
手間暇惜しまず、じっくり寄り添い
施主の理想を実現した整骨院と自宅
土地探しからショールームめぐりまで
施主に寄り添い、ワンチームに
実は飯野さんとTさんは、患者と先生の関係。Tさんは、それまで飯野さんの地元である結城市の整骨院で働いていて、そこに飯野さんが患者として通っていたのだという。
「何度か施術に通っている中で仕事の話となり、こんなことをやっているので、よかったら遊びに来てくださいといった感じで、私が主催するオープンハウスの案内をしたところ、Tさんが来てくれたんです」と飯野さん。
ちょうどその頃、地元である古河市に戻り、整骨院兼自宅を建てたいと思っていたTさん。オープンハウスを訪れ、飯野さんの仕事に触れ「家づくりをお願いするのは飯野さんしかいない」と感じたのだという。
「飯野さんが手がけた物件の外観や内装も素敵で、家づくりの工夫やこだわりに、私も妻も一目惚れしました」とTさん。
こうして、Tさんと飯野さんの整骨院・自宅づくりがスタートしたのだ。
飯野さんの仕事の特徴は、施主に「寄り添う」こと。
建築士としてただ建物を設計するのではなく、土地も一緒に探す、住宅ローンも専門家と共に相談に乗る、ショールームに同行し部材選びのアドバイスを行うこともしばしば。そして、プランづくりにおいても、じっくり時間をかけ丁寧にヒアリングを行う。ときには食事を共にし、雑談の中から施主やご家族の興味・関心やライフスタイルを探り、住まいに対するイメージを共有していくのだ。
実際、Tさんとも何度となく対話を重ねた。「仕事のお昼休みに、事務所に打ち合わせに来て頂いたり、一緒に食事をしながらお話をしたりもしました」と飯野さん。
プランづくりの前に、じっくり時間をかけることは、一見すると非効率のように感じるが、飯野さんはその手間暇を惜しまない。「施主の本音を探ること」「丁寧に関係性を築き1つのチームになること」こそが、飯野さんにとって最も大切なことであり、満足度の高い家に仕上がる秘訣なのだという。
共通点は癒しの空間
整骨院と自宅それぞれの独自性を確保
古河市の中心を南北に走る国道から、T邸が見えてくる。白く清涼感のある2階建て部分は自宅、その奥のグレーの建物が整骨院部分だ。逆L字に2つの建物が繋がっているようなイメージ。建物を同一の外観とせず、あえて色分けをすることで、整骨院と自宅、オンとオフをきっちりと分けたデザインとした。
敷地の使い方にも飯野さんは工夫をこらした。
「この地域は車での移動が主で、訪れる患者さんの多くも車で来院されることを考え、メインの道路側に開けた形で整骨院を配置しました」と飯野さん。
角地の敷地の角部分に整骨院を設けた。それは、幹線道路から整骨院がよく見えるよう、また整骨院前に設けた駐車スペースに入りやすい配置とするため。整骨院が来る人を迎え入れやすいようにという配慮だ。
こうなると、住宅の前に患者さんの車が停まるような形となるが、プライバシーへの配慮も抜かりない。自宅1階の駐車場サイドは、パントリーや和室、階段などのスペースにすることで、極力窓を排除。自宅の玄関やリビング、ウッドデッキなど開かれた部分は逆サイドにまとめたのだ。いわば、駐車場には背を向けた形となり、家族は訪れた患者さんからの視線や車を気にすることなく、生活できるようにした。建物の構造においても、オンとオフを切り分けたのだ。
自宅の中に入ってみると、敷地の裏側とは思えないほど明るいリビング・ダイニングが広がる。キッチンに設けられた大きな窓から光が差し込み、室内を明るく照らしているのだ。フローリングの木の温かみ、白い壁の清涼感も、居心地の良さを感じさせてくれる。
Tさんのこの家のお気に入りポイントの1つでもあるキッチンは、奥様の意見を反映した飯野さんの完全オリジナル。ミーレの食洗機を入れたいというリクエストに応え、天板のステンレスの厚みにまでこだわった力作だ。当初は、既製品の導入を考え、何度もショールームに足を運ぶも、理想のものに出会えず飯野さんが作成することとなったのだという。収納は扉をつけないオープンシェルフを採用。見せる収納とすることで、いつもキッチンが片付いているという状況をつくりだした。
もうひとつのお気に入りが、リビングの先にあるジョリパット(塗り壁)のアクセントウォール。柔らかみを感じさせる室内の中、テレビが置かれ視線が向きがちな壁に色を入れることで、落ち着きをもたらした。理想のグレーを求め何度も試し塗りをするなど、手をかけただけある仕上がりとなった。
一方の整骨院側、外観は自宅との色合いの違いを出したが、内装は共通点が多い。木の温もりを感じさせるフローリング、白く清潔感のある壁。天井校の高さを利用した高窓から、太陽の光を導き、明るさを感じさせてくれる。外からは患者さんの様子を伺うことができないよう、プライバシーの配慮も抜かりない。
自宅、整骨院ともに、ゆったり落ち着く、「癒しの場」として相応しい建物となった。
この仕上がりにTさんも「コストと仕上がりを絶妙なバランスで実現してくれた」「理想の家に仕上げていただいて感謝している」とコメント。
じっくりと対話を重ね、施主の叶えたいことを探った上で、類まれなるアイデアで理想の家に仕上げる飯野さんの手腕に、ファンが多いのも頷ける。
飯野さんは、定期的にオープンハウスを行っているというが、飯野さんのお客さんの多くがそれに快く協力してくれるのだという。それは、自身の家が人に見てもらいたくなるくらいの出来栄えだからと言えるのではないだろうか。さらに「飯野さんに協力したい」「飯野さんの家の良さをもっと他の人にも知ってもらいたい」という思いなのかもしれない。そう思わせるほど、飯野さんとの関係や絆が深くなっているのだ。
「こだわりの注文住宅を作りたいなら、飯野さんにお任せすれば間違いない」とTさんも太鼓判を押すほど、飯野さんにも、飯野さんがつくる家にも魅力がいっぱいだ。
基本データ
| 所在地 | 茨城県古河市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 370.05㎡ |
| 延床面積 | 118.98㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | T邸 |
撮影:lassic Photo Works
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

