
リフォームでここまで変わる!
光あふれる洗練の二世帯住宅
重量鉄骨の良さを最大限に生かして、広々空間に
同様にTさんご家族も悩んでいた。
T家には、母娘の2人住まいから息子さん一家4人との二世帯同居になる予定があった。二世帯となると、水回りの増設など間取りを大きく変える必要がある。加えて、25年という、老朽とまでいかないものの新しいとも言い難い築年数。耐震性への漠然とした不安もあり金融機関に相談すると、建て替えをすすめられたそうだ。そんな折、相談会で伊波さんに出会い、Tさんご家族は建て替えからリフォームへと舵を切る。
伊波さんはリフォームをすすめた理由をこう語る。
「既存の建物は1階が駐車場で、重量鉄骨ラーメン構造の3階建てでした。耐久性の高いしっかりした造りですから、建物が備えている潜在能力を引き出せれば、建て替える必要はありません。さらにリフォームなら、解体でかかる工期や費用の負担を削減でき、その一部を内装の充実にあてることができます。問題は二世帯にできるスペースがあるかですが、それも大丈夫だと考えました」
耐久性に優れた重量鉄骨は、それだけに解体にも時間とコストがかかる。伊波さんがリフォームをすすめたのも納得だ。
さらに伊波さんの言う通り、T邸は延床面積 約336㎡と広さは十分であるが、部屋が多く細分化されていた。リフォームでは間仕切りを撤去し広々とした空間へ、ドラスティックな変更を提案する。
「重量鉄骨は柱が少なく間仕切りを取り除けるため、間取りを自由にデザインできます。そのため、思い切ったリフォームができたのです」
もうひとつ、開けた空間を演出するために、伊波さんは玄関の移動を提案した。建物の端にあった玄関を、建物の中央へと変更したのだ。玄関の場所に大きな変更を加えるアイデアは、マクロな視点で家を考える建築家ならではだ。
「建物の中心に玄関を持ってくることによって、廊下をなくすことができました。その分、部屋にスペースを割くことができたのです」
確かに、建物の端から入る場合は、奥の部屋へ人を導くため、廊下が必要になってくる。建物の中央に玄関があれば、部屋が左右に分かれるため奥行きが浅くなり、廊下を省くことも可能になってくる。
大胆なリフォームには、途中変更も多く入りそうだがどうなのだろうか?
「もちろん、着手前に先方のご希望やイメージなど、綿密な打ち合わせは行います。しかし、頭の中のイメージを明確に表現するのは難しいものです。ですので、僕の場合はイメージをうかがいながら、進捗をこまめに見てもらって『これで行きますが大丈夫ですか?』とその都度うかがうようにしています。おかげで、大きな変更や修正が入ることはありませんでしたね」
その結果、広々とした明るい空間へとリフォームを遂げたT邸。白でまとめられた屋内は、まるでどこかのリゾートホテルのようだ。伊波さんの丁寧かつ細やかな対応が、理想のリフォームを実現してくれたのだろう。
アイデアと想いが詰まった「移動式掘りごたつ」
ひとつは「イリズミ(入隅)」の問題。イリズミとは建物のくぼんだ箇所のこと。T邸は逆L字型になっており、直角に曲がった内側の角が「イリズミ」となる。
「T邸の場合、2階の一部がイリズミだったのですが、イリズミに接した部屋は大きな窓を付けることができず、暗くなりがちです。そのため、大きな窓を設置できる部屋とつなげて、彩光を取る必要がありました」
言葉の通り、2階のイリズミに接した部屋はつなげ、広々とした空間になっている。もちろん、使い勝手を考えて部屋を仕切れるよう、つり引き戸も設置した。
ふたつめは、お母様たってのご希望の「掘りごたつ」である。
というと、かなり不思議に思われるだろう。通常の掘りごたつは大きさも限られており、部屋の広さは関係ないはず…と。そう、この「掘りごたつ」が、T邸のリフォームの大きなポイントとなった。
「普通に掘りごたつを設置するのは簡単です。しかし、それは避けたかった」
伊波さんが掘りごたつの設置を避けたい理由は3つ。
・立ち上がる際の足腰への負担
・生活の場が固定されてしまうこと
・椅子に腰を掛ける人と視線の高低差
温かいこたつは、特に冬場はなかなか離れられず、一日中過ごしてしまう。設置型の掘りごたつとなれば、なおさらだろう。そして、視線の高低差。ここにも伊波さんの細やかな気遣いが表れている。
「床に掘り下げるタイプの掘りごたつは、椅子に座った人との目線の高さに差が出ます。椅子に座った人から見下ろされる構図になるのです。この視線の高低差は威圧感を生じさせます」
伊波さんは、自由に場所を移動できるキャスター付きの掘りごたつを製作。見事、この課題を解決した。
なるほど、移動式の掘りごたつなら、好きな場所を選んでくつろぐことができる。床を掘り下げていないので、立ち上がりも椅子と同じくスムーズだ。高低差については、同様の多目的台を製作し、そこに座れば目線がそろうようにした。
とはいえ、せっかくの「移動式」もスペースがなければ意味がない。場所をスムーズに移動するには、柱や障害物のない広い部屋が必要となる。そして、T邸では構造上それが可能だったのだ。
伊波さんはこう語る
「今の時代、家で過ごす日常は、旅行などの“ハレの日”と違って、ともすると単調になりがちですし、多忙で日常の楽しみに重きをおく余裕がない方も多いかもしれません。しかし、その日常のほうが圧倒的に長い。それならば、小さいながらも変化に富んだ動きを感じられる日常を家で過ごしてほしい。そのためには、居場所が固定されない自由度の高い空間が必要でした」
日常を豊かに過ごすアイデアが詰まった伊波さんの掘りごたつは、冬を迎えて大活躍しているそうだ。
【伊波 一哉さん コメント】
社交的で仲の良いご家族でしたので、2階のリビングを両世帯が使えるようにしました。ご家族みんなで、また、お母さん、お嫁さんのご友人を招いた際の団らんの場としてお使いいただければと思っています。施主様からいただいた年賀状に「移動式掘りごたつが活躍しています」と書かれていたのがうれしかったです。
基本データ
| 所在地 | 東京都杉並区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 約261㎡㎡ |
| 延床面積 | 約336㎡㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 施主 | T邸 |
設計者情報
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