
4階建ての3階なのに天井から光が降り注ぐ
温かな雰囲気のLDKを備えた鉄骨造の家
課題を解決しつつ、コストも抑える。
都市部の建物密集地に建つ4階建ての家
ただ、利便性がよいだけあって住宅だけでなく店舗も多い密集地に位置しており、斜線制限などの法律的な規制も多かったという。4階建てにすることで広さは確保できるとしても、数々の課題をクリアしながら、快適に暮らしやすい家を計画するのは至難の業だと考えられた。
家の中でも要となるのはやはりLDK。明るく伸びやかな空間を実現するため、この家の設計を担当したKOKO+ inc.の小林宏輔さんがまず提案したのは、3階にLDKを配置するアイデアだった。上部に計画するほど視線を避けつつ明るくできるのが理由のひとつだという。さらに小林さんは「各階の天井高のコントロールも必要でした。1・2階の天井を低く設定し3階を高くすることには、落ち着きのある場所と開放的な空間のメリハリをつくることができるだけでなく、構造的なメリットがあります」と語る。天井が低い下の階の部材の幅やサイズを細く小さくできたおかげで、全体的なコストも下がったそうだ。
構造やコストに関わる大きな課題は、もうひとつあった。敷地の上物は取り壊されていたが、基礎や杭がそのまま残っていたのだ。撤去するにはそれだけで高額の費用がかかってしまう。かといって、再利用も得策ではないと判断。構造設計者と相談しながら、既存のものを残したうえで干渉しないようにあらたに杭を打ち、基礎をつくることにした。
難しいと思われるような条件がある中でも、要望を的確に叶えながらお施主さまによりそい、コストなども含めて最良のプランニングをする。お施主さまから強い信頼を得ている小林さん。それはなぜかがよくわかる。
張り出し、ずらしながら階を重ね採光を確保
プライバシーを守るハイサイドライト
天空光が入れば自然と室内全体が明るくなると小林さん。豊かな採光を得るために工夫したのは、なんと家のフォルムそのものだった。まず、ガレージを計画した1階はご要望通り車2台が収まる幅で柱を立てた。それを基準として、1階の柱から建物が張り出したり、下の階から横にずれたりしながら上階が重なっていく。そうすることで、2階や3階にも天窓を計画できるようにしたのだ。さらに、隣接する建物との距離を開けた状態でハイサイドライトも設けられるようにもなった。
高い位置に開口することは、それだけでプライバシーも守られやすいという利点もある。くつろぎの場である3階LDKには、小上がりやキッチンにも上部からの光を入れた。
また、外部からの視線が一番気になる接道側には、天井に接するように設けられたリビングの窓と、もうひとつ、テラスに繋がる大きな開口がある。こちらの視線対策ももちろんばっちりだ。リビングの窓の真下には2階部分の張り出しがあるため下からの視線が届きにくい。テラスの大きな開口は、木製ルーバーを設けることで視線を遮った。
寝室のある2階には、ご要望からサンルームを配置。豊かな光が入る南の接道側に計画し、一面にフィルムを貼り日射を損なうことのない視線除けとした。天窓があり上部からの光も入るうえ、開口の上部は開閉できるおかげで風が通り、洗濯物もよく乾くのだとか。
同時に、寝室はサンルームと接する壁面を開口。サンルームを介して寝室まで光が届き、気持ちよく朝を迎えられる。視線も伸びる、心地よい空間をつくり上げた。
数々の工夫をデザインの一部として取り込む
お施主さまの好みを表現した家
プロポーションを意識したという外観は個性的。下地となるパネル材の目地の幅をできるだけ狭く処理したうえで左官仕上げとした、手仕事が感じられる壁面は道行く人の目を引く。ほかにも木製ルーバー、赤さび色が効いている部分など見どころが多く、洗練された印象を受ける。「各部分の割り付けにもこだわりました」と小林さん。採光のためにつくられたずれや張り出しが、そのままデザインとして生かされている。
無骨なイメージは避けたいというお施主さまに応え、室内は木を基調とした。外観と同じ赤さび色や橙色をアクセントに取り入れ、室内の雰囲気を引き締めている。LDKに用いられたマホガニーによるヘリンボーン柄の床や、色ムラも美しい釉薬掛けのタイルなど、表情が感じられる部分が多くあるのも魅力的だ。
階高を低く設定した2階部分は、寝室の天井高を上げるため筋交いを見せた。無骨さを排除しながらも、デザインの一部として鉄骨造らしさも演出。室内において鉄骨造らしさを演出したほぼ唯一といっていい部分だが、お施主さまにも気に入っていただけたとのこと。
忘れてはいけないのは、最初に述べた既存の杭や基礎の存在。それを避けながら、これだけのことをさらっと実現している。室内を見れば、不自然な動線は全くなく、配管や配線が見えている箇所もない。
「いつも打ち合わせが楽しく、前向きな気持ちになれました」とお施主さま。竣工後は、これからの生活が楽しみだとおっしゃってくださったのだとか。徹底的に計算したり、検討したりしているはずなのに、大らかな人柄でそれらを包み込んでしまう。安心して、前向きに家づくりができる。不安も多いであろうお施主さまにとって、小林さんのような建築家はとても心強いに違いない。
撮影者:小林 宏輔 (KOKO+ inc.)
基本データ
| 作品名 | 花咲町の住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
| 敷地面積 | 76.39㎡ |
| 延床面積 | 199.63㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
| 予算 | 1億円台 |
設計者情報
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