
室内空間の工夫で外観も誇らしく。
三角屋根の欧風住宅が快適!
制約があっても、設計の力で街並みに映える美しい住まいに
ここで紹介する山本さん設計の住宅は、そのあたりのバランスが絶妙な佇まいといえるだろう。石畳のアプローチ、白い外壁、アンティーク風の玄関扉。窓のサッシもバルコニーの囲いも温かみのある木製で、ガレージには深いグリーンのスチール扉と、素材や色彩の一つひとつが洒落ている。
そして、この家の“顔つき”の決め手ともいえるのが、可愛くとんがった2つの三角屋根。表面には濃淡が異なるグレーの石瓦が斜めに重なりながら貼り付けられ、上品かつ個性的。この家はもともと山本さんが建売住宅として依頼を受けて計画を進めていたもので、ほぼ形になっていた設計やデザインが気に入られ、完成前に買い手がついた。このシンボリックな三角屋根の外観デザインが、購入の決め手のひとつであったろうことは想像に難くない。
しかし、都内の目黒、世田谷など、狭小敷地が多いエリアの住宅を多数手がけている山本さんによれば、住宅密集地では外観を思い通りにデザインするのは難しいという。
「都内の住宅密集地における建築は、近隣の家屋や道路の日照を妨げないよう、ほとんどのケースで高度斜線制限や道路斜線制限を受け、建物の高さに限界が生じます。一方で、室内に高さを出して採光や開放感を得るという方法がよく用いられ、設計時にこれらの要素が関わるとデザインに制約が生まれるのです」
類に違わず、今回紹介するこの住宅も複雑な斜線制限があった。だが、3階の子ども部屋を屋根の形が室内に現れた屋根裏風としたことで、美しい外観が実現した。
この屋根裏風の部屋が、楽しい。まず、屋根に近いだけあって採光は抜群。斜めの天井や斜めに張り出した構造材が空間自体に動きをもたらし、秘密基地のようなプライベート感に大人でもワクワク。がらんとした四角い部屋とは対極の、クセになりそうな居心地のよさがある。
家づくりの際、住む人の快適さなどと共に「記憶に残る印象的な場をつくること」、「通りや街へよい表情を見せること」を常に念頭に置いているという山本さん。
「都内の住宅街の家並みはあまり美しくない、という声も聞きますが、複雑な制限があることを考えると仕方ないとも思います。でも、こういうちょっと変わったお部屋をつくれば外観デザインの自由度が高まりますし、個性的なお部屋そのものも、暮らしの楽しみを広げてくれるのではないかと考えています」
まだ小さなお子さんの友達が遊びに来たら、この家は「とんがり屋根のおうち」と、みんなから親しまれるに違いない。もう少し成長し、創造力をかき立てる屋根裏風の部屋を自室としたら、どんな発想で自分だけの世界をつくっていくのだろう。山本さんの設計・デザインから生まれる家族の物語は、まだ始まったばかりである。
階段書棚のある洗練されたLDK、快適お風呂で暮らしを満喫
吹抜けの開放的なダイニングにある階段の脇には、山本さんの提案で壁一面に大きな書棚を設えた。「階段は家の中で唯一の、“上下に移動する場所”。自分の好きな高さの段がなんとなく決まっていて、そこに座り込んで本を読んだり、外の景色を眺めたり、そんな経験を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか」
確かに、階段はちょっと腰かけるのにぴったりだし、目線の高さが変わって新鮮なスペースだ。山本さんいわく、「移動するためのものですが、階段まわりに何か楽しいものがあると記憶に残る場所になると思います」。本を収納すれば、階段は空中の読書スペース。絵や花を飾ったり、生活小物をバスケットに入れて並べたり……。この書棚の存在で、暮らし方がぐっと充実しそうである。
暮らし方が充実するスペースといえば、バスルームも見逃せない。休日は一日中お風呂に入っていてもいい、という希望に応え、「水まわりは至れり尽くせりです(笑)
と山本さん。その言葉通り、バスルームから洗面室まで空間はゆったり広々。窓もあって緑が見え、天井は板張りと贅沢仕様。テレビあり、エアコンあり、タオルウォーマーありと設備の充実ぶりも特筆もので、お風呂好きでなくても長風呂したくなること間違いなし。
山本さんのセンスが随所に光る空間は、それだけで家での時間を心地よいものにしてくれる。そこに、日常生活であたりまえに行うことが特別になるような、住む人にとってのこだわりをちりばめる。打ち合わせを重ねて意向をくみとり、上質感あふれるデザインを叶えたこの家は、まさにその好例。眺めて幸せ、居て楽しい。そんな家がつくれたら、暮らしの喜びはもっと増す。
【山本稚保子さん コメント】
敷地内に2種類の高度斜線制限があって屋根は全部傾斜が違うため、最終的にきれいな三角屋根にするための計算はかなり苦労しました。屋根裏風の部屋はシンプルですが個性があり、ご夫妻も面白がってくださいました(笑)。素材は色味や質感にこだわってセレクトしています。特に外観まわりで雰囲気のある輸入建材をとり入れていますので、豊かな表情を楽しんでいただけると思います。
基本データ
| 所在地 | 東京都23区内 |
|---|---|
| 敷地面積 | 83.68㎡ |
| 延床面積 | 123.23㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | X邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

