
子育てと旗竿地の問題に回答を!
3階建て×スキップフロアの家
2階、3階はひとつの大空間。家族の距離が近いのびやかな住まい
子どもがのびのびと育つ、自分たちらしい家を……と考えていたSさん夫婦も、宅地購入で不動産業者とのやりとりに苦労したという経緯があった。最終的にはまるくおさまったものの、その経験から「家をつくるときは信頼できる専門家にじっくりと相談しながら進めたい」と考えるように。
もともと好みだった“木の家”を多く手掛け、建設予定地の土地勘もありそうな建築家をインターネットで探し、いくつかの事務所にコンタクトしたSさん。実際に何人かの建築家と会って話をするなかで、最終的に近江さんに決めた理由は「いちばん相談しやすかった」から。「実際、どんな要望や疑問にも近江さんは丁寧に答えてくれました。細かいこだわりも、むしろそこから話を広げてくれたりするので、とても話しやすかったですね」と振り返る。
S邸設計にあたり、近江さんがまず考えたのは“家族の一体感”だった。設計期間はちょうど第一子が生まれた直後で、まさに子育て世代家族の家づくり。大人がくつろげて、家事がしやすく、のびのび遊ぶ子どもと一緒に大きなひとつの空間で過ごせる……そんな家を目指して、「お子さんとの目線が近く、かつ、広さを感じられる空間」とするためにスキップフロアをとり入れた。
“家族の一体感”というコンセプトが最も顕著に反映されているのは、2階のLDKと子ども部屋などがある3階だ。1階~2階の階段をのぼるとすぐにキッチン、そこから4段(60cm)あがるとダイニング、リビング。ダイニングはキッチンカウンターの目の前で、ダイニングテーブルは堀座卓として使えるように堀座を造り付けてある。おかげでダイニングテーブルの堀座卓に座ったときの目線は、キッチンに立つ大人の目線とちょうど同じくらいの高さに。ダイニングとキッチンにいる家族が同じ目線で、しかもごく近くで、自然にコミュニケーションがとれるというわけだ。
ダイニング、リビングは3階との吹抜けで、天井高は3.6~5m。リビングの先には広々したテラスが続き、外への広がりも十分。堀座卓は、テーブル&椅子を置くより空間がすっきりするうえ、目線が低くなり、ただでさえ天井の高い空間をより開放的に感じられるのもメリットだ。
一方、水まわりはスキップフロアの高さレベルをキッチンとそろえ、背面隣りに配置しているのもこだわり。家事動線はフラットにして効率よくまとめることで、スキップフロアにありがちな”段差”に阻まれることなく、あれこれ手がかかる毎日の育児や家事も快適にこなせる。
こうして生まれた2階と3階の大空間。とくにリビング、ダイニングは家族みんなの一番お気に入りの空間になっていて、お子さんたちは、遊ぶときもここに目いっぱい道具を広げて自由にのびのびと楽しんでいるのだとか。両親もそれぞれのことをしながら自然なかたちで見守り、加わることができるという。
「夏はテラスにテーブルを置いて窓を開放し、テラスも部屋の一部のように使います。バーベキューのほか、普段のおやつやランチもテラスで楽しんだりしますよ」と奥さまが言うと、今は小学生になったお子さんが「素麺だけどね!」とひとこと。「いいじゃない、素麺」と笑い合うSさん一家を見ていると、明るくのびやかな空間での幸せな暮らしぶりが伝わってきた。
隣家が建っても抜群の採光と通風をもたらす、高さと窓配置の工夫
3階に設けた、子ども部屋と接するL字の通路兼多目的スペースも採光のポイントになっている。このスペースは本棚や、お子さんの勉強机としてもSさんの書斎としても使えるカウンターが造り付けてあり、2階を見下ろせる造り。通路兼多目的スペースの南西は隣家側だが、近江さんはここも多目的なロフトとした。ロフトなら“いつもいる空間”ではないから大胆な透明ガラス窓を設置でき、ここから入る陽光も吹抜けの階下のリビングに燦々とそそぎ込む。
3階建て×スキップフロア、工夫を凝らした設計によって効率よくとり込まれた光は、自然素材の塗り壁と無垢材で仕上げたぬくもり漂うLDKを爽やかに包む。そして、視線を少し上に向ければハイサイドの窓に広がる青い空。近江さんのわかりやすく丁寧な説明で、完成した住まいはすべてイメージ通りだったというSさん。「夜、夫婦でお酒を飲みながら、ハイサイドの窓越しに月や星を眺めているときがいちばんリラックスできる時間です。日当たりも風の通りもよくて住み心地は最高ですね」と、笑顔で語ってくれた。
【近江 利雄さん コメント】
Sさんご夫婦とは、設計中はもちろん現場進行中もお互い色々とアイデアが沸き、じっくりと時間をかけてたくさんのキャッチボールができました。その結果、将来的に厳しくなることが予想される敷地環境を克服し、可変性や遊び心があり、それでいて機能的な、明るく楽しいSさんらしいお住まいが完成したと思います。お子さんの成長に合わせて、お住まいがこれからどのように変化をしていくか楽しみです。
【夫婦+子ども2人】
最初はスキップフロアの空間の想像がつかなかったのですが、段差部分で分割できる家の模型に私たち夫婦の身長に合わせた人形を立たせたり、近江さんが内装設計した飲食店のキッチンとカウンターの位置関係が似ているということで、お店のキッチンに立って体験させてくれたり、何事も丁寧にわかりやすく説明してくれました。また、寝室の壁塗りなどにも参加ができて愛着も深まり、理想的な家づくりが出来たと満足しています。
基本データ
| 所在地 | 千葉県柏市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 124.61㎡ |
| 延床面積 | 127.99㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 施主 | S邸 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

空間づくりの妙が叶えた 子どもたちが伸びやかに過ごせる家
子どもたちが伸び伸びと生活し、家族が仲良く暮らせる家という施主の漠然とした要望に対し、「日本家屋のテイストを取り入れる」「1つの空間の中にいくつもの居場所を設ける」という方法で、見事に実現したのは、キトキノアーキテクチャの小林さんでした。

1つの造作でいくつもの役割 じっくり対話で叶えた優しい空間
戸建と比べ制約の多いマンションのリノベーション。自由度が低いということは、裏を返せば、建築家の腕が最も試される場であるということ。その眺望の良さに惹かれた施主のTさんが、築26年のマンションリノベを依頼したのは、竹味佑人建築設計室の竹味さん。大胆な発想と確かな力量で、家族がゆったりとした気持ちで過ごせる優しい空間に仕上げた極意に迫る。

遊ぶ、眺める、家族で家を楽しみ尽くす、中庭の存在とは!?
この家に住むIさんは、造園の仕事をしていたため、緑の楽しみ方をよく知っていました。子どもたちが思いっきり走り回れる芝生の広場、お風呂につかって眺める坪庭、自分で手入れする前庭。家族と暮らす新たな住まいはたくさんの緑で彩られていました。

グッドデザイン賞を受賞!アートギャラリーのような光あふれる家
「アートギャラリーのような光があふれる家に住みたい」というご夫妻の希望を叶えるため、建築家植木健一氏が考えたのが三面体をL字型に入れ子構造で組み合わせるという独自の発想。四方にある開口部からの光と風に満たされたデザイン性と機能性を兼ね備えた邸宅は、2010年度グッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ました。

オーディオルームで趣味に浸る、集う場所と趣味の場所の共存術!
施主であるMさんが望んだのは、家族の時間を共有しながらも、それぞれも趣味に没頭できる場所がある住まい。完成したのは、家族が集まれるワンルームのようにオープンなLDKと、趣味の音楽や映画を楽しむことができる個室を備えた家だった。

テーマは「日本建築の茶室」。光の陰影を生かした旗竿の家
一級建築士である手塚勝也さんが手掛けたのは、都内の旗竿地での家づくり。北斜面ということで採光に課題があったが、手塚さんはそこを逆手に取り「日本建築の茶室」をイメージした家づくりを提案する。そして完成したのは、光の陰影を生かした和の住空間だった。

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを
家をつくるならぜひ欲しい、「広々としたLDK」。だがワンルームの大空間をどんなLDKにするかは、設計者のセンスやスキルで大きく変わる。では、建築家の片山正樹さんの場合はどうだったのだろう? 「大田区の家」から片山さんの設計の魅力を探る。

構造ではなく、素材として魅せる コンクリート壁の可能性
クールでスタイリッシュなコンクリート打放しに憧れる人は多いのではないでしょうか。しかし一般的な木造建築に比べるとRC造(鉄筋コンクリート造)は坪単価が高く、コスト面から諦めてしまうことがあるのも事実。住記屋の鈴木貴晴さんが手掛けた「朝日の家Ⅱ」は、ある方法でその憧れを実現。さて、その方法とは。

半地下空間とスキップフロアで叶えた コンパクトながら家族5人の居場所がある家
この上なくよい立地条件だが、敷地面積は決して十分とはいえない。家族5人で暮らす家を新築するためお施主さまが購入されたのは、まさにそういう土地だった。そこでアトリエスピノザの井東さんと市原さんは半地下とスキップフロアを採用。床面積そのものを広くしただけでなく、居室それぞれに合わせた居心地も叶えた。
