
抜け感のある内部空間と呼応する2つの庭
手の跡を感じる、豊かな表情を愉しむ家
敷地の選定からじっくり時間をかけた
どこに居ても自然を感じられる住まい
依頼を受けた高田さんは、3つに絞った候補地それぞれのラフプランを作成。メリット・デメリットを踏まえて比較検討した。
建築地に決まった敷地の特長について、一言で表すなら「外部空間のバランスのよさ」だと語る高田さん。
約49坪は福岡エリアにおいて特別広くはないものの、二面道路に接した敷地には、内部からの視線の「抜け」をつくることができるちょうどいい余白があった。
「必要な部屋数を確保した上で、抜けになる部分に緑を盛り込むことができる。それが叶う点にポテンシャルを感じました。毎日過ごす家は自然を感じられる場所であってほしい。そんな想いが、その先のプランニングにも繋がっていきました」。
20ものプランを経てたどり着いた
内部と外部が繋がるベストなかたち
角度を変えたり、違った視点で眺めてみたり。試行錯誤をする中で、施主の想いと敷地・プランが折り合う瞬間が訪れる。それを高田さんは「これ以上動かしようがなく、どこから見ても輝いている状態。ストンとはまる瞬間が必ずあるんです」と表現する。
A邸では20通りものプランが生まれたが、一つの軸としてぶらさなかったのが、家族が長くいる場所=リビングダイニングが2つの庭に接していること。
玄関から家に入った時、ソファでくつろぐ時、食卓を囲む時、階段を上り下りする時。
どこにいても庭や緑が目に入り、自然を感じられる住まいをつくることを大前提に、より暮らしやすい間取りになるようブラッシュアップを重ねていった。
また、設計において意識したもう一つのポイントが、流動的に繋がる内部空間。
床段差や縦格子を設けることでワンフロアのLDKを緩やかにゾーニング。2階には、主寝室や子ども部屋への動線上に、書斎やサブリビングとして活用できるホールをレイアウトした。
抜け、陰影、素材感。大げさに飾り立てず
豊かな表情を与える、ひと手間のデザイン
シンプルでありながら変化に富む空間のつくり方、内装や外観の仕上げ。A邸においても、手の跡、すなわち職人の手仕事を感じられる造形や納まりを、細部にまで見て取ることができる。
ダイニングから床レベルを一段下げたリビングは、段差の蹴込み下を掘り込んで奥行きを創出。床板が浮いたように見える構造、凹凸がもたらす陰影により、表情に変化が生まれている。
さらに、ひと手間をかけた意匠で特徴的なのが2階の天井の設え。一般的には屋根材の下に隠れる「梁」と「垂木」を現しに。梁と垂木の取り合い部に隙間を設けて天井を浮かせ、軽やかさを演出した。
FIX窓と地窓で外部との連続性を強調した玄関&ホールは、塗り壁、無垢の木、木毛セメント板など自然由来の素材を選択。トイレのドアは造作で仕上げた、手仕事による“ゆらぎ・温度”を感じられる空間だ。
「木なら木、石なら石、コンクリートならコンクリートと、素材本来の質感をなるべくそのまま生かしたいなと。できるだけ自然に近い状態で使うことがベースの考えとしてあるので、リビングの鉄骨階段もあえて塗装をしていません」と高田さん。
リビングダイニングと繋がる2つの庭、整えられすぎていない程よくラフな素材感。これらの要素が調和することにより、この場所にあるべき「内部空間と外部空間が呼応する家」が完成した。
手間ひまと時間をかけることこそ
家づくりという行為を楽しむ「原点」
外壁のガルバリウム鋼板は横張りと縦張りをランダムに配置。さらに板幅に変化をつけたのも、手仕事ならではの表情と味わいを大切にする高田さんらしさ。
「施工の手間がかかるので、職人さんたちには嫌がられているかもしれませんね」と笑いながら、その理由を語ってくれた。
「世の中には均一な見た目のものがあふれているからこそ、そこにひと手間を足して、自分なりに遊び心を出せたらなと。なるべく手間をかけず効率を重視することがよいとされがちですが、それだけじゃ面白くないよねっていう。そんな気持ちですね」と高田さん。
物価高の時代、住宅においてもタイパやコスパを追求することが「賢い選択肢」だと言われることは少なくない。
だからこそ「そうではない選択肢があっても面白いよね」という一言からは、「急がず焦らず、いっそ遠回りしてもいい。家づくりというクリエイティブな行為を楽しもう」という、シンプルで力強いメッセージを感じ取ることができる。
建築家らしいスタイリッシュな住宅や店舗も手がける高田さんだが、そのイメージとは真逆の柔らかい人柄で、気後れは不要。
じっくりと腰を据えて、家づくりを一緒に楽しんでくれるパートナーを探している方は、ぜひコンタクトを取ってみてほしい。
撮影: Satoshi Ikuma(TechniStaff)
基本データ
| 作品名 | A-HOUSE / Fukuoka |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県福岡市 |
| 延床面積 | 106.96㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
設計者情報
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