となったポイントだ。
事実、最初に提案したプランにお施主様は満足し、ほぼそのままの案でOKとなった。なぜこのように、お施主様が納得するプランの提案ができるのか。田井さんにその理由を聞いた。
「普段から、お施主様へのヒアリングは生活の様子や時間ごとの動線をメインに聞いています。間取りは積極的に聞きませんね」。
間取りを聞かない理由は、パズルゲームのようになってしまい、建築家が関与する意味が薄れてしまうと考えるからだという。
一方で、生活の様子や時間ごとの動線は、お施主様が新しい家で過ごす時の条件となる。だからこそ、詳しくヒアリングをするそうだ。
「最初は生活動線を聞きます。平日と休日別に、家の中のどこで何をしているかを細かく聞くことから始めます」。
「また、現在住んでいる家の嫌な点や不便な点を3つ挙げてもらえるようにヒアリングしています」。
「嫌なことや不便なことを3つ聞くことで、現在の不満点がわかります。つまり、その家族の不満点を取り除き、マイナスがない状態からプラスの提案を始められるのです」。
田井さんは、お施主様が言語化できない、生活スタイルや好みなどの非言語化領域を可視化するように意識しているそうだ。だからこそ、最初のプランから満足できるものが提案できるのだろう。
この作品でも、姉妹の各世帯の色や雰囲気の好みなどをヒアリングし、細かく対応している。たとえば洗面のタイルの色や、床・家具など内装の雰囲気や色味などはそれぞれの家庭の好みを反映した。
感性や好みなど、はっきりと言語化しにくい内容を可視化し、提案してくれる。そのような建築家は、とても頼りになる存在ではないだろうか。このような建築家をお探しの方は、いちどコンタクトしてみることをお勧めしたい。
撮影:株式会社ケイ・エスト・ワークス 小林勇蔵
基本データ
| 所在地 | 東京都目黒区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 97.52㎡ |
| 延床面積 | 205.4㎡ |
設計者情報
この建築家が建てた家
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