
家の中心にある通り土間を、風が吹き抜ける
四季と眺望を楽しめる高機能住宅の誕生秘話
素晴らしい眺望を毎日楽しめるように
家の中心に通り土間を配置したプラン
この作品の独創的な点は、以下の3つに集約される。
1:眺望が素晴らしい敷地の特徴を活かすため、家の中心に通り土間がある
2:高気密・高断熱住宅であるにも関わらず、外部空間と繋がりがあり、四季を感じることができる
3:眺望と四季を楽しむため、外構もセットで手がけられている
この作品が誕生した経緯を、ご紹介しよう。
mononomaの代表である建築家の本田さんによると、施主様からの主な要望は、
・住宅性能(高気密・高断熱)を重視したい
・できるだけコンパクトな家にしたい
の2点だった。
他にも部屋数などの細かな要件はいくつかあったものの、基本的には本田さんを信頼し、ある程度“お任せ”された状況だったという。
建築家にとって、施主様から“お任せ”されることは、やりがいがある反面、難しい面もある。
本田さんは、どのようにこの作品のプランを考えたのだろうか。
「私が最初に敷地調査のため現地を訪れた時、その眺望に感動しました。敷地に到着するまでの道路は、住宅街にある普通の景色でした。ところが現地に到着すると、眼の前に素晴らしい田園風景が広がっていたのです。そこで、その時の感動を、施主様やお客様にも感じていただけるプランにしたいと考えました」。
補足しよう。
この敷地は田畑沿いに開発された分譲地で、北側に道路があり、南に田畑が広がっている。田畑の先には、遠くにある山並みを眺めることもできる。敷地は田畑から1.8mの高さがあり、境界に道路もないので視線を気にする必要もない。そこで、まずはこの眺望を最大限に満喫できるプランを考えたそうだ。
では、なぜ家の中心に、通り土間を配置したのか。本田さんはその意図をこう語った。
「道路は北側なので、玄関も北側になります。私が感動した体験を再現しようとすると、北から南への視線の“抜け”が必要だと思ったのです。玄関を入ると、南側の景色が少し見える。そこから南に進むにつれて、素晴らしい景色が広がってくる。これを実現するためには南北の動線が必要で、壁などに遮られないプランを考えた結果、通り土間を家の中心に設置することにしました」。
本田さんによると、施主様から“お任せ”されたとはいえ、最初にプランを提示した時にはかなり緊張したという。
「プランの特殊性から、受け入れていただけないかもしれないという不安はありました。しかし、施主様は私の意図や想いを理解してくださり、その場で賛同していただきました」。
こうして、通り土間が家の中心にあるという独創的なプランが実現した。
高気密高断熱の家でも
四季を感じることはできる
・住宅性能(高気密・高断熱)を重視したい
という点では、通り土間というプランは実現が難しいのではないだろうか。
これについて、本田さんはこう解説してくれた。
「設計にはいろいろなスタイルがありますが、私は無理にデザインを優先する家を作りたいとは思いません。今回の作品でも、特徴ある通り土間を作りたかったのではなく、眺望を楽しむことができる家の最適解として、通り土間のプランが出てきたのです」。
「私は風景に馴染み、長くあり続けられるよう、風土に適した丁寧な建築デザインを常に心掛けています。この作品の設計も、こうした考えに基づいて取り組みました」。」
どういうことか。
高温多湿の日本では、長く住まい続けることができる家であることが重要だ。つまり、その場所や気候に合う家を作るというのが最優先だということだ。たとえば雨や雪が多い地域では、軒を長く出して外壁が傷みにくいようにする必要がある。これは地味だが、とても大切で当たり前のことだという考えだ。
また、住宅の高性能化は進んでいるが、家の中に閉じこもっているだけではもったいないと本田さんは感じている。高気密高断熱の家は、頑丈な扉や厚い窓により、どうしても外と中が分断される。しかし、日本には四季がある。窓を開けて生活できる時期には、窓を開けて生活してほしいという考えだ。
通り土間は、想像以上に風が通り抜ける。屋根は高断熱なので、リビングや各部屋の空気も重力換気(温かい空気が上昇すること)により、室内の空気が引っ張られることで、家全体に驚くほど風が抜ける。水田のほのかな香りも感じられる。もちろん、寒い時期には窓を閉め、暖かく気温差が少ない室内で健康的に生活をすることができる。
本田さんは、熱くこう語った。
「高気密高断熱の家でも、四季を感じることはできるのです」。
すべての作品で、外構も同時に手がけている
その理由は、家の中と外を繋げられるから
mononomaでは、すべての作品の外構もセットで手がけている。その理由を、本田さんはこう語った。
「家の中でも四季を感じていただきたいという私の考えの延長線上に、家の中と外が繋がっていると感じることが大切だという想いがあります。その実現のためには、外構も同時に考えることが不可欠なのです」。
どういうことか。
たとえば、窓の前に落葉樹を植えれば、秋から冬の季節を感じることができる。葉が落ちたその樹木は春になると新芽が出て、夏には葉が茂る。
このように四季を感じるだけでなく、高機能住宅にとっても有効だという。寒い時期は葉が落ちて太陽の光が室内に差し込み、暑い時期には日差しを遮ってくれる。
それだけではない。たとえばこの作品の場合、眺望を満喫するためには、できるだけ水田が見える方が良い。そこであえて、外のフェンスは手すりだけのものを設置した。これにより、リビングやダイニングからもその眺望を遮られることなく満喫できる。
家の中と外が繋がっているという考えは、家の設計の各所にも反映されている。たとえばこの作品の土間の壁は、外壁と全く同じものを採用している。外壁がそのまま家の中にも繋がっているのだ。こうした工夫に加えて、たとえば玄関前や窓の外に植栽が一本あるだけでも、外と中を繋ぐ役割を持たせることができる。
この作品に込められた様々な工夫は、ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
最後に、こうして完成したこの作品の施主様の声を紹介しよう。
・高気密高断熱仕様の住宅のため、室内の温度差が少なく、快適で健康に生活しています
・リビングからの眺望がよく、水田があることで四季を感じられます。特に稲穂が垂れる景色や、雪景色がきれいで気に入っています
・外構も一緒に提案いただいたことで、暮らしが豊かになったと感じています
・息子が走り回って楽しそうで、毎日家に帰るのが楽しみです
・夜の照明が、やわらかくて気持ちがやすらぎます
施主様ご家族が満足している様子が、目に浮かぶ。
その土地の特徴を最大限に活かした家をつくりたい、あるいは四季を感じられる家をつくりたい方は、いちど相談してみてはいかがだろう。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 巾の家 / 通り土間のある家 |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県関市 |
| 敷地面積 | 228.48㎡ |
| 延床面積 | 78.01㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 4000万円台 |
撮影:山内紀人
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

天井高4mのスケール感あふれるLDK。水平ラインの美しさが目を引くモダン邸宅
「天井が高く、屋外とつながる広いLDKが欲しい」という要望を、想像をはるかに上回る理想的な形でかなえた建築家の八田政佳さん。完成した住まいは邸内へ入るまでの動線も訪れる人を楽しませ、デザイン・住み心地ともに魅力満載の住宅となっている。

採光に難ありの敷地でかなえた、 明るく開放的な「奥行のある家」
3方を隣家に囲まれた細長い敷地。これだけ聞くと十分な光が入らない家になりそうだが、建築家の吉田祐介さんは驚くほど明るく開放的な住空間を設計。施主である若いご夫妻の先々の変化も見据えた、永く愛せる快適な住まいに仕上がっている。

夫婦2人暮らしにうれしい工夫が満載。 豊かな居心地を楽しめる田園の平屋
ご実家を建て替え、当面はセカンドハウス、いずれは終の住処にしたいと考えていた施主さま夫妻。依頼を受けた建築家の谷山武志さん・裕子さんがつくり上げたのは、心地よい光や緑に包まれながら、いくつになっても安心・快適に暮らせる家だった。

水郷の暮らしに思いを馳せたプランニング 大きな開口が外部と繋がる、シンプルな平屋
ご両親の家を建て替えることにしたAさま。依頼を受けた建築家の三輪さんは、お住まいになるご両親とAさまのご要望を伺ったうえで、シンプルな平屋を計画。以前の家での生活を尊重し、生活の仕方を変えることなく暮らしやすさのみを向上させた。デザインの要になったのは、川と家が密接に繋がっていた時代だ。

庭の木々と木製家具に癒される…。 都市の中で実現した、憩いの住まい
「デザイン性だけでなく、機能性にもこだわった住まいをつくりたい」。そんなSさんご夫婦の夢を請け負ったのが、いのはな設計の鈴木宏昌さんである。緑を望む庭に、インテリア性の高い造り付け家具、高い断熱性。Sさんの希望をみごとに叶えた鈴木さんの家づくり。気になるその中身をのぞいてみよう。

構造ではなく、素材として魅せる コンクリート壁の可能性
クールでスタイリッシュなコンクリート打放しに憧れる人は多いのではないでしょうか。しかし一般的な木造建築に比べるとRC造(鉄筋コンクリート造)は坪単価が高く、コスト面から諦めてしまうことがあるのも事実。住記屋の鈴木貴晴さんが手掛けた「朝日の家Ⅱ」は、ある方法でその憧れを実現。さて、その方法とは。

『生活予想図』から生まれた!?自然素材の“行き止まりのない家
「内装から断熱材まで自然素材にこだわりたい」。小学生の息子さんを持つKさん夫妻の要望に応えて建築家の福田義房さんがつくったのは、地元・埼玉の木材など国産素材をふんだんに使った住まい。シンプルで、おおらか。住む人(や、猫)と共に変化する、家族のようなお家。

三方を住宅に囲まれた密集地なのに明るい! 光溜まりがもたらした寛ぎを感じられる住まい
敷地の三方向を隣家で囲まれた住宅密集地。そこに「明るく清潔感のある家を建てたい」と施主のOさんから相談を受けたのは、光や風を上手に取り入れ快適な住まいを創ることに定評のある、m+h(エムアンドエイチ)建築設計スタジオの林さん。林さんがO邸に施した秘策は、“光溜まり”でした。

木→コンクリ→ガルバリウム→サイディング 異なる素材を生かしたデザインで個性を演出
区画整理された分譲地だと、敷地形状が同じになるため、隣家の建物との違いを出しにくくなる。その中で建築家の塚本さんが設計したI様邸は、塀や外壁にあえて何種類もの異なる素材を使うことで個性を演出しつつ、奥行きにリズムをもたせる空間表現も考え抜かれた家。室内にも随所に、多彩な工夫が凝らされている。

