
ぐるりと囲う廊下で叶った開放感と心地よさ
マンションリノベで理想の暮らしを。
リノベで理想の暮らしを手に入れる。
廊下を利用したウォークインクローゼット
Yさま一家は、自分たちのライフスタイルに沿った住環境を手に入れたいと考えていた。しかし福岡の中心市街地を希望していたことから、予算の関係で新築は現実的ではなく、リノベーション前提で物件探しを開始。すると、なんとそれまで住んでいたマンションの向かいに物件が見つかった。その部屋は、購入後のリノベーションが必須の状態だったため相場よりも安い価格で売り出されており、まさにうってつけの物件だったのだという。
リノベーションに当たりYさまは、リノベーション専門の会社も調べていたそうだ。しかし、友人の紹介で水谷さんと出会い、相談するうちに「建築家に頼んだほうが、自分たちのライフスタイルに応えてくれるのでは」という考えに至り依頼を決めた。
では、どんな暮らしがしたいと考えて、この個性的な間取りになったのだろう。
大きな理由のひとつは、ご主人の仕事だ。製麺所に勤務しているご主人は、粉が付いた作業着で帰宅する。「それを収納する専用のクローゼットが欲しい」とのことだった。それとは別に、ウォークインクローゼットも欲しいという要望もあった。
しかし、マンションの一室であるから床面積は限られている。ウォークインクローゼットをつくるとなれば、それだけでかなりの面積が圧迫されてしまうのだ。同じように廊下も、構成によっては面積をとるだけの無駄なスペースになることもある。それならば、と提案したのが廊下にウォークインクローゼットの役割を持たせるプラン。無駄なスペースをつくらずに、要望が叶えられる。
廊下を有効活用するのはその部分だけではない。行き止まりをなくし、回遊できるようにすれば広く感じられると、リビングダイニングも「広めの廊下に家具を置いているイメージ」で計画。玄関前からクローゼットの廊下、広い廊下のようなリビングダイニング、キッチン、水回りと進めば再び玄関に戻ってくる。
おかげでご主人は、玄関からすぐの場所で作業着を収納できるようになった。そして、利便性を感じられるのはご主人だけではない。クローゼットと逆方向に進めば水回りへもダイレクトにアクセスできるのだ。まず手を洗ってからリビングへ進む動線は、帰宅後にまず手洗いが必須の時代になった今、小さなお子さまが2人いらっしゃるYさまご家族にとって特に便利に感じられるだろう。
子どもが遊ぶ様子を見守りながらくつろげる
家全体がひとつの空間になる「廊下の家」
独立した個室を配置しつつ、お互いの気配を感じながら暮らせるようにという要望にも応えている。2つの居室は出入り口のほかにも、廊下と繋がる窓を設けた。引き戸や窓をすべて開ければ、家全体が大きなひとつの空間になるのだ。入り口や窓はすべて引き戸や引き分け戸とし、開けっ放しでも戸が邪魔にならず、空間を分断することがない。
リビング、ダイニング、子ども室が見渡せる場所にキッチンがある。これも、理想のライフスタイルを叶えたものだ。
以前の家では、リビングで子どもを遊ばせると夫婦がくつろぐスペースがなくなってしまうという悩みがあったという。子ども室を独立させ、かつ、リビングからもキッチンからも目が届く場所に配置したことで、安全を確保しながら夫婦はゆったりとリビングで過ごせるようになった。
また、以前の住まいの向かいだからこその配慮もある。幹線道路が前を走っており、以前から騒音が気になっていたというYさま。幹線道路側の窓と寝室の間に廊下やリビングを設けることで距離が取れ、静かに落ち着いて眠れる環境が整った。
特徴的な間取りのおかげで風も光も。
理想を追求したからこそ得られた心地よさ
角部屋という恵まれた環境だったが、せっかく2方向に既存の開口部が開いていても壁によって日光や風が遮られていた以前の間取り。リノベーションによって現在は既存の開口部があるエリアいっぱいにリビングダイニングが配置され、L字に折れた先のクローゼットの廊下にも既存の開口部がある。2方向から入る光や風は引き戸や窓を抜けて、家全体に行き渡る。おかげで開放的で気持ちがいい家となった。
開放感を生みだした一方で、室内における家族間のプライバシーの確保についても考慮した。お子さまが大きくなれば、窓を閉めて視線を遮りたいときもあるに違いない。また、着替えなど閉めておかなければいけないときもある。水谷さんは、窓の居室側だけに窓を開けるための手がかりをつけた。窓の開け閉めのイニシアチブをその部屋を使う人が持てることは、普段の生活だけでなく来客時などでも安心できるだろう。
「子ども室は寝るための部屋に、勉強は皆がいるところでできるようにしたい」との要望を受け、キッチンの脇にスタディスペースを設けた。今はお絵かきをしたり幼稚園の宿題をしたりと、もうすでにお子さまお気に入りの一角になっている。ご夫妻も生活の中で書き物をすることは多い。便利なスペースとしてお子さまが巣立った後も活用されることだろう。
水谷さんは家づくりについて、プランニングのはじめの一歩では「こういう暮らしがしたいという、理想を語っていただきたいですね」と語る。具体的な機能や商品が先なのではなく、私たちのライフスタイルだからこの空間や場所が必要だ、というように自分が好きなものを発見してほしいのだそうだ。だからこそ、ヒアリングでは自分が行って気持ちがよかった場所や幼い頃の記憶、思い出に残っている旅行先など、これは家づくりに関係あるの? ということまで話題に上る。
これから家づくりに取り組む人に対しても「こちらが驚くような理想を聞かせていただけると嬉しいです」と頼もしい一言を聞かせてくれた水谷さん。マンションと聞いてイメージする空間をはるかに超えたオリジナリティを持つ「廊下の家」。リノベーションでどんなことができるのかよりも理想を優先して追求した結果できたこの家を見れば、どこまでも妥協なく、理想を追求する勇気が湧いてくる。なにしろYさま家族は、この上なく便利で快適な暮らしを、「廊下の家」で手にすることができたのだ。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 廊下の家 |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県福岡市 |
| 延床面積 | 76.03㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
撮影:針金建築写真事務所
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

