
個性的な住戸が集うコーポラティブハウス。
全住戸に庭付き一戸建ての豊かさを
光や風を取り込む庭付き住戸。
距離感もほどよい集合住宅
建築家の奥野公章さんが設計した東京・杉並区の『荻窪ロウハウス』もその1つ。1つの建物の中にスケルトンで7つの住戸をつくり、間取りや内装を個別にプランニングしている。
建物全体のコンセプトは、緑豊かな一軒家が立ち並ぶ周囲の街並みに溶け込むよう、「全住戸が庭付き一戸建て感覚で住めること」。屋外と気持ちよくつながり、光や風を効果的に取り込むパッシブデザインの住宅設計に長けた奥野さんは願ってもない適役だった。
そんな奥野さんが集合住宅の形式として選んだのは、各住戸の玄関が独立し、かつ、住戸が上下に重なる重層長屋形式。1つ1つの住戸を少しずつずらしながら並べたり重ねたりして住戸間にすき間をつくり、そのすき間に緑を植えるというアイデアで、全住戸を戸建て感覚の庭付きプランとした。
「庭は住環境を良好にするだけでなく、住戸間に適度な距離をつくります。同時に、建物の中で“庭続き”の関係も創出し、ほどよいプライバシーとコミュニティを両立できると思います」と奥野さん。
実際、入居した方々は和やかな交流を楽しんでいるという。奥野さんの暮らしをイメージする発想力と高度な設計力は、距離感がちょうどいい「現代版・長屋の付き合い」まで生み出したのだ。
中庭付き、キッチン中心など多彩
【CASE1】A住戸:中庭付きの北欧風空間
入居者さまが、ナチュラルで温かな北欧テイストを希望していた住戸。建物の1階南側の1辺をそのまま使った住戸で、玄関から奥に向かって長く伸びた奥行きのある空間だ。
奥野さんはその奥行きを活かして長い住空間の中央にへこみをつくり、空いた敷地を中庭とした。中庭部分はガラス窓で囲み、スチールで窓サッシを造作。窓枠をかなり細くしているので窓の存在感がほとんどなく、家の中に緑が直接入り込んだようで美しい。
壁は白い塗り壁がメインで、アクセントにコンクリート壁も。床はオーク材を使い、白と木目が基調の北欧風空間に仕上げている。
また、『荻窪ロウハウス』が立つエリアは、法規制により建物の高さに制限がある。そこで建物全体の高さを抑えるため、A住戸の1階は少し地下に埋めた設計に。おかげで、ダイニングで椅子に座ると目線の高さに庭が見え、守られているような安心感。しっとりとした落ち着きも感じられ、居心地のよい空間となってる。
【CASE2】C住戸:家飲みが楽しい開放空間
7つの住戸の中で唯一、両サイドがほかの住戸に挟まれた場所に位置する。こう書くと採光や開放感で不利なように思うが、奥野さんはメゾネットを活かして吹抜けをつくり、光に包まれた明るくおおらかな空間を設計。テラスの緑も一望でき、とても気持ちがいい。
LDKは、お酒がお好きな入居者さまのリクエストで、中央にアイランドキッチンをレイアウト。その横には高さをそろえたダイニングテーブルが置かれており、お酒に合わせて気の利いたつまみをつくりつつ、のんびり家飲みを満喫できる。
内装は入居者さまの好みに合わせてコンクリートを多用。コンクリートと木の洒落たデザインも、家での時間をいっそう豊かなものにしてくれる。
【住戸紹介 CASE3・CASE4】
洒落たアトリエ風や、公園のような空間も
建物の北側に位置するが、とても明るい住戸。その秘密はリビングの全面窓と、キッチンの大きなトップライトにある。
リビングの全面窓は、スチールで造作した大きめの格子窓。奥野さんはこの窓と建物のアウトラインとなるコンクリート枠の間に、奥行き1mほどのテラスを設けた。つまり、全面窓は建物のアウトラインよりも約1m内側にある。
この配置によって外部からは室内の様子がうかがえず、カーテンが不要に。窓まわりはすっきりして格子窓のデザインをストレートに楽しむことができ、天井高約3mという空間の開放感もアップ。
キッチンは、キッチン全体を覆う大きなトップライト付き。青空の下にいるような開放感を味わいながら料理ができる、なんともうらやましい環境だ。
内装は天井や壁にコンクリート打ち放しを取り入れ、床は色味がやさしいシベリアンウォールナットを使用。少しインダストリアルな雰囲気に柔らかな日差しがよく似合い、穏やかで洗練されたフランスのアトリエ風に仕上がった。
【CASE4】G住戸:庭が近い公園のような空間
建物最上階の3階にLDKが設けられた住戸。屋外に面する壁が多く、4面採光が可能となっている。
特筆すべきは庭との距離の近さだ。LDKは下階の屋根を使ったルーフテラス側に連続窓を配置。ソファに座っているとすぐ後ろにテラスと緑があり、公園にいるような心地よさを感じられる。
内装は、ほどよくコンクリートを取り入れた白が基調。明るく上品なフレンチポップ風のインテリアが映え、大人も子どももゆったりとくつろげる。
***
全住戸庭付きという離れ技をやってのけた『荻窪ロウハウス』は、集合住宅とは思えない住環境を生み出す奥野さんの設計のすごさがよくわかる。
もっとすごいのは、7つの注文住宅を同時につくったようなものであることだ。しかもそれぞれの住戸は、入居者さまの希望が丁寧に反映されてテイストも異なり、奥野さんの守備範囲の広さも物語っている。
これまでも、外部の自然と心地よくつながる一戸建てを数多く手がけてきた奥野さん。その知見が大いに活きた7つの住戸は、集合住宅の枠をはるかに超えた豊かな暮らしをかなえてくれた。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 荻窪ロウハウス |
|---|---|
| 所在地 | 東京都杉並区 |
| 敷地面積 | 474.55㎡ |
| 延床面積 | 554.8㎡ |
| 予算 | 5000万円台 |
| 施主 | Produced by (株)アーキネット |
設計者情報
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