
家とともに人生を歩む。
日ごとに愛着が増す、ゆとりある家
シンプルな構成に抑揚を加え
気持ちいい空間をつくる
建築家の小山田剛さんが建てた自宅は事務所も兼ねており、1階にダイニングキッチンとリビング、2階に小山田さんの仕事部屋、子ども部屋、主寝室などがある。しかし、仕事の打ち合わせスペースとして使うのは主にダイニングキッチンで、生活の場と仕事の場を明確に分けないことを小山田さんは「ポジティブな浸食」と言う。生活感が感じられ、実際の暮らしが想像しやすいと打ち合わせに訪れる顧客などからも評価を得ているそうだ。
敷地面積が約100㎡と決してスペースが贅沢にあるわけでなく、加えて風致地区にあり制限も多い中で建てられた小山田邸。できるだけ無駄を省くことを考え、廊下を無くし、部屋と部屋を壁面で区切るシンプルな間取りになった。
小さな家だからこそ、間取りの工夫に加えて空間の抑揚を大切にしたという小山田さん。玄関から土間を入ってすぐのところにあるダイニングキッチンは、天井高をあえて低くした。約2m20cmと一般的な建売住宅のそれよりも若干低いくらいにしたという。一方でそこから繋がるリビングはダイニングよりも階段3段分床が下がり、天井も高い。きゅっと絞られた印象のダイニングから、上下にも視界が開けるリビングへ入るととても開放的に感じられる。
さらには「玄関から入ってリビング、奥の小上がりまで進む視線が大きくカーブするようにしたことで、高さ、家の断面ではメリハリ、平面では空間に奥行きをつけました」。
ダイニングとリビングの間にドアを設けることは考えなかった。ダイニングからリビングをみたとき正面にある西向きの窓とその景色までを一続きに感じられるようにし、打ち合わせに使うダイニングを狭い空間にしたくなかったからだという。しかし、そこに続くのはパーソナルな空間であるリビングだ。そこで小山田さんはダイニングからリビングが見えすぎないよう、それぞれの入り口を対角線上に配置。ダイニングで来客がリビングのほうを向いても、視線は窓越しの景色に向けられるためリビングのプライバシーは保たれる。
だからこそ一層、リビングに入ると予想以上に奥行きがあって驚いてしまう。奥に配置された畳敷きの小上がりに座ってみれば、3面に設置された窓から植物も眺められ、申し分ない寛ぎの場になっている。
2階に上がると、昇ってきた階段の左側部分が大黒柱、この家の中心だ。壁の一部分としてスッと伸びた大黒柱を中心に梁が傘のように広がり、屋根型の天井を際立てている。仕事部屋と子ども部屋を分けているのは箱型のウォークインクローゼット。西側の上部を区切りなく一続きにしたことで、開放的な空間に仕上がった。
無駄なくシンプルにというと、単調・簡素といった言葉が思い浮かぶこともあるだろう。小山田邸の間取り図も、潔くすっきりしたものだ。しかし、内部はメリハリが効いた空間が広がり、住む人や訪れる人の感覚を刺激する。「広くはないので」と何度も小山田さんは口にしたが、家の中にいると空間に余裕を感じるほどだった。
小さな豊かさを散りばめ
愛着ある、長く暮らすための家にする
「小さな豊かさ」とは一体なんだろう。
都会の密集した住宅地において、敷地の北側に家を寄せて建てることで、南側に日当たりが悪い庭を無理やりつくるよりは、と敷地の中心に必要なボリュームを備えた正方形の家を建て、隣地との間の空いたスペースに四季を感じられる木を植えた。「家」と「庭」という区分けではなく、「家と一体となった緑」という考えだ。小山田さんいわく「室内からふと季節を感じる木々が目に入ってくると、それだけでちょっとほっとしたりしますよね」。今日の空は好きな感じだとか、窓から入ってくる光が柔らかくて美しいとか。そういう、知らずのうちに心にちょっとした喜びを与えることも、小さな豊かさのひとつだという。
トイレと階段が一般的な住宅の寸法よりも少し広いのも特徴的だ。普段あまり意識されることはないが、住む人誰もが毎日何度も使用しているのがトイレと階段。確かに、そういった場所をより快適に使えれば、日々のクオリティはアップする。
小さな娘さんのために、例えば階段の昇り口など、娘さんが手を触れそうな部分には曲線を用いた。壁面に使用された漆喰は、ざらざら、ごつごつとしたついつい触れたくなる触り心地。そんな素材の触感も含めて「手に触れるところが丸い」ということが重要だったという。毎日何度も触れるところはやさしくありたいという、父親らしい心遣いが感じられる。
他にもたくさんの「小さな豊かさ」を教えてくださった小山田さん。中には「家族も気づいていないかも」という密やかなポイントもあった。しかし、その密やかな部分は、感覚が先に居心地の良さとして理解していて、まるで種明かしをしてもらっているようだった。
居心地の良い空間でゆとりある暮らしをしていると、家に愛着がわきますよね、と小山田さん。小さな豊かさをちりばめ、快適さにこだわる理由のその先には「長く暮らせる家にする」という思いがある。一緒に時を経て、人生を過ごしていけるような家にしたい。小山田邸に自然の素材が贅沢に使用されているのは、心地良く暮らすためはもちろんのこと、経年変化も味わいたいという気持ちから。傷がついても、それが思い出になるのだ。小山田さんが自身でメンテナンスをすることもあり、それがまた愛着につながっているという。
小山田さんのお宅には、無理がない。どこかを大きくしようとしてどこかが犠牲になるとか、不自然さが全く感じられないのだ。訪れたお客さまたちからは「なんかいいよね」「やさしいね」と感想をもらうことが多いのだとか。これ見よがしなものがあるわけではないけれど、散りばめた小さな豊かさが積み重なって、人間が求める本来の豊かさが生まれたのを感じ取った結果の言葉だろう。
「今、家を建ててから2年経って新築とは違う良さがまた生まれ、愛着も増してきました。外に植えた樹木と、家族と、建物と。一緒に成長しながら、これからどのように変化していくかが楽しみでなりません。建物を見学したい方は、ぜひともご連絡ください!」
【見学のお申込み】
一級建築士事務所CoboLabo
連絡:03-6874-3455
住所:東京都練馬区大泉学園町7-14-10
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都練馬区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 106.4㎡ |
| 延床面積 | 92.04㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | O邸 |
撮影:Life Photo Works
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設計者情報
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