
エアコンが足もとに? 家族を笑顔にする
高気密・高断熱二世帯住宅
3世代がほどよく交わる
部分共有型二世帯住宅
玄関を入ると、左手には大容量のシューズクローゼット。そしていくつもの焼物が出迎えてくれる。これは陶芸を趣味とされるお母様手作りの作品なのだという。邸内に足を踏み入れると、明るく陽が降り注ぎ、無垢材の木のぬくもりが感じられるLDKが広がる。ここは主に田口さんのご両親が暮らすスペース。広々としたキッチンと寝室、二世帯共用のお風呂場が設置されている。
二世帯住宅というと、玄関が別々にあり親世帯・子世帯スペースをはっきりと分けられた、完全分離型が一般的だ。今回、田口さんはあえて玄関や浴室を共用とした部分共有型の二世帯住宅とした。「スペースの節約でもあるのですが、家族の息遣いがわかる家にしたかったのです」と話す田口さん。実はこれまで住まわれていた家も部分共有型の二世帯住宅だったが、親世帯・子世帯の動線が交わることがないタイプだったという。
同じ屋根の下に暮らしながら、孫に会わない日もあったと語るお父様。「この家に来てから、毎日家族の顔も見られるし、『行ってきます・行ってらっしゃい』『ただいま・お帰り』が増えました。夜中寝ていても『お、帰ってきたな』と気づいたり。そういうのがいいですね」と目を細める。
お母様も「平日の晩ごはんは、1階で家族一緒に食べています。今のキッチンは、お嫁さんと2人で並んで調理しても十分な広さがあり、満足しています。一方週末は、お互い自由にしましょうという形です」と、ほどよい距離感での二世帯のつながりに満足しているようだ。
階段を上った2階は、田口さん夫妻とお子さんの居住スペース。本棚、洗面台、ワークスペースがあるユーティリティーゾーンを中心とし、LDK、寝室、子供部屋がそれを取り囲む。どのスペースに行くにも、必ず家の中心を通る配置は、個のプライバシーを確保しながらも、家族の息遣いが感じられる間取りに仕上がっている。
2階で目を引くのが、上へとのびるハシゴ。登るとそこには、20畳はあろうかという大空間の小屋裏が広がる。季節モノや普段あまり使わないものをしまう倉庫の役割を担っているが、男子が大好きな「秘密基地」的なワクワク感のあるスペースだ。
実際、田口さんがここで読書や音楽を楽しんだり、息子さんがスマホゲームをするお気に入りスポットになっているという。
たった1台のエアコンで実現
今後の主流となりうる階間空調とは
「この家は、基本的に1台のエアコンで全館空調しています」と田口さん。言われてみると、どの部屋にもエアコンらしきものは見当たらない。「きっと業務用の大きな空調が入っているのだろう」と思っていると、田口さんは、ユーティリティースペースの足もとにある棚の蓋を開けはじめた。見るとそこには、前面カバーが取り外されているものの、ごく普通のエアコンが置かれていた。聞くと、一般的な家庭用の8畳用のものだという。
「実はこのエアコンは、1階天井と2階床の間のスペースに向かって吹出口が取り付けられているんです。冷気や暖気はそのスペースを通って、1階天井・2階の床から吹き出し、家の中を循環します」と田口さん。その空気の通り道として、小屋裏の天井がスノコ状になっているのだ。
田口さんはこれまで、住宅のリフォームや防音工事などで、延べ1000棟の住宅に携わってきた。その中で気づいたのは、数多くの方が「暑い・寒い」といった温度環境を気にしているということだったという。
「空調問題はとても大切だと感じていました。各部屋にエアコンを設置し、暑くなったら冷房、寒かったら暖房をつけるという従来の方法ではなく、年中快適な温度ですごせる家にしたい。しかも経済合理性のある形で、と思っていたときに出会ったこの階間エアコンという新しいしくみを導入してみたのです」と田口さんは語る。
この家は通常よりも断熱材を厚くした、高気密・高断熱住宅となっている。また熱交換器によって、給排気時の温度変化を最小限にする工夫もなされている。これにより年間をとおして1台のエアコンを稼働させ、邸内全体の温度を一定に保つことができるのだ。
エアコンは、部屋を「冷やす」「温める」ときに一番エネルギーを消費し、温度をキープするときはさほどでもないという。であるならば、各部屋にエアコンを設置し、暑い・寒いの度につけたり消したりするよりは、1台のエアコンを24時間つけ、一定の温度に保つほうが効率的なのだ。このしくみで、冷暖房の消費エネルギーが、一般的な省エネ基準の住宅に比べ約25%~30%と大幅に削減されるのだとか。さらに部屋の数のエアコンの購入代が浮くというおまけ付き。
また、メンテナンスの容易さもこのしくみの魅力の1つだ。通常、上部に設置されることの多いエアコンは、なかなか手入れが行き届かないもの。ほこりがたまれば、効率もダウンしてしまう。でも、この場合は足もとにエアコンがあるため、手間なく掃除が可能なのだ。
そして経済合理性に勝る、何よりのメリットが、家族が快適・健康に暮らせるようになったということだろう。家族から「どの場所でも温度が同じ」「入浴時の脱衣所も温かい」「夜中のトイレも寒くない」といった声が聞かれ。お父様に至っては「朝方喘息で苦しんでいたが、それがなくなった。血圧も安定して調子がいい」とのこと。
空調1つで、「経済性」「メンテナンス性」「快適性」を叶え、家族の健康まで向上させた田口さんの先見性には、眼を見張るばかりだ。
この家には、家族の笑顔が溢れている。快適な家は家族を幸せにするのだ。田口さんは、これからも、さまざまな家族が笑顔で暮らせる家を作り続けるに違いない。
基本データ
| 所在地 | 神奈川県海老名市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 127.38㎡ |
| 延床面積 | 144.08㎡ |
| 家族構成 | 2世帯 |
| 予算 | 4000万円台 |
| 施主 | T邸 |
撮影:アトリエあふろ(鈴木暁彦)
設計者情報
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