
建物と設備の相乗効果で
環境負荷を低減する実験的エコ住宅
ロールスクリーンで簡易版ダブルスキンを
施主との意見交換や設備技術の取捨選択を行い、まず笹野さんはゲート型の大屋根と少し小さなシルバーのボックスを組み合わせた全体構成を提案。大屋根とシルバーのボックスに少しばかりの隙間を作り出し、その「間」が光を取り込むハイサイドライト、かつ換気の要となる風の通り道となる住環境の基本機構とした。
その上で取り入れた第一の実験的設備が、吹き抜けリビングの南面窓を覆い隠す巨大なロールスクリーン。ロールスクリーンの上部に通気口となる穴を開けることで、窓とスクリーンの間で暖められた空気が上昇し、通気口からハイサイドライトに誘われ外へと排出される仕掛けだ。「ビルなどで使われるダブルスキンと呼ばれる技術の簡易版です。通常ロールスクリーンに穴はないのですが、協力してくださった専門業者が強度に問題がないか検証した上で穴を開けてくれました」と笹野さん。外気温を巧く用いることで、屋内の換気を促進することに成功した。
さらに、ゲート型の大屋根を南に傾斜させることで太陽光発電の合理性を保ちつつ、南面テラスを覆う庇としての役割も担わせている。「庇は日本の気候に合っていて、夏は直射日光を遮り、冬は温かな日差しを取り込みます。大屋根から張り出す横壁も西日を防ぐのに一役買ってます」。一見すると単純なデザイン意匠だが、住環境に多大な効果をもたらしていることは、実際に住まう施主が実体験として最も認めるところだ。
住宅の基礎構造をクールチューブに転換!?
「ボイド管を利用したクールチューブは長さ30mほどです。7月のある日の実験結果では、外気温35℃が室内に取り込まれる際は26℃に下がっていました。ボイド管をクールチューブとして利用するのは、非常に稀有な事例ではないでしょうか」と笹野さん。エネルギー負荷を下げる効果は非常に高いと言える。
もちろん、施主家族の要望もしっかり叶えられている。例えば、奥さま希望の在宅ワークスペースは、キッチンへ目が届く和室の階段下スペースに設置。デスクと棚を設け、掘りごたつ式にして楽に仕事ができるようにする。キッチンは背面収納をたっぷり取り、全面建具で隠せるためスッキリとした印象に仕上がった。また、玄関入ってすぐ横手には、家族だけの第二の玄関ともいえるウォークスルーのシューズクロークを設け、家族の靴が出しっぱなしになることのないキレイな玄関を実現している。
「南面の大きな窓と北側のハイサイド窓から光が注ぎ、日中の室内は非常に明るく開放的です。朝は窓から届く光を感じて穏やかに起床し、目を開ければ空の表情が伺え、日々の生活を健康的に送る原動力になっています」と、施主家族も新しい住まいに満足げ。設計と構造、そしてエコテクノロジーが高次元で融合した、新しい住環境のローモデルが誕生した。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 愛知県春日井市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 244㎡ |
| 延床面積 | 140㎡ |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | T邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

個性豊かな天井デザインのメリットとは?自由も一体感もある、心地よい住まい
建築家の西川拓さん・平田悠さんの「外部との一体感」を生み出す引き出しは実に多い。中でもhouseAは、大開口や庭がないのに屋外とのつながりを感じられる注目の事例。思い思いにくつろげる居心地のよさもあり、2人の感性豊かな設計力が光っている。

オーダーメイドで家族の色に染まってゆく まっさらな麻のシャツのような住まい
「どんな家に住みたいか」は、「どんな服が好きか」と共通点がある。ハイブランドの服が好きな人もいれば、ファストファッションで流行のものを身に着ける人、機能・デザイン・価格のバランス、いわばコスパを重視する人がいるように、住宅に求めることも人それぞれ。市中山居の増木さんがつくる家をひとことで表すならば、「麻のシャツのような住まい」だ。

那須の爽やかな景色と暮らし、冬も快適。 十字に重なるモダン邸宅
住み心地がよく、洗練された住まいを多数生み出している建築家の川久保智康さん。那須に建てたこの家は高原の美術館のような佇まいや、ホテル暮らし気分を味わえる邸内など、魅力は枚挙にいとまがない。「上質な建築に住まう幸せ」を実感できる住宅だ。

旗竿地でも陽光の中でくつろげる眺望抜群のLDK。その秘策は?
建築家の日部(かべ)友裕さんが自邸を建てたのは、周囲を建物に囲まれた21坪の旗竿地。「自分の家だからこそ、あえて狭小×旗竿というハードルの高い土地を選んでみました」。完成した住まいは陽光たっぷり、明るく開放的で眺望も抜群。旗竿地とは思えないのびやかな空間は、いったいどんな工夫で生まれたのだろうか。

北海道、離れ、定年後…すべての条件を調和した自然素材空間
ご自宅に隣接した敷地に、終の棲家(ついのすみか)となる「離れ」として計画されたOさん邸。これから年齢を重ねていくご夫婦がゆったりと暮らせる、ワンルームのような伸びやかな空間が広がります。リビングダイニングの中心には、1枚の壁が。そこには、雪に閉ざされる北国の住宅で、少しでも自然光を感じながら快適に毎日を過ごすための工夫が集約されていました。

近隣と調和し、土地の魅力を最大限に活かす あえて平屋とした、田園風景を満喫できる家
広大な田園が目の前に広がる愛知県岡崎市の集落に、ある邸宅が誕生した。この作品が持つ主な特徴は2点。眼前のすばらしい眺望を活かし、土地を有効に使い切っていること。そして近隣と調和し、共存できるプランとしたことだ。派手なデザインではないが、様々な視点で深く考え尽くされた、この作品をご紹介しよう。

緑あふれるテラスとLDKが1つになる。 家族の憩いを楽しむリゾート風邸宅
「リゾート風の空間で家族の時間を楽しみたい」。施主さまのそんな願いをかなえたのは、内と外のつながりを豊かに生み出す設計に定評のあるdesus(デサス)建築設計事務所。家づくりの新たなスタイルとなり得る「0LDK」の間取りも要チェックだ。

3人の建築家のアイディアが結集! 斜面地で実現した理想の住まい
奈良県、生駒市の斜面地に建つH邸。一見デメリットとも思える傾斜をうまく生かし、Hさんが希望する住まいを完成させたのが、atelier thuの坪井飛鳥さん、細貝貴宏さん、上田 哲史さんの3名だ。それぞれが得意分野でアイディアを出し合って進められたという今回の家づくり。その詳細についてお話を伺った。

実家も勤務先も“お隣”!子どもたちがのびのび過ごせる家
建築業に携わるご主人とその奥さま+小さな子ども3人、一家5人が仲良く暮らす家。若いご夫婦が「子どもたちの成長をずっと見守っていける、心のかよい合う住まいを」と願い、細部にわたり杉山靖彦さんと話し合いを重ねてできたのがこちらのお宅だ。施工にはご主人やご主人のお父さまも参加。家族みんなが心地よく暮らすための工夫が随所に施された、こだわりの家を紹介する。

