
難条件をクリアして快適に。
狭小地のハイデザイン・ローコスト二世帯
敷地、予算、法規制。
数々の制約のなかでつくる二世帯住宅
敷地は13坪とコンパクトな上、既存地下配管の関係で基礎工事可能な範囲が限られ、1階で家を建てられる広さは約11坪。また、耐火規制で木造よりコストが高い鉄骨造にする必要があり、予算バランスも考えた計画が求められた。
難易度の高い家づくりだったが、Yさまは角倉さんが手がける住宅を見て、「こんな素敵な家に住みたい」と依頼を決めた方。そのためY邸は、「敷地条件や法規制をクリアして、ハイデザイン・ローコストの二世帯住宅をつくる」がテーマとなった。
完成したY邸は、スッと伸びた4階建てのシャープなラインも、上階だけ張り出したデザインも、クールな色使いも文句なしにかっこいい。シンプルなのに印象に残り、「素敵な家に住みたい」というYさまの思いにしっかりと応えている。
「期待通りの住まいができ、とても満足しています」とYさま。「角倉さんはこちらの希望の取り入れ方と、プロ目線の提案のバランスがすごくいいんです。わからないことは丁寧に教えてくださるので、全て納得して進めることができました」と振り返る。しかし大満足の住まいができるまでには、どんな条件下でも最適解を出す角倉さんならではのハイレベルな着眼と設計力があったのだ。
制約をデザイン性と快適性に転換。
プロの技が光る3つのポイント
まず、「建物のボリューム配分」を見てみよう。Y邸では予算から逆算して建物のボリュームを最初に決めている。それをどのように配分するかが、最初の検討となった。
Y邸は1、2階のボリュームが奥まった位置につくられ、4階のボリュームが道路側につくられている。このバランスが立体的な魅力となっているのだが、実は1階を小さくしたのは、道路側に前庭をつくり、屋外とのつながりや道路と密接しない心理的なゆとりを生むためだった。さらに2階も小さくしたのは、前庭の上方に開放感を出すためだ。また3、4階のボリュームが道路側にあることで、3階奥にバルコニーが設けられている。
では「窓」はどうか。窓の位置は内部空間への影響と表情ある外観をつくり出すことを同時に考え決められている。印象的なのは、4階の道路側にあるYさま世帯の子ども室の窓だ。ここは端部の外壁の抑えがない、立面の幅一杯の窓で、シャープな印象を外観に与えている。しかしこの窓は「家族が増えて子ども室を2分割した際、各室の非常用進入口(消防隊が入るための窓)に必要な窓幅を確保する」という、条件を解決するための窓でもある。
最後に「階段」。2階玄関に続く外階段は宙に浮いたようなデザインで、外観の洒落たアクセントになっている。ところがこれも、先述の地下配管の制約で、地面に基礎をつくれなかったことから生まれたデザインなのだそう。
条件や制約を完璧にクリアするどころか、デザイン性や快適性に転換してくれるとは、住まい手としてこれほどうれしいことはない。聞けば聞くほど角倉さんのアイデアとセンスに驚き、「そこまで考えてくれているのか!」と感動してしまう。
心地よく暮らせる
ハイデザイン住宅をローコストで
前庭から入る叔父さま世帯は1階がLDK。床は前庭と同じモルタル仕上げなので地続きとなった広がりを感じ、ウッドフェンスで囲われた前庭もリビングの一部のよう。光と緑を感じる心地よい空間となっている。
一方のYさま世帯は、外階段でアプローチする2階奥の玄関から入り、3階へのぼると2面採光の明るいLDKが広がる。4階には主寝室や子ども室などが配され、動線や住み心地も抜群だ。
都会的なモノトーン調の内装のなかでも目に留まるのは、各世帯のLDKにある室内階段だ。角倉さんは外階段と同じく宙に浮いたような軽快な階段をつくり、手すりの支えを床や踏み板と平行させる珍しいデザインで、オブジェのような存在感をもたせた。予算を抑えるため、内装はあまり余計なことをしないように仕上げたというが、階段の印象が空間の質を上げている。
角倉さんに、狭小地で理想の住まいをつくる秘訣を聞いてみた。すると、「できることが限られるケースが多いので、基本的な要素をしっかりつくり込むことが大切だと思います」とのこと。
確かにY邸は高価な素材を使わずとも、建物のボリューム配分や窓、階段など、「基本的な要素」が考えつくされ、ハイデザイン・ローコストの二世帯住宅となっている。信頼できる設計力と、秀逸なデザイン力を兼ね備えた角倉さんの力量をあらためて知る好例だ。人生の一大イベントだからこそ、そんな角倉さんに家づくりを託す人が後を絶たないのもうなずける。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 浅草橋の家 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都台東区 |
| 敷地面積 | 43.88㎡ |
| 延床面積 | 115.69㎡ |
| 間取り | 1LDK+2LDK |
| 家族構成 | 2世帯 |
| 予算 | 4000万円台 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

