
重ね書きの家
設計者情報
団地の1住戸のリノベーション。 新築でもリノベーションでも、設計に先んじて既に何らかの環境がある。新築の場合、例えば地形や敷地の周りの環境がそうであるし、集合住宅のリノベーションの場合では、既存の躯体やサッシ、共用縦配管などの、一般的には変更が制限される部分もそうだといえる。設計に際しては、そういった既にある環境を、そこに装飾的な意味を求めることなく、前提としてただ即物的に受け入れる態度でありたい。 この物件は、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート構造による、階段室型の中層公団住宅である。壁式のため、住戸内に柱型・梁型が無い代わりに、2枚のPC版の壁が空間を3つのボリュームに分節している。そして、その壁には開口が開いている。開口の位置も大きさも、元の間取りの都合に沿って決められたものだ。元の間取りが解体され、それらはそういうものとしてただそこにある。それを手がかりとして、この場所での生活が、この2枚の壁をくぐってあちらとこちらを行き来する軌跡であると位置づけた。 2枚の壁に直行するように、家具や水廻りを内包した箱を並べて、3つのボリュームの中にいくつかの場所をつくる。家具は天井まで達しない高さにして、空間がそれらに強く分節されることなく、一つながりの状態であるようにした。ペリメーターとなる南北の壁については、改変した空間のボリュームや質に合わせて、開口部を内側から編集し直すとともに、熱環境に対する備えを附与する。具体的には、木製建具による二重サッシ化や断熱材の付加などである。また、3つのボリュームの壁・天井は、それぞれの空間が影響を受ける、光の性格に基づいて決定した各々の色で塗装する。壁をくぐって空間を行き来する度に、少しだけ増幅された光の差異が、相対的に体験されるよう意図した。 既にある強い形式を拠り所に、棲みつくように描かれる行為の軌跡や知覚される光の差異。既存環境に身体的・現象的な体験を乗算することで、新たな生活の全体像が浮かびあがってくるような、そんな「重ね書き」のような改修のあり方を目指した。
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

Residence with dirt floor

鍼灸マッサージ処和田家

庭園に囲まれた邸宅

water hall
「住宅内のブラックボックス」 浴室は水を大量に扱うという性格上、水気密性の高い扉で前室(脱衣洗面室等)と空間的・環境的に強固に区画され、その内部空間は小さな開口部をひとつだけもつ外部から独立した閉塞的な箱としてつくられていることが多い。 この閉鎖的な浴室のつくりは、様々な生活が営まれる住宅のなかでも浴室をその外側での生活と一切の関係をもたないただ入浴するだけのブラックボックスのような場所にしている。 「水場」 森の中には水場と呼ばれる野鳥や野獣が体を洗い、休息し、水を飲むための水辺が存在する。 砂漠の水場であるオアシスは憩いの場という意味を持つ。 自然界のなかで水のある場所は快楽性を伴っている。 浴室もただ機能を充足するための場所ではなく、入浴という機能を超えた豊かさをもつべき場所なのではないのだろうか。 「浴室を開く」 築50年の木造家屋の浴室を改修するにあたって、浴室を生活に開くということを考えた。 具体的には浴室を区画していた間仕切りと扉を撤去し、脱衣洗面室とひとつながりの最高天井高さ約4.0mのワンルームとし、浴室上部の屋根には1m角の開口部を設け、自然光が降り注ぐ明るい開放的な空間とする。 壁天井はつやありの白塗装とし、浴室の自然光を暗い中廊下へと最大限反射するようにしている。 天高4.0mの気積の大きい空間によって、浴室の湿気を素早く乾燥させることもできる。 (入浴後10分程度換気扇をまわすことで、壁床天井が完全に乾燥状態になる) 一般的な浴室空間がもつ湿気っぽさのない、ドライで開放的なこの浴室は、入浴という機能から解放され、庭のように観葉植物を日向ぼっこさせたり、読書をしたり、ときにはお風呂に入りながら食事をとったりと、住宅内での生活と地続きの場所として使われ始めている。

