
住宅密集地なのにこんなに明るい
2.5階という発想がもたらした開放感
丁寧に土地を読み取ることで導き出された
開放的な2.5階という発想
この家を設計した村上さんと施主のGさんは、同じ大学院で建築を学んだ後輩と先輩の間柄。実はGさん自身も建築士で、大手組織設計事務所で大規模な建物の設計に携わっているのだという。自身の住む家を考えるにあたって、学生時代共に切磋琢磨し、そのセンスに信頼を置いていた村上さんに、家づくりのパートナーとして助力を求めたのだという。
こうして始まったG邸の設計。村上さんとGさん、奥様も含め、思い描く住まい方や過ごし方などを話し合い、様々なプランやアイデアを出していった。提案されたプランに対してGさんご家族が発した言葉や、言葉にせずとも感じられた反応などから行間を読み、潜在的な要望を捉えながら、それを設計に活かしていった。
そんな村上さんの姿勢に「初期のアイデア出しの段階から、要望や意図を汲んで数多くの提案をいただき、自分では気づかなかった発想もあって視野を広げていただいた」とGさん。
対話の中から出てきたGさんご家族の要望は「プライバシーは確保しつつ明るく開放感のある空間」「来客を招くことの出来るスペース」「個室よりも家族の共有スペースを優先して広さを確保したい」というもの。既に購入されていたこの土地に対する村上さんの第一印象は「プライバシーと開放感を両立するためには光の取り方と縦方向のつながりに工夫が必要になる」というものだったという。
この光の取り込み方の問題、村上さんが土地を丁寧に観察していくと、隣家の軒や車庫の上、月極駐車場など、高さや角度によっては光を取り込めそうな場所が見つかったのだという。
この要望や環境に対し、村上さんが導き出した答えが、「建物としては2階建て、でも中は2.5階」というアイデアだった。
立体的な吹き抜けや緻密な窓の配置が
明るく開放的な空間を生み出す
その先、土間続きの1階は、お客様を迎える場でもあり、Gさんのワークスペースや子どものスタディスペースでもある、いわばセミパブリックな空間。周囲を壁に囲まれているものの、外からは、こんなに開放的な空間が広がっているなんて想像つかないほどに明るい。それは、この家の半分が大きな吹き抜けとなっており、トップライトをはじめ絶妙な位置に配された窓からの光が、1階まで差し込むからなのだ。
光が差し込む天井に目を向けると、3階建てかと思うほどの高さを感じるが、実はこの建物は2階建て。当初は3階建ても検討したというが、3階建てにすると法的制約が厳しくなりよりコストがかかってしまうことに。逆に、普通の2階建てとした場合はスペースが足らず、明るさや開放感を実現できなくなる。
そのような困難を解決する方法として村上さんが考えついたのが、ロフトを利用して2.5階を設けることで、法的には2階建てとしてコストを抑えつつ実際のスペースを確保すること。このアイデアは、個室は最小限でいいといったGさん夫妻の要望から導かれたものだという。そしてさらに驚かされるのが、そのロフトは、1階と2階の間に設けられていること。
通常ロフトは、屋根裏部屋ともいわれるように、最上階と屋根との間に設けられることが多い。しかし村上さんは、そうはしなかった。
「トップライトや北側の高窓からの光の取り込み、2階のリビングの開放感、生活する上での使い勝手などを考えると、ロフトを1階と2階の間に設けた方が上手くいくと考えました」と村上さん。
「プライバシーは確保しつつ、明るく開放感のある空間」という施主の要望に真摯に向き合い、ロフトを階の間に設けるという柔軟な発想で実現してみせた。それを可能としたのは、村上さんが建物を部屋単位の小分けの空間で考えるのではなく、1つの大きな空間として捉え、その中に必要な要素を配置していくという、空間を巧みにゾーニングできる能力があるからだろう。実際、村上さんが手掛ける物件は、平面の広がりだけでなく、高さ方向にも奥行きがあるおおらかな空間をもつ家が多い。そしてひとつながりの空間なのに、レベル差や天井高の違い、視線のコントロールによりさまざまな居場所がつくられている。
1階の土間の周辺には水廻り、ウォークインクローゼット、物干し用のテラスが配置され、脱ぐ、洗う、干す、たたむ、しまう、着るといった一連の流れを最短の動線で行えるように工夫されている。土間は衣類をたたむスペースとしても使えることに加え、吹抜け下は空気がよく流れるので雨の日に室内干しをしていてもすぐに乾くのだそう。
収納スペースとなっている木製の階段を上ると踊り場の左側にロフトスペース。さらに、上階からの光を遮らないよう金属のグレーチングとした階段を上り2階のリビングへとたどり着くと、更に明るく開放的な空間が広がる。2階は、家族のためのプライベート空間だ。2階はトップライトからだけでなく、北側にも高窓が設けられており、そこからも柔らかな光が差し込む。村上さんが気づいた隣家をかわした高さからの光の取り込みだ。またキッチンにも大きな窓があり、壁に囲まれたダイニングキッチンに閉塞感を感じさせない。
リビングを挟んでダイニングの反対側は子供部屋。子供部屋とリビングは引き戸で仕切られており、子どもの年齢に合わせて家族との距離感を調節できるように配慮されている。子どもが家を巣立った後は引き戸を開け放ちリビングの延長として使うことも想定されている。その下には子ども用のロフトスペースがあり、1階の土間とつながることで縦方向のつながりが生まれている。この家は建物同様、明るく開放的な家族をも生み出すに違いない。
この家の出来栄え、そして村上さんが仕事に取り組む姿勢にGさんも「村上さんの経験値のおかげで、満足のいく設計を行ってもらえた。こだわりをもって熱心に向き合ってもらえた」と感謝のコメントを寄せてくれた。
村上さんは、これからも顧客の要望を的確に捉え、土地の丁寧な読み解きから生まれる柔軟なアイデアで、その場所でしかできない魅力的な家を作り続けてくれるに違いない。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 新森の住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府 大阪市旭区 |
| 敷地面積 | 111.13㎡ |
| 延床面積 | 113.15㎡ |
| 間取り | 2LDK+土間+店舗 |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | G様 |
撮影:髙橋 菜生
設計者情報
この建築家が建てた家
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