たっぷりの採光と経年を楽しむ二世帯の秘策は外観で一目瞭然!?
2世帯・4世代・8名が住む家の一番の課題は、両親が住む1階にどれだけ太陽光を落とせるかだった。また、床面積が一般的な住宅より広いため、このままでは厳しい建築条件が課せられることに。両世帯ともに明るく、暮らしやすい空間を作るために、建築家の清水義文さんが考えた秘策とは。

レイヤーの壁で生まれるモダンな表情。自然が暮らしに寄り添う、多摩川沿いの家
独創的で住み心地のよい住宅設計で知られる建築家の伊藤寛さん。S邸ではプライバシーを守るための工夫をきっかけに、屋外の心地よさをふんだんに取り入れた住空間や洗練された外観デザインも実現。平屋住宅の至るところに自然を取り込むテクニックも必見だ。

2棟同時新築は家族の住まいの最適解 家族の和も長年の夢も叶えた白い家
夫婦共働きでの子育てが当たり前になった昨今、増加傾向にある親との同居や近居。ほどよい距離感でそれぞれの世帯が自由に暮らすため、2棟の住宅を新築したNさん・Yさんご家族。1階だけで生活が完結し、光あふれる空間で過ごしたいという親世帯の想いを実現した白い家に迫る。

シンプルな外観のなかに、子どもを見守る動線がしっかり!
シンプルなオウチ型の中にワンルーム形式のリビングダイニングがあり、1階の玄関からは専用の階段で2階へとリビングアクセスするように計画された家です。かならずリビングを通る動線で、子供達の生活を安心して見守ることができます。

通り土間で居場所を増やし、家をひとつに。風が気持ちよく抜ける、深い軒がある家
和モダンな雰囲気を持つ家を新築したいと考えていたお施主さま。依頼を決めたのはこれまでも多くの和の家を手掛けた、建築家の湊さんだ。要望を芯から理解し、デザインが洗練されているだけでなく、心地よく風が抜ける光に満ちた家を実現。鍵となったのは通り土間と深い軒、そして吹き抜けだという。

二世帯の新しい形、見つけた! 親から子、子から孫へ継がれる家
形がいびつで高低差があるばかりか、防火指定地域や斜線規制などさまざまな制約がある土地に、4世代が暮らす2世帯住宅を建てたいというリクエスト。そんな難条件をクリアし、家族の夢を叶えるため、スタジオすぅ 西村佳大さんがとった手法がスキップフロアを使った「継」の家だった。

きらめく滝と、北欧ナチュラルな住空間 注目のグリーンインフラ「雨庭」のある家
都市部の水害に多い内水氾濫を防ぐため、近年、注目されているのが「雨庭」だ。まだ住宅領域ではほとんど普及していないこのグリーンインフラを個人住宅で実現し、災害対策と空間デザインを両立させたフレイム一級建築士事務所のチャレンジを追う。

『生活予想図』から生まれた!?自然素材の“行き止まりのない家
「内装から断熱材まで自然素材にこだわりたい」。小学生の息子さんを持つKさん夫妻の要望に応えて建築家の福田義房さんがつくったのは、地元・埼玉の木材など国産素材をふんだんに使った住まい。シンプルで、おおらか。住む人(や、猫)と共に変化する、家族のようなお家。

選ばれる物件と快適な自邸を!オーナー邸付き賃貸マンション
自邸付き賃貸マンションの建設は規模も費用も大きいだけに、長い目で見てオーナー自身が住みやすく、かつ、円滑な経営が叶うものをつくりたい。「うちはどちらの点でも大満足です」と語るYさん夫妻のパートナーは、(株)イントロンの立岡陽さん。立岡さんが設計した住み心地抜群のオーナー邸と、経営者・入居者の双方に魅力的なマンションとは?