中延の家(リノベーション)

甲子園口のマンション リノベーション
ぐるぐる回遊できる、風が抜けるマンション 和室をウォークインクローゼットへ変更。ウォークインクローゼットを、南側のリビングから北側の洋室へウォークスルーできるようにしました。これにより、中央の廊下→リビング→ウォークインクローゼット→洋室→中央の廊下というふうにぐるぐると回遊できます。家事動線の効率化や生活動線の多様化を図ることができ、楽しくて、効率的な生活がもたらされます。また、ウォークスルーの動線は、北の窓と南の窓をつなげ、風が吹き抜けます。

吹田の家
大阪の北摂地域である吹田市にある古家をリノベーションした住宅です。約10年前に住宅メーカーによって建てられた3階建の家のLDKを中心に改修しています。コンパクトなLDK空間を区切るように配置された対面型キッチンを撤去し、壁付のL型カウンターキッチンへと変容させています。キッチンや収納家具を壁面に配置することでコンパクトな室内空間を最大限に活用し、L型ソファと大きなダイニングテーブルを置いてもゆったりしたスペースを確保できています。キッチンはステンレスのカウンンターキッチンとし、食洗機と一部の収納以外はオープンにしているので、既製品のユニットシェルフなどを自由に組み込むことができ、将来においても交換が可能です。LDKの隣にある洗面室は、大きな病院用シンクを活用した洗面台と木製三面鏡やグレー目地の壁面タイルによってちょっぴりレトロモダンな雰囲気のインテリアとすることで、温もりある居場所のひとつになっています。 撮影:若林秀典建築設計事務所

陰の住居
住居とは家族の関係や感情の様々な波を受け入れる器である。そうであれば、住居はむしろ陰に支配されている方がいいのではないか。陰はいいときも悪いときもそっとそこに佇み、目立たず、主張せず、ただ家族を見守る。そんなことを考えながら設計した住居である。 ほぼすべての壁は凹凸のある黒い塗装で仕上げられ、外から入る光を少しだけ拡散する。この光のあり方は、日本の伝統的な家屋の光のあり方に通ずるものがある。明快な光ではなく、鈍く柔らかい静かな光の質である。日本的な住居の光の質と様相を、鉄筋コンクリートでできた近代的なマンションの中で表現できないかと考えた。 築40年を超えるマンションで階高が低かったため、天井は張らずコンクリートをむき出しにして、天井の高さを確保している。梁も大きく、コンクリートの存在感が強かったため、新しく設ける要素が均質なものではコンクリートの量塊感と時間を経た強さに負けてしまう。そこで様々な素材を散りばめることで、乱雑な調和を生み出すことを狙った。木、石、アルミ、鉄、左官といった材料を使用している。 リビングの一画に子供部屋を配置し、ガラス張りの部屋とすることで、空間の広がりを確保している。そのガラスは、子供と両親の関係調整装置となる。ブラインドとロールスクリーンで視線を遮ることができるため、プライバシーを確保したいときには閉じ、空間を共有しながら部屋で過ごしたいときには開けることができる。壁で囲われた「個室」といった、単一の関係性しか生まない部屋のあり方ではなく、その時の気持ちや気分によって関係性を変えられる仕組みをつくった。

CAVE
洞窟で暮らす 洞窟のように、天井が高いところ低いところ、明るいところ暗いところ、狭いところ広いところ、物見台のように少し高くなっているところ、緑の見える穴、海の見える穴、風が通り抜けるのを感じれる場所、様々な場所がここにはあります。室名や家具に縛られるのではなく、その時々、思い思いに自由に好きな場所を選び、暮らすことのできる場所を目指しました。 山と海に挟まれた芦屋のマンション最上階という立地を生かし、都市に住まいながらも、どことなく自然の中にいるかのような心地よさを作り出しています。



