
常識を疑え!
北?に開いたリビング、屋内?にもなる縁側
平屋、北向き、縁側。答えは敷地にあった
「300㎡近いゆとりある敷地だったