
設計は建築家、内装・外装はデザイナー。
子どもが元気に遊べる「小さくても広い家」
コストを圧縮しつつ、
子どもが元気に駆け回れる家をつくりたい
片流れ屋根の2階建ての建物は、坂の下に向かってスッと立ち上がった人目を引く佇まい。木材とガルバリウム鋼板の外装がスタイリッシュな印象だが、坂を上がってくる人を迎え入れるようなおおらかさもあり、ホッと心が温まる。
『菅家建築計画工房』の菅家 幹さんがこの家の設計の相談を受けたとき、Iさまはご自身でプランを考えていたものの、コストとの兼ね合いに頭を悩ませていたという。3人のお子さまが元気に駆け回れる住まいを望んでいたが、イメージを図面に落とすと床面積が大きくなり、予算を上回りそうだったのだ。
この話を踏まえ、早速、別のプランを提案した菅家さん。菅家さんの案は床面積を大幅に減らしてあり、Iさまのプランの約2/3というコンパクトなものだった。
しかも、床面積を抑えてコストを圧縮しながらも、「子どもが駆け回れる空間」というIさまの要望はばっちり反映。Iさまもすぐに気に入ってくださり、家づくりを進めることに。
菅家さんはいったいどんなアイデアで、「ローコスト」「子どもが駆け回れる」という希望を両立させたのだろうか?
ポイントは階段のつくり方。
コンパクトでも広く感じる秘策とは?
すると、「今回のプランのポイントは、階段をうまく使うことでした」と菅家さん。
まず、階段は1階LDK内の南の窓沿いに配置。壁などで囲わないオープンな造りとし、階段そのものも見た目が軽やかなスケルトンにした。さらに、菅家さんの大きなこだわりだったのが、階段をL字に曲げたことである。
これらの合わせ技の効果は絶大で、数字では測れない空間の広がりをもたらした。
階段沿いは1階、2階ともに大きな窓が開いていて、壁などの囲いもないから、屋外や室内といった横への視線の広がりが実にのびやか。階段自体が見通しの良いスケルトンなので、LDK全体も明るく開放的な印象だ。
加えて、L字に折れて上がっていく階段は、同じ場所でくるくるのぼる螺旋階段のように「上へ、上へ」という意識を生み出す効果があり、一直線の階段よりも縦の広がりが強調される。
このように菅家さんは、広さ・高さを感じさせる設計テクニックを駆使し、床面積を抑えたコンパクトなスペースで開放感を演出。横にも縦にも視線や意識が伸びて「空間を広く感じられる階段」を、見事につくり上げたのだ。
視界が広く、空中散歩さながらに見える景色も変わっていく階段は、子どもから見ると公園の遊具のような魅力を備えていることも見逃せない。そして階段を上がったところには、テラスとひと続きの開放的な2階のホール。
思わずのぼりたくなるデザインで、周囲を眺めながらの上下移動が楽しくて、その先には明るく広々した遊び場が待っている──。
こんなにワクワクが詰まった階段を子どもが放っておくわけがなく、1階、2階の階段まわりはIさまのお子さまたちのプレールーム状態に。階段を上手に使い、豊かな遊び場を創出した菅家さんの設計は大成功といえるだろう。
建築家とデザイナーが手腕を発揮。
分業で、店舗デザインのような洗練を
今回Iさまは、壁や床、造作家具といった内装の仕上げ決定と施工、外装の仕上げ決定は自社で行いたいと考えており、菅家さんは外形および内部の空間構成の設計を引き受けた。そしてIさまは、表情豊かなアイテムを厳選し、菅家さんが設計した建築をヴィンテージ感のある洗練された空間に仕上げている。
躯体の施工はIさまのご友人である『真柄工務店』が行った。Iさま、真柄工務店というスペシャリストたちとの協業を振り返り、「自分にはない発想にも出合えて、すごく楽しかったです」と菅家さん。
外形や空間構成の設計者と、内装・外装の仕上げ決定などの担当者を分ける進め方は、店舗や商業ビルのプロジェクトではごく普通だが、住宅ではまだ珍しいといえる。
しかし、個性と豊かさのある空間設計、センスあふれる洗練された内装デザイン──どちらも高いレベルで具現化されたこの家を見ていると、設計とデザインの分業は、建築のクオリティをぐっと高める可能性を秘めていると実感する。
菅家さんはこれまでにもインテリアデザイナーと組んで仕事をしてきた経験をもっており、「設計だけでもお引き受けしますし、ご相談いただけば、施主さまのために建築家とデザイナーのチームをおつくりしますよ」と頼もしい言葉をくれた。
餅は、餅屋。1人の建築家とじっくり進めるワンストップな家づくりもいいが、各分野のスペシャリストのシナジー効果で生まれる住宅も代えがたい魅力がある。興味をもったら、一度、菅家建築計画工房の扉を叩いてみるのもいいかもしれない。
基本データ
| 作品名 | 小さくても広い家 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都 |
| 敷地面積 | 110.3㎡ |
| 延床面積 | 85.7㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 施主 | I邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
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