《店舗の事例》お酒を”楽しむ”場が人を呼ぶ!老舗酒店のリノベ
建築家との家づくりの秘訣が、住む人がそこでどう暮らしたいかを考えることなら、建築家との店づくりの第一歩は、お店の人がそこでどう働きたいかを考えることかもしれない。自由が丘の酒屋さんのリニューアルの背景には店長の熱い思いが隠されていました。

正面は「田」の字形のコンクリート外壁。防火地域ながらも、外壁の安心に囲まれて家族の将来を見守り続ける木造の家
20年~30年後、50年後、100年後の未来を見据え、家族構成の変化や、その時々に住まう人のライフスタイル、将来的なリノベーションなども考慮して設計している「裕建築計画」の浅井さん。キーワードは「長く住み継げる」&「ライフスタイルの変化に順応できる」家。今回紹介するK様邸は名古屋の商業地、防火地域にあり、難しい諸条件を斬新な発想で解決して、末永く住み継いでもらえる住まいだ。

飼い主も5匹の猫も、楽しく健やかに。 猫が生き生き暮らす「猫的町並み」のある家
5匹の猫と暮らすKさまの家は北欧ヴィンテージ感のある素敵な住まいだが、実は、猫が喜ぶ「猫的町並み」が展開されているという。設計を担当した犬猫専門建築家の廣瀬慶二さんに、K邸から読み取れる「猫と暮らす家」のセオリーを教えてもらった。

光を活かす設計と自由な素材使いで 遊び心と暮らしやすさを両立
建築家の吉田祐介さんの自邸兼事務所は、モデルルームの役割も担っており、設計はもちろん素材使いのヒントが満載。光や風をうまく取り込みながら、吉田さん独自のセンスで個性豊かな素材をまとめ、快適性とデザイン性を見事に両立させた空間の魅力を紹介しよう。

家族の距離感、街との距離感が絶妙。ほどよいつながりが心地いい、大人の二世帯
それぞれのライフスタイルが確立された、20代~70代の6人家族が暮らす二世帯住宅を手がけた建築家の熊田康友さん。敷地環境で課題だった採光と、家族のちょうどいい距離感を実現したのは、「吹抜けの中庭風デッキ」という熊田さんのアイデアだった。

街や家族との程よい距離感が心地いい シンプルモダンで可愛らしい家
あなたは「家の絵を描いてください」と言われたら、どんな家を描きますか?多くの方が三角屋根の可愛らしい家を描くことでしょう。自分が住んでいたことがあるわけではないのに、なぜか思い描いてしまう家。そんな、心の原風景ともいえる家をつくり続けている建築家石川淳さん。シンプルでミニマルながら、利便性も兼ね備えた石川さんの家づくりに迫る。

まるで公園!広い庭とテラスで 内と外がつながる、開放的な住まい
外から見るとまるで公営の公園のように見える、南津軽郡のK邸。「敷地全体を使った地域に開かれた開放的な住まいにしたい」というKさんの要望を叶えたこの住まいは、随所に外部空間と内部空間をつなぐ工夫がされている。家のどこにいても外が感じられるこの開放的な住まいを形にしたのは、Kさんの中・高校時代の同級生であるmizuiro architects 一級建築士事務所、葛西瑞樹さん。その家づくりの詳細について、お話を伺った。

高低差のある土地をあえて活かす 設計の力で、ウイークポイントを強みに
高低差のある土地に住宅を建てる際は、切土や盛土で整形するのが一般的。しかし、あえて土地の形状を活かし、高低差を室内で解消するという方法で見事に難問を解決したのは、中尾英己建築設計事務所の中尾さんと重盛さんでした。

公園の緑に包まれる広縁と、ブックカフェのような土間空間のある家
向かいの公園の緑を効果的に取り込み、建築面積が約9坪という制約を感じさせない居心地抜群の住まいをつくり上げた菅家建築計画工房。どの家にも存在する「あるスペース」を省いて誕生した、洒落たブックカフェのような土間空間も必見だ。