建物に囲まれた平屋でも、たっぷり採光。 明るく開放的な「光井戸のある家」
施主さまのご要望は、「日当たりの良い明るい平屋」。けれど隣地には3階建ての住宅があり、採光はかなり不利……。それでも、建築家の吉田祐介さんは要望通りの明るく開放的な住空間を実現。どのようにして環境のハードルを乗り越えたのだろうか?

近所のシンボル「藍色の家」!要望の矛盾を見事に克服の家づくり
お子様の誕生を機に一戸建ての新築を決意したKさんご夫妻。「設計は、人柄とセンスがよい方に」という希望から、秋山アトリエ一級建築士事務所の秋山功さんに依頼することに。イメージどおり、明るく開放的、木の温もりにあふれた我が家が完成した。

土地の特徴に対する最適解として誕生した 駐車場まで伸びる大屋根が目を引く邸宅
大分県宇佐市に、とても特徴的な邸宅が完成した。目の前には公園や田畑が広がり、背後には1m高い地盤に造成された住宅街が広がっている。いわば自然と住宅地が切り替わる場所に建てられたこの作品は、土地の特徴をとらえ、その最適解を見つけ、お施主様の要望を低コストで実現した力作だ。その詳細をご紹介しよう。

シンプルさを極めつつご夫婦のライフワークと趣味に寄り添った家
アクセサリー製作がライフワークであるご主人と、石鹸コレクターとして世界中の珍しい石鹸を集めていらっしゃる奥様の理想を、具現化したS様邸。そのこだわりと家を建てるまでのプロセスを、ホープス代表・清野廣道さんを交え、インタビュー形式で伺いました。

多趣味を受けとめるナチュラル空間!安心快適も実現した秘密とは
ビルトインガレージ、緑豊かなウッドテラス、パン台のある広々キッチン……。多趣味なNさん夫妻のために建築家の長谷山泰三さんがつくったのは、無垢材を贅沢に使った明るく心地よい住まい。空間の魅力だけでなく、安心・快適な性能も併せ持つ心強い家だ。

土間やテラス、自然と徹底調和。客も長居する居心地作りに納得!
四季折々の木々や草花などの大自然を味わえる「国営武蔵丘陵森林公園」に三方を囲まれた里山に、佇むように居を構えているMさん邸。豊かな自然の恵みを存分に活かした住まいは、「第2回 埼玉県環境住宅賞」の最優秀賞を受賞しました。

ストーリーが生まれる家づくり。 国産の木材、自然素材を厳選した心地よい家
新築する自宅には、いつか教室を開くためのピアノ室が欲しいと考えていたお施主さま。建 築家の小野さんは、教室として使わない時も、常に生きたスペースになるよう考慮した。日 ごろからストーリーのある家づくりを提案する小野さん。素材の選択にもこだわり、居心地 がよく、快適に暮らせる家ができた。

まるで公園!広い庭とテラスで 内と外がつながる、開放的な住まい
外から見るとまるで公営の公園のように見える、南津軽郡のK邸。「敷地全体を使った地域に開かれた開放的な住まいにしたい」というKさんの要望を叶えたこの住まいは、随所に外部空間と内部空間をつなぐ工夫がされている。家のどこにいても外が感じられるこの開放的な住まいを形にしたのは、Kさんの中・高校時代の同級生であるmizuiro architects 一級建築士事務所、葛西瑞樹さん。その家づくりの詳細について、お話を伺った。

子育てと旗竿地の問題に回答を!3階建て×スキップフロアの家
採光や開放感の確保が気になる敷地。でも、駅徒歩圏で子育てや教育を含めた周辺環境は理想的。そんな土地に家を建てることになったSさんは、頼れる専門家を求めて建築家・近江利雄さんに相談する。近江さんの提案は、木造3階建てのスキップフロアの家。採光と共に空間の一体感を大切にした開放的な住まいには、さすがのノウハウが盛りだくさん!


