
建材の伐採に施主様も参加!
安心とぬくもりの「自然素材の家」
素足が喜ぶ無垢材の床。作り込みすぎないから自由度も高い
こうした“施主様ご家族が参加する家づくり”も、福田さんの仕事の特徴だ。「H様は就学前のお子さんがいらっしゃったので、切り出した桧の皮むきを体験していただいたり、間伐材を使った木工イベントなど、遊び感覚で家づくりに参加していただきました。大人よりも子供たちに家づくりの過程を体験してもらうことを常に考えています。体験は思い出、記憶として残りお家を大切に思う気持ちが育つと思うのです。お父さんお母さんが苦労して建てた家を子供たちに上手に引き継ぐ工夫であり、家への愛着も深まると思うのです」。
素性のはっきりした自然素材をふんだんに使った家は、安心感とぬくもりにあふれている。これは比喩ではなく、たとえば床材に使われている厚さ3cmのスギの無垢板は、触れると本当に温かく感じられるのだ。「フローリングと、塗装加工した木材と、無垢材のサンプルをお客様に触ってもらうと、『全然違いますね!』とおっしゃって、特に小さなお子さんがいるご家族は圧倒的に無垢材を選択なさいますね」と福田さん。比較すると、確かにフローリングは冷たくてベタッとするが、無垢材はサラリとして人肌のぬくもりがある。「ゴロリと寝転んでも気持ちいいんですよ」と福田さんは言う。
H邸のリビングは、まさに無垢材の肌触りを存分に活かした居室となった。中央の床を掘り下げ、大きな掘り座卓を設置。無垢板にじかに座るスタイルだ。「当初はテーブルを置くつもりだったのですが、施主様から『せっかくだから座卓にしたい』と言われました。引き渡し後に訪問した際にも、座布団やクッションなしでリビングの床に座っていらっしゃって、『便利で快適。座卓にしてよかった』と言っていただきました」。ちなみにリビングを支える柱には、施主様ご家族が伐採に参加し皮をむいた桧材が使われている。
キッチンや洗面所などの水廻りにも、無垢材がたっぷり使われている。「施主様からのご要望のひとつが、『キッチンは明るく』でしたので、大きな窓を設けました。コンロは既製品ですが、シンクはステンレスのメーカーに発注し、全体の外装や収納などもオリジナルで造作しました。引き出しなど収納の数や大きさを自由に設定できるので、システムキッチンとは違った良さがあります」。コストは仕様によって千差万別なので、どこまで造作するか、施主様と相談を重ねて決めていくそうだ。
桧の階段を上がって2階を見ると、この家の特徴がさらによくわかる。H邸には、普通の天井がない。ロフトのある子ども部屋の上を見ると、立派な梁や構造材がむき出しになっている。「できるだけ家の構造が見えるようにするのが私の方針で、家を支える構造が見えるそれが家に対する安心感につながると考えています。実は1階も、普通なら梁の下に天井を貼るのを、2階の床を受ける板材に和紙を貼って天井の代わりにしています」。施工の難易度は上がるが、高さのある大きな空間が実現できる手法だ。
しかしこうした構造だと、冷暖房効果が下がってしまうのではないか。「いえ、面白いことに、逆に空気が良く動いて冷暖房の効果が上がることが多いのです。断熱材もチップを砕いたウッドファイバーという自然素材のものを選び、20cmの厚さで屋根全体を覆っています。事務所の方針として、長期優良住宅の温熱等級4級を必ず取得していますので、断熱については公的なお墨付きなのです。もっとも、基本的には“窓を開け放って外と一体化する暮らし”を志向する家ではありますが」。
子ども部屋は将来2室に分けられるようになっている。今のところ部屋に扉がなく、ロフト部分も階段室側に開けているため、お子さんの声が1階にいても聞こえる。「防音室にでもしない限り、音は必ず伝わってしまいます。だったら、いっそ音が聞こえてくる状態にしたほうが“ひとつ屋根に暮らす”感があって良いのでは、と考えました」。どこにいても家族の気配が伝わる家は、子育て世代にとってひとつの価値と言える。
2階の子ども部屋と夫婦の寝室の間にはフリースペースがあり、現在は書斎のように利用されている。「私は基本的に廊下を作りません。部屋をつなぐ空間が必要になったら、誰もが自由に使える無目的なスペースにします。施主様一家の暮らしに応じて、ベンチを置くこともありますし、本棚を設置することもあります。私は、家というのはあまり作り込まないのが良いと思っています。暮らしは変化していきますから、あとで変えられるほうが合理的でしょう」。
自然素材の弱点もしっかり伝え、メンテナンスも含め長く付き合う
自然素材の弱点も、福田さんは時間をかけて説明する。「無垢の床は汚れやすく傷も付きやすいし、漆喰の壁は割れが出ます。H邸でも取り入れた木製のバルコニーやウッドデッキも、年月が経てば傷みます。ですから施主様には、必ず竣工済みの家を見学していただきます」。竣工から何年も建つ家のオーナー様は、見学に来た施主様に「思った以上に傷が付くよ」と笑って告げるそうだ。「私が言うのもおかしいですが、自然素材の家を選ぶのはおおらかなご家族が多いですね。でも自然素材はだいたい修復可能で、へこんだ床は濡れ雑巾を当てておくと膨らんで戻りますし、漆喰の壁はサンドペーパーでこすればきれいになります。そうやって手をかけて長く住めるのが、自然素材の家の良さなのです」。
漆喰はアルカリ性で静電気を帯びにくく、テレビなど電化製品の裏でもカビやホコリが付きにくい、などといったあまり知られていないメリットも、自然素材には数多くある。それらを丁寧に説明して信頼関係を築くことに、福田さんは手間と時間を惜しまない。「最初のプレゼンの時には、彩色したイラスト図面と小さな模型を作ってお見せします。いきなりCAD図面を見ても、家のイメージが湧きませんからね」。若い頃には気ばかり焦って説明不足になり、施主様に怒られたことがあると、福田さんは苦笑する。「建てて終わりでなく、メンテナンスも含めて長いお付き合いになります。住むほどに味が出てくる自然素材の家の良さを、ぜひ多くの方に知っていただきたいですね」。
基本データ
| 所在地 | 埼玉県東松山市 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | H邸 |
設計者情報
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