
陰の住居
設計者情報
住居とは家族の関係や感情の様々な波を受け入れる器である。そうであれば、住居はむしろ陰に支配されている方がいいのではないか。陰はいいときも悪いときもそっとそこに佇み、目立たず、主張せず、ただ家族を見守る。そんなことを考えながら設計した住居である。 ほぼすべての壁は凹凸のある黒い塗装で仕上げられ、外から入る光を少しだけ拡散する。この光のあり方は、日本の伝統的な家屋の光のあり方に通ずるものがある。明快な光ではなく、鈍く柔らかい静かな光の質である。日本的な住居の光の質と様相を、鉄筋コンクリートでできた近代的なマンションの中で表現できないかと考えた。 築40年を超えるマンションで階高が低かったため、天井は張らずコンクリートをむき出しにして、天井の高さを確保している。梁も大きく、コンクリートの存在感が強かったため、新しく設ける要素が均質なものではコンクリートの量塊感と時間を経た強さに負けてしまう。そこで様々な素材を散りばめることで、乱雑な調和を生み出すことを狙った。木、石、アルミ、鉄、左官といった材料を使用している。 リビングの一画に子供部屋を配置し、ガラス張りの部屋とすることで、空間の広がりを確保している。そのガラスは、子供と両親の関係調整装置となる。ブラインドとロールスクリーンで視線を遮ることができるため、プライバシーを確保したいときには閉じ、空間を共有しながら部屋で過ごしたいときには開けることができる。壁で囲われた「個室」といった、単一の関係性しか生まない部屋のあり方ではなく、その時の気持ちや気分によって関係性を変えられる仕組みをつくった。
基本データ
- 所在地
- 東京都三鷹市
- 延床面積
- 80.28㎡
撮影:繁田諭
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引き継いだ住まいの暮らし

ワハウス
京都市中京区に会社を構える工務店、駐車場であったスペースを事務所へ改修した計画。 古くから地域で工務店を営まれていた建築主からの要望を読み解いていくと「”和”やかに、地域と繋がる”輪”となるよう、自然と対”話”が生まれる場所」を潜在的要望としていることが分かり、3つの”ワ”が設計の手がかりとなった。 計画地は商売人の町である中京区にあり、前面道路には歩道もあることから常に人が往来している。昔から京都は見世棚や町棚をつくり、街とのつながりを持ってきた歴史から一階を特別な場所と捉えてきたように思う。設計するにあたり、歩道から地続きで建物の内外を繋げるために、地面を起点とした連続性が「一階の持つ開放性と地域性」を繋いでいくよう考えた。 構成としては京都の町屋に習って動線をまっすぐ通し、そこへ短辺方向に土間、床、小上がりの領域がとりつく「片土間(ニワ)・床上三室」を意識した。 京町家では三和たたき土のニワがまっすぐ軸線上に通ることが一般的であるが、ニワを通してしまうと接客・執務エリアが狭くなり、仕事の効率が下がってしまう。軸性を転換するべくしつらえた小上がりを南北方向に通し、ニワを参照することにした。 短辺方向にルーバーや壁面収納、階段・キッズスペースをしつらえる事で、小上がりを介してレイヤー状に多様性のある空間が広がっていく事を目指した。 小上がりは人の居場所を分けることなく、分節的かつ緩やかに空間をつなげることを意図しており、執務室や来客を迎える場所として設けたルーバー壁は、土間エリアと執務エリアを分割することなく、ゆるやかにつながる空間となるよう設計している。 ルーバーと上框を楕円形の形とすることで偶有的な形から生まれる平面的な広がりを生成する。 また「普通の材料だけで作りたい」との要望もあったことから、壁やルーバーに採用した木材は一部を覗いて、すべて桧や杉の針葉樹とし厚みや太さにより素材のもつ特性を活かし、床のアプローチ・土間はすべて南部石を混ぜた洗い出し、天井は和紙クロスにEP塗装とした。 こうした人の手が作り出す素材感が、人の心を惹きつける建築の要素になるのではないかと考えている。 和やかな雰囲気を持つ素材、楕円形や軒下のルーバー、人がちょっと腰を掛け対話するベンチなどは、来客だけでなく働く人も心地よく過ごせる空間ができたのではないかと思う。

森下の住宅

旗竿地に自然光を取り込むフルリノベーション
都内の住宅街であり旗竿敷地という、日光の入りにくい場所で、 築45年の木造住宅をフルリノベーションしました。 旗竿地という性質上、自然光が入らない・建物面積を増やす余裕もないなどの、 問題点を施主とコミュニケーションを取りアイディアを具現化していきました。 1階は明るく広々としたLDKにするため、 大きな出窓を設けそこに腰を掛けることでダイニングチェアも兼ねています。 2階は洗面所とクローゼットとホールをそれぞれに分けずに一体的にすることで、 空間の広さを確保し、トップライトを設けることで柔らかい光を取り込みました。 寝室はアール天井の吹抜を作り、こちらも空間が柔らかく伸びていくことを演出しました。 限られた建物ボリュームに合うよう、燦々とした日差しではなく、 柔らかい自然光を取り込むことで、暮らしを豊かにしてくれるでしょう。

回遊するアトリエと住まい
昔ながらの2DKのマンションを、アトリエ付き住居にリノベーションした。 施主はスペインタイルの製作を行い、タイル教室も主宰している。 既存の部屋は一般的な間取りであったが、ひとつだけ一般的でないことがあり、それは三方向に窓を持つことだった。そこで中心にコアを設け、その周囲は同じように明るい同等の場所、窓に面した連続する回遊部屋、と扱うことにした。 壁だけを抜き出して説明すると「中心にコアを持つ回遊性のあるワンルーム」となるが、副次的に床仕上げの切り替えや天井の既存梁などの手がかりを用いることで、様々な分節が可能であるよう仕立てた。アトリエ部分だけを独立させるのがベーシックな切り分けであり、床仕上げの切り替えと呼応している。玄関からアトリエまではハードユーズできるようレンガタイル貼り、それ以外は無垢フローリング貼りとしている。 一方、露出させた既存の天井梁で切り分けると、LDKとそれ以外のグルーピングとなり、アトリエを拡張した展示会や教室のワークショップやパーティー時の利用を想定した。 「タイル教室」という機能や既存の状況から木・コンクリート・レンガタイル・鉄など素材そのものがむき出しになる仕上げ材の選定とし、それらをいかに統合するかを検討した。同時に、離れた場所や違った部分に似たような形態や空間性を与えて調和させていく。 また、それぞれのエレメントが独立して存在することを意識した。例えばそれは中心のコアの平面と床の仕上げ切り替え、天井の既存梁の位置がそれぞれずれていることや、キッチン周りの棚がスチールフレームを用いて、床・壁・天井といった建築エレメントから離れていることに現れている。 写真:佐藤亮介

本郷の家(改修)
8.5坪の敷地に建つ築20年の鉄骨3階建て住居を、外回りは既存のまま、内部の間仕切り・階段などを全て取り払い全面改修した住宅です。 建ぺい率・斜線制限によって決まった最大ボリュームを使いきった既存の骨格の中で、階段や必要な部屋を配置してゆくと、それらは自ずとほぼ以前の建物と同じポジションに収まってゆきました。しかし、階段の寸法、間仕切りや出入り口の位置、室のプロポーションを最適に整えることで、暮らしの快適さがガラリと変わることを実感した仕事でした。既存の外部サッシ窓は不要なものは壁を作って消したり、大きすぎる窓は内部に枠を新たに作り、開口部の大きさを絞って内部空間の質を高めました。全てのサッシ窓の内側に新たに木製建具を建て込むことで、アルミの無機質感を消して部屋の雰囲気が損なわれないようにしました。 造作家具、造作建具、素材が一体となって、体にフィットする衣服のような心地よさのある家に生まれ変わったと思います。

不可能を可能に。恵比寿K邸
老夫婦2人がすむ、築40年の住宅の改装です。子供達が独立したため、LDKと、浴室を使いやすいように改装するための計画です。 キッチン・ダイニング部分は、なるべく人の動きが少なくなるように改装しました。キッチンは、狭い空間でも効率的に使えるよう、特注したキッチンです。また、ダイニング部分は、椅子に座ったまま、様々な物が取れるようなデザインとなっております。 浴室と洗面所は、足を伸ばしてゆったり入ることができる浴槽が欲しい言う要望がありました。元々は、0.75坪の浴室だったので、普通だと、小さな浴槽しか入りません。しかし、私達は考え、浴室をL字にすることで、柱をかわしながら、足の伸ばせる浴槽を入れることができました。そして、洗面所に出っ張った部分を窓にすることで、浴室と洗面所が一体化して、視覚的により広く感じるようにすることもできました。素材は、浴室、洗面所とも、飯能の檜をふんだんに使い、リラックスできる空間としております。

Residence K










