
天空の別荘地で気分転換
願いを叶えたリフレッシュ空間
「風」と「抜け」をキーワードに
ワクワク感満載の別荘を建てる
ご主人は寒冷地での単身赴任の体験から、家づくりはその土地の気候に精通した人に依頼すべきだという考えを持っていた。購入した土地は傾斜地で、崖にも詳しいほうがよいというポイントもプラスして設計事務所や施工会社をリサーチ。そこで米村和夫建築アトリエの米村和夫さんと出会った。
「一番大切なのはコミュニケーション。最初に、思っていること、考えていることは何でも話してくださいと言うんです」と米村さん。まずは方向性を一緒に探り、深めていく作業に時間をかけ「別荘とは?」という根本的な考え方から意思疎通を図っていった。
別荘でチャレンジしたいことや理想の過ごし方を細かにヒアリングすると、「なにはともあれワクワク感が満載でなければ」「寄り道感覚で家の中を動ける、居所がたくさんある別荘にしよう」「どこにいても五感の全てで心地よさを感じたい」という方向性が見えてきた。それらを「風」と「抜け」というキーワードに落とし込んで間取りに盛り込み、演出することにしたのだという。
濃密なコミュニケーションによるプロセスを経て米村さんがつくりあげた別荘は満足度の高いものになり、夫妻はとても喜んでくださったという。要望が叶えられたことはもちろん、こだわりや生活スタイルをしっかりと見極めたおかげで、これからの過ごし方が楽しみになる別荘ができたからだ。
眺望を最大に生かしたプランで
富士山と夜景をドラマチックに楽しむ
壁を最小限にしたいという要望から始まったLDKだが、米村さんはまさにワクワク感や、他の場所では得られない落ち着きなど、心が揺さぶられるポイントを散りばめている。たとえば景色を楽しみながら料理できるオープンキッチン。カウンターに座って向き合ったときキッチンに立つ人と目線が合うように、キッチン側の床を少し下げている。近い距離感で、ムードも楽しみながら食事ができるとっておきの空間だ。しかし、料理を味わうのがダイニングだけではもったいない。自然に包まれながらの食事やお茶の時間をいつでも満喫できるよう、キッチンの背面にコート(中庭)に直接出られる扉を設けた。
リビングは大開口かつ全方向に開いた窓が印象的で、足を踏み入れた途端に誰もがときめいてしまうに違いない。窓を開け放てば室内を風が抜けて気持ちいい。ああ、別荘に来た! という実感も湧くだろう。どこを向いても空に向かって視線が伸びるが、特に駿河湾に向く方向はガラス張りとし、眼下いっぱいに広がる絶景を楽しめるようにした。海から続く沼津や三島の夜景も素晴らしいという。
感動するシーンとして最も強く描いたのは、薪ストーブを前に夕方の富士山と夜景を眺める瞬間だ。心が安らぐ効果があるといわれ、また、非日常のシンボルである薪ストーブ。薪がパチパチとはじける音を聞きながら、窓一杯に広がる富士山を夫婦2人占めするように見られたら、どんなに贅沢なひと時が過ごせるだろう。
しかし、人気の別荘地であるゆえに周辺にも家が並んでいる。そこで米村さんは、隣家を構造の耐力壁で隠すことを提案した。薪ストーブ背面の耐力壁に、個性のある石を貼ることで風景を切り取ったのだ。天空の箱根にたった一軒の家が佇んでいるかのように、視線を遮るものなく四季折々の雄大な富士山が美しく見られるピクチャーウインドウができ上がった。
LDKのほかにも魅力的で、ワクワクするような仕掛けがたくさんある。中でも特徴的なのは、家の中に3つのコート(中庭)と呼ばれるスペースが設計されていること。先述のキッチンから直接出られるコートは、寝室からフラットに続くウッドデッキだ。もちろん食事のほかにも、寝袋にくるまって星空を夜通し眺めたり、太陽の光を浴びながらエクササイズしたりと、自然を感じながらくつろげる場所として活用されている。
ウッドデッキのほかにはシンボルツリーが印象的な玄関脇のコート、水回りと寝室の間の屋根付きコートがあり、それぞれ趣の異なる眺望を楽しむことができる。それだけではない。バーベキュー、読書も…… と、家の使い方や楽しみ方が無限に広がる。
寒さや湿気にどう対応する?
快適な別荘ライフにするために
内装についても周辺の立地環境を熟考した米村さんだからこその提案がある。別荘を日常生活の延長と捉えて、たくさん欲しいと考えがちなのが収納スペース。しかし、多湿の地域にあり、かつ利用頻度が低い別荘内ではカビの発生に注意しなくてはならないのだ。芦ノ湖高原の家では、その理由から収納スペースは極力少なくし、また扉を付けずにオープンとした。
ワクワク感を重視する別荘ライフで、ぜひ取り入れたいと多くの方が望むものに薪ストーブがある。揺らぐ炎を見て過ごす時間は都会では得にくい貴重で贅沢なひとときだが、薪を常時用意しておくことや、火力を自分で調整する必要がありその手間から二の足を踏む人もいるそう。そんな方には、使いやすさに焦点を当てたペレットストーブもおすすめだという。チャレンジしたいことを、自分ができるレベルに合わせて提案してくれるのは心強い。
家を効率的に温め、かつ温まった空気を逃がさない設計をすることは基本中の基本とのこと。芦ノ湖高原の家は、薪ストーブにより温まった空気を天井の高い位置で取り込み、床下や他の部屋に送り込む仕組みを取り入れた。
米村さんの創り出す非日常空間は、若いころバックパッカーとして、ヨーロッパや南米を旅して(米村さんいわく寄り道)触れた人々との出逢いや建築文化風習、時にはハプニングにあいながらの一期一会の経験と共通しているのだという。四季の移り変わりによる眺望や富士山の変化など、あらゆる角度から検討し設計されているため、驚きと感動、発見が心地よく感性に訴えかけてくる。「芦ノ湖高原の家」は、まるで家の中を旅(寄り道)するようなストーリーがある。
基本データ
| 作品名 | 芦ノ湖高原の家 |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県三島市 |
| 敷地面積 | 1625㎡ |
| 延床面積 | 109㎡ |
| 間取り | 1LDK+スキップフロア |
| 予算 | 4000万円台 |
| 施主 | A邸 |
設計者情報
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