-1-1600x1070.webp)
光と風が心地よく通る!
傾斜地を生かした「土間のある家」
東西の隣棟感覚を広めに取ることで採光・通風を確保
平山さんが1軒目に建てた家を見て、そのテイストを気に入っていたというⅯさん。希望したのは<庭と土間のある家>だったという。この話を受けて「マンション住まいが長かったMさんだけに、外と室内のつながりや広がりを感じられる住まいを望んでいるのだろうと感じました」と平山さん。その要望を叶える形で完成したM邸は、柱に檜、床にタモ、建具や仕上材にラワンを用いた、シンプルで素朴ながらとても温かみのある仕上がりだ。「等身大の家にしたかった」という平山さんの意図により、建物の高さも少し抑えられているのだという。
それでは、Ⅿ邸の中をご紹介しよう。階段を上がり、玄関をくぐると、そこに広がるのはモルタル敷きの土間スペース。靴を脱いで上がるものの、外から地続きになることをイメージしてつくられた。ここはもともと革細工を趣味にしているご主人や、裁縫を趣味にしている奥様のワークスペースとして設けられたが、<もう1つのリビング>という意味もあるのだそう。「リビング以外にももう1つ、家族が集える場所をつくりたかったんです」と話す平山さん。その意図通り、家族が集まり、思い思いの時を過ごせる場所となっている。
ちなみにⅯ邸の面白いのは、寝室の床まで土間仕様というところだ。「本当は水回りの床も土間で統一したかったのですが、水などがこぼれてシミが出来るなどの問題もあるため、断念しました」。とほほ笑む平山さん。土間を取り入れる設計は多いが、寝室まで土間というのは珍しいだろう。そして、この土間の向こう、南側には庭が設けられており、大きな窓から緑を眺めることができる。さらに土間の奥には、畳の小上がりが。こちらもMさんの要望として挙がっていた、畳の和室を叶えたものだという。「この和室には、いい西日が入るんです」と平山さん。この光の入り具合は、平山さんの設計上のこだわりでもあるのだそう。「東西の隣棟間隔をしっかり確保することで、必要な光や風を取り込めるんです。そのために、通常より広く間隔を取りました」。
さらに「外観は庭に対して一階よりも二階を少し後ろに下げる設計にしています。これにより、一階の土間における穏やかな光の空間に対して、二階は程よい直射光を取り込み上下に抑揚のある空間のつながりがあるよう考えました」と話す平山さん。その光へのこだわりは建物の中だけにとどまらないのだ。
「老後は1階だけでも暮らせる!」将来も見据えた設計
そして、このリビングでとても印象的なのが、庭側に設けられた張り出し窓である。窓際には腰掛けることができる畳のベンチも設けられており、ここに座ると1階の庭を見下ろすことができる。日向ぼっこをしたり、読書をしたりもできる、ちょっとした寛ぎスペースだ。
この窓のほか、ダイニングスペースにも窓が設けられており、こちらは斜面方向に向いているため、開放的な景色を眺めることができる。「斜面の向こうには、川が流れているんです。この川から流れてくる風を軒が受けて、この窓から入るよう意図して設計しました。さらにこの風は西側の窓に抜けるよう考えています」。
光、風、景色。それぞれに細やかに配慮されたM邸に暮らし始めたⅯさんご一家。さっそくお子さんのお友達が遊びに来て、土間やリビングで賑やかに遊んでいるという。また、平山さんが意図した光の入り方や風の通りにも、大変満足していらっしゃるそう。ご夫婦は庭で草木を植えたり、自転車を洗ったり。新居での生活を楽しんでいるそうだ。
「とても大切に住んでくださっていると聞いて、嬉しかったですね」と平山さん。心地よい等身大の家で、これからも幸せな家族の歴史が刻まれていくことだろう。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 神奈川県横浜市戸塚区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 184.73㎡ |
| 延床面積 | 90.26㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | M邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