オンオフがスムースでハッキリ!こんなオフィス兼用住宅が欲しい
Hさんご一家は「ご夫婦+お子様2人」の4人家族。長らく都内のマンションで暮らしてきましたが、お子様の成長に伴い居住空間が手狭になり、さらに、ご自身の仕事を集中して行える環境を自宅内に設けたいという思いから、一戸建てオフィス兼用住宅の新築を決意しました。

外に閉じ、中に開く別邸 新たな人生に彩りを与える大人の遊び場
会社を手放し、人生の新たなステージへ踏み出そうとしていたIさん。求めたのは、音楽スタジオを備えた別邸だった。動画撮影も演奏もできる本格的な設備、仲間が集まる場、そしてサウナまで。設計を託されたのは、茨城県で活動する建築家・江ヶ崎雅代さん。江ヶ崎さんは「機能を満たすだけでは不十分」と考え、人生に彩りを与える空間を目指した。壁に覆われた外観からは想像もつかない世界が、その内側に広がっている。

建物と設備の相乗効果で環境負荷を低減する実験的エコ住宅
建築環境設備分野の博士が施主だという『松河戸の家』は、建築と設備技術の両面からアプローチしたユニークで新しい実験的エコテクノロジーが導入されている。環境負荷を減らしたエコ住宅は、一歩先をゆくこれからのスタイルの一つ。どのような建築的工夫がなされ、テクノロジーが導入されているのか、笹野さんに詳しく話を伺いました。

東京から山梨に移住した家族が目指したのは、地域とののりしろ空間。
Mさんご夫婦と小さなお子さんの3人家族が、それまで住んでいた東京から移住先に選んだのは山梨だった。都市部では人間関係が希薄になりがちな印象だが、移住先によっては、地域との結びつきが大切になることも少なくない。そのことを何より重視し、何らかの方法で住まいにも投影できないか?そんなMさんご夫婦の想いを形にしたのが建築家の稲山貴則さんだ。地域の人から愛されつつ、季節を問わずに快適に過ごせる理想的な家づくりをご紹介します。

見せる家!借景もアートもセンスよく調和される空間づくりとは?
更地の状態が長年続いていたWさんの所有地は、ひな壇の斜面地にあり、草木のうっそうと生い茂る公園に隣接するという立地条件。この環境のメリットを最大限に活かした新居を建てるべく、建築家の市川均さんに設計を依頼することに。結果、「明るく、風通しがよく、開放的で、眺望のよい」住まいが完成しました。

洋の家具もしっかり馴染む!上質で快適な”和”空間づくりとは
Mさんご家族は、30代の共働きご夫婦と小さなお子さん2人の4人家族。「四季や自然を感じられる、飾り気のない住まいを」という願いを受け、日本ならではの自然素材を用いた住宅建築を展開する建築家・加藤武志さんがつくりあげたのは、まさに「人、自然、家が一体となる安らぎの空間」だった。

2つの階段がポイント!一世帯にも二世帯にもなる家はこうつくる
すっきりとモダンな空間で快適に暮らすことを一番の希望として、奥様の実家の建て替えを決めたNご夫妻。加えて、状況によっては息子さん夫婦との二世帯住宅にもなるような可変性の高い家ができないかとも考えた。とはいえ二世帯はあくまで可能性の話。玄関にキッチン、水回り…一世帯と二世帯の場合で変化するポイントはたくさんある。設計依頼を受けたアパートメントの滝口聡司さんは、どのようにこの要望に応えたのだろうか?

黒い壁のなかに白い家!?難題をクリアしたオシャレ二世帯の知恵
住宅が密集した都市部に家を建てる際、大きな課題となるのが採光とプライバシーのバランス。明るく開放的な住まいを希望すると近隣の住宅が間近に迫るため、結果的にカーテンを閉じたままの暮らしにもなりかねないからです。そんな心配も見事に解決した、建築家ならではの技が随所に光る二世帯住宅を紹介します。

玄関に入った瞬間に広がる大空間。 シンプルだからこその豊かさが感じられる家
家族で暮らす家を新築するにあたり、造作家具を生かせる空間にしたいとお考えだったお施主さま夫妻。設計を担当した建築家の三輪さんが要望を受けて実現したのは、シンプルを極めたかのような開放的な大空間。驚くのは、シンプルに整えたからこそ、暮らしやすさや家の使いやすさも極まっていることだ。





