
家族の伸びやかな暮らしを実現した
『トンネル』のある住まい
性格の異なる2つの庭を
トンネルでつなぐというアイデア
その広々とした敷地の真ん中にレイアウトされた建物は、東西に長い直方体の上に切妻屋根を架けた平屋建て。じっくり腰を据えた安定感のある躯体は存在感を示しつつも、マットな青い屋根も相まって周辺環境とも違和感なく調和している。
「基本的に僕は、奇抜な家とかをつくろうとは思っていません」と相良さんが話すとおり、東西方向にあたる妻側から眺めると、三角屋根のシンプルな佇まい。頭の中で思い浮かべる“家”とはまさにこのカタチだろう。
しかし、「奇をてらった設計はしたくないのですが、ただ、例えばハウスメーカーさんの家と並んだときに埋没しても楽しくありません。ですので、自分が手掛けた家を見たときに『なんか面白いな』とか『ちょっと変わってるね』と思ってもらえるような建物を目指しています」と、話を続けた相良さんの言葉どおり、平側に回ってみると驚きが待っていた。なんと家の中にトンネルが現れたのだ。
当初は敷地の北側に建物を寄せ、南側を広くとり車庫と庭をつくるプランだったという。しかし、施主と打ち合わせを重ねるなかで敷地の真ん中に建物を置いて、南庭と北庭という少し性格の異なる庭を設けようという方向に。
「南側の庭は道路に面しているのでパブリックな庭というイメージです。北側の庭は隣にお施主さんのお父様の畑があるので、よりプライベートな庭という位置付けにしました。2つの庭を家でつなぎ直すみたいなイメージで、トンネル状のリビングダイニングのあるプランを提案しました」と相良さん。
リビングダイニングの南北に設けられた開口部は、高さ約2.1m・幅約3m。屋根の形状を活かした現し天井の高さは、最頂部で4mを超える。柱のない約16畳を確保することで驚くほど開放的な空間が生まれた。リビングダイニングとつながったキッチンの天井を相対的に低く抑えたことで、高さがより強調されている。
「図面をお施主さんに見せたときはあまりピンと来てなかったようです。でも、工事中にリビングダイニングを鳥がヒュンと通り抜けたんです。それで施主さんもこのトンネルを実感されたようです」と、相良さんは当時を振り返る。
大きな余裕のある敷地で
家族の希望を十二分に実現
家事動線を鑑み、キッチンの並びに浴室と洗面室をレイアウト。キッチンには外物置に直接出られる勝手口も設け、ゴミ出しなど日々の暮らしで繰り返される家事の労力を軽減するのにひと役買っている。洗濯機のある洗面室にも勝手口があり、家の北側にある物干し場にも容易にアクセスできるようになっている。
採光条件に恵まれた敷地の良さを最大限に活かすため、ソーラーパネルの設置も施主は希望されたという。そのため切妻屋根の南屋根面のほぼ全体にソーラーパネルを敷き、「発電効率を考え、屋根は5寸勾配としました」と相良さん。ただ、これも施主の希望だった青いガルバリウムの屋根がパネルで隠れてしまうため、外物置の外壁に屋根と同じ青いガルバリウムを取り付けた。物置の目隠しとなるとともに、家の顔のアクセントとしてもうまく機能している。
太陽光発電の効率を考え屋根を5寸勾配としたことで、屋根裏に大きな空間が生まれた。その空間を有効利用するため、家の東サイドに大きな屋根裏収納を設けた。広さは約20畳分もあり、まとまった空間としては家の中で一番床面積が広いという。
家の西サイド、ちょうど和室の上にあたるところにも約4畳分の屋根裏部屋がある。「ここは子どもたちの“隠れ家”です。東側に大きな屋根裏収納があるので、収納としては必要なかったのですが、当時幼かったお子さんたちの遊び場になるようなスペースとして、この屋根裏部屋を提案しました」。ハシゴで登って行った先にある空間は、小さな子どもにとって特別な“秘密基地”だろう。
平屋であることとソーラーパネルを採用すること以外に施主が希望されたのが「のどかな環境のなかで、伸び伸びと暮らしたい」ということ。2つの庭を結ぶリビングダイニングのトンネル。このおおらかな空間を介して、外と内があいまいかつ緩やかにつながった「基山町の家」は、Iさんファミリーの伸び伸びとした暮らしを実現できていると言えそうだ。家が完成した後、Iさんからも「庭と家が繋がり、伸び伸びと暮らすことができています」との相良さんは言葉をいただいたという。しかしその言葉以上に、ここに掲載されている家族のさまざまなシーンの方が雄弁に物語っていると思うのだが、いかがだろう。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 基山町の家 |
|---|---|
| 所在地 | 佐賀県三養基郡基山町 |
| 敷地面積 | 651.09㎡ |
| 延床面積 | 128.21㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | I邸 |
撮影:石井紀久
設計者情報
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