
森を取り込む!
お隣や森の木々へ別荘地ならではの配慮とは?
外の森を眺めるより、家のなかに森を取り込む窓と間取り
まず初めにいつもするように、この土地に建物が建ったとして、どの辺にいて、何を見たいかを考えた。どこに道路があって、どちらが開けているか、どの位置にいると隣の建物が見えるのか。その場所を検分して長濱さんが出した結論は「何もしたくない」だった。
「雑木林の木もれびがすごく気持よかったんですよ。むしろ、ここでハンモックを吊るして横になるのが一番いいんじゃないかと思うぐらい。そこで、この雰囲気を壊さないように、なるべく建物は道路から遠くの奥に下げて、生えていた木も切らずに残そうと考えました。」
既に、調達してあったキッチンを使いたいという以外に、特別なにかをしたいという要望はなく、木を残して建てるという提案もすんなりと受け入れられた。
「森を見ながら家に入っても家に入った感じがしないといいますか、生活感がないようにしようと考えました。空間を細かく区切るようなものがない、森に入ったときの包まれているような感じをつくりたいなと」。そう考えて、プランを練った。
別荘地ではあるが、実は隣の敷地の建物と隣接していて、あまり大きな窓をつけると隣の家が見えてしまう。それもあって、窓を大きくたくさんつけて木を眺めるよりも、木々のなかにいる感覚を家のなかに再現しようと、考え方を変えた。そして、細かな窓をたくさんつけることに。部屋のなかでも木もれびを楽しめるように窓の配置も考えた。
吹き抜けの高い天井に向かってスッと伸びた薪ストーブの煙突は木と同じかたちのように見えた。外観も周囲に溶け込むように、全体の高さや色合いにも気を配った。森に包まれている感覚を楽しもうという、この場所ならではの別荘のイメージは、どんどんかたちになっていった。
完成した建物は明るく開放的で、施主のAさんいわく「人が呼びやすい」別荘になった。長濱さんもバーベキューに呼んでもらったことがあるという。「やっぱりいいですね。デッキのところでバーベキューをしたんですけど、気持ちがいいです。窓からの日の入りかたも良くて。雲で日が陰ったりすると、床や壁にうつる木もれびが浮かんだり消えたりして、すごくきれいでした。」
Aさんは、夏場になると月に2回は出かけて、のんびり過ごしたり、お客さんを呼んでバーベキューを楽しんだりしている。“森に包まれるような” 別荘は、第二の我が家として大活躍しているようだ。
別荘らしい広々とした空間を実現した構造の工夫とは?
ドアがあるのはトイレとお風呂に入る2カ所だけ。あとは玄関からキッチンまで、大きなワンルームのようになっている。この広々とした空間を実現したのは、天井部分にあるトラスという構造。橋桁や大きなタワーでよく見かける、この三角形のかたちは強度があり、柱のない広い空間を実現できた。ところどころに開いた窓からは木と空が見え、まさに森のなかにいるような空間になった。
基本データ
| 所在地 | 山梨県北杜市 |
|---|---|
| 延床面積 | 120.65㎡ |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | A邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

娘が望んだ南欧風に、父が望む和の空間はどう収まったのか!?
古くなった家を建て直すことにしたHさんご一家。仲の良い家族ですが、生活スタイルや好みは親世帯と子世帯では異なります。大半は共有するけれど、それぞれがこだわるプライベート空間は残す、それがHさんご一家にとってのベストバランスでした。

正面は「田」の字形のコンクリート外壁。防火地域ながらも、外壁の安心に囲まれて家族の将来を見守り続ける木造の家
20年~30年後、50年後、100年後の未来を見据え、家族構成の変化や、その時々に住まう人のライフスタイル、将来的なリノベーションなども考慮して設計している「裕建築計画」の浅井さん。キーワードは「長く住み継げる」&「ライフスタイルの変化に順応できる」家。今回紹介するK様邸は名古屋の商業地、防火地域にあり、難しい諸条件を斬新な発想で解決して、末永く住み継いでもらえる住まいだ。

眺望も明るさも! 無柱の開放空間をかなえた“キール”とは?
見晴らしがよくて、明るくて、開放的。家族の居場所がゆるやかにつながる一体感や遊び心もあり、夏も冬も快適に過ごせる──。施主様の理想をかなえたY邸ですが、実は西向き・傾斜地など気になる条件もあったのだそう。そんな懸念材料をメリットに変え、魅力的な住まいをつくり上げたのは建築家の蘆田暢人さん。「これぞ建築家の建てる家!」といいたくなる、高度な設計ノウハウと発想力に迫ります。

店舗と母屋、程よい距離感で暮らしが交わる「ハナレ」の家
かつて城下町で、今も路地や町並みにその風情を色濃く残す埼玉県行田市。Kさんは子育てのため故郷であるこの地に戻り、ご実家の敷地内に家を建てようと計画。Kさんのお母様が住む母屋は残し、空いた土地に新居を建設しようと考えた。依頼を受けた金子さんは、1階はお母様が営む店舗、2階がKさんご家族の住居という、それぞれの生活が交わる「ハナレ」を提案する。

築40年マンションが洗練空間に一新。水まわりも移動して理想の間取りに
結婚を機に築40年のマンションをフルリノベーションした施主さまご夫妻。「難しい」とされることが多い水まわりの移動も行って間取りを変え、内装はシンプルモダンな洗練空間に一新。設計を担当した八田政佳さんに、思い通りの間取り・内装を実現し、長く快適に暮らせるリノベーションの秘訣を聞いた。

『好き』に囲まれて暮らす大人の住まい 本も薪ストーブも抜群の眺望も
人生最後の家づくりになるかもしれないとしたら、あなたはどんな家を建てるでしょう?機能性の高い家?デザイン性の高い家? 定年を迎えセカンドライフを歩み出したTさんご夫妻が望んだのは、機能性とデザイン性を兼ね備え、さらに「好き」に囲まれた家。この難題をクリアし、施主の期待以上の家に仕上げたのは、居心地の良さと豊かな暮らしづくりに定評のある建築家、松本直子さんでした。

つくるのは、住まいではなく暮らし 今見直される、これからの暮らしのカタチ
コロナ禍において、通勤することを前提とした住まいが見直されつつある今日。 いち早く都心の喧騒を脱し、ワークライフバランスを確立されている建築家、増木奈央子さん。 街にいながらも、自然豊かな環境でゆったり過ごす「トカイナカ」暮らし。 そこには、ポストコロナに相応しい、人間本来の暮らしがあった。

建築の力が一役買った 障がいのある人々と地域との共生
建築には力がある。どんな建築物でも少なからず、そこに住んだり通ったりする人々の感情や行動・生活に影響を与える。さらにその影響力は地域住民や周辺環境にも及ぶことだろう。 裏を返せば、建築の力は社会問題の解決の一助になりうるのだ。「障がいのある人々と地域の共生」というテーマを、建築の力で実現した、建築家高瀬元秀さんの仕事に迫る。

《集合住宅の事例》2階がある!?一戸建て感覚の空間が楽しい!
マンションでは珍しい一戸建て感覚の間取りを、建築家・谷内田章夫さんは法規上の制約を逆手にとって実現。しかも、谷内田さんが手がける集合住宅はメンテナンスの手間やコストが最小限ですむという。住む人はもちろん、オーナーにも魅力的な空間の秘密とは?