店舗と母屋、程よい距離感で暮らしが交わる「ハナレ」の家
かつて城下町で、今も路地や町並みにその風情を色濃く残す埼玉県行田市。Kさんは子育てのため故郷であるこの地に戻り、ご実家の敷地内に家を建てようと計画。Kさんのお母様が住む母屋は残し、空いた土地に新居を建設しようと考えた。依頼を受けた金子さんは、1階はお母様が営む店舗、2階がKさんご家族の住居という、それぞれの生活が交わる「ハナレ」を提案する。

本棚のある階段で、ゆったり自分時間 ほどよい距離感が心地よい住まい
狭小敷地で「リビングを中心に、多彩なスペースで家族が思い思いに過ごせる家」という要望に応えた建築家の片山正樹さん。完成した家はのびやかな空間にさまざまな居場所があり、家族つかず離れずの距離感が心地いい。この家の魅力の源となった「階段を生活空間に取り込む設計」とは、どんなものなのだろうか?

眺望も明るさも! 無柱の開放空間をかなえた“キール”とは?
見晴らしがよくて、明るくて、開放的。家族の居場所がゆるやかにつながる一体感や遊び心もあり、夏も冬も快適に過ごせる──。施主様の理想をかなえたY邸ですが、実は西向き・傾斜地など気になる条件もあったのだそう。そんな懸念材料をメリットに変え、魅力的な住まいをつくり上げたのは建築家の蘆田暢人さん。「これぞ建築家の建てる家!」といいたくなる、高度な設計ノウハウと発想力に迫ります。

思い出とモダン建築が融合するやさしい家。 入居者にも愛される賃貸併用住宅
フレイム一級建築士事務所が設計したこの賃貸併用住宅は、都市部にありながら光と風に恵まれた心地よい住まい。思いを込めて建てた家はずっと大切にしたいし、次世代にも大切にしてもらえたら嬉しい──。多くの施主が抱くそんな願いへの答えも隠されている。

のびのびと暮らせる秘密は中庭にあった。 毎日「いいな」と感じる我が家
まんなみ一級建築設計室の堀井博さんが設計したK邸は、外観と内部空間のギャップに驚かされる。外に向かってはほぼ窓もなく閉じた印象なのに対し、家の中は明るく開放的な空間が広がっている。それを可能にしたのは、家の中心にある中庭。中庭を内包する家での暮らし方とは、一体どのような感じになるのだろう。

細長空間で実現した終の棲家「クジラの家」
リタイアしたYさんご夫婦が終の棲家を建てるべく購入した、埼玉県の細長い土地。ここに建築家の矢嶋一裕さんと共につくり上げたのは、土地の形状を生かして家中に光が溢れる横長の家だった。独特の外観だけでなく、建物の中も斬新なアイディアで溢れるY邸。その全貌をご紹介します。

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを
家をつくるならぜひ欲しい、「広々としたLDK」。だがワンルームの大空間をどんなLDKにするかは、設計者のセンスやスキルで大きく変わる。では、建築家の片山正樹さんの場合はどうだったのだろう? 「大田区の家」から片山さんの設計の魅力を探る。

個性豊かな天井デザインのメリットとは?自由も一体感もある、心地よい住まい
建築家の西川拓さん・平田悠さんの「外部との一体感」を生み出す引き出しは実に多い。中でもhouseAは、大開口や庭がないのに屋外とのつながりを感じられる注目の事例。思い思いにくつろげる居心地のよさもあり、2人の感性豊かな設計力が光っている。

三角屋根が印象的!シンプルモダンを極めた二世帯住宅
お子様がいるご夫婦とお母様が住むS邸は、シンプルモダンをテーマにした二世帯住宅。限られた空間の中で2世帯+2匹の猫が心地よく暮らせる住まいをつくり上げた建築家の石川淳さんに、こだわりの家づくりについて伺いました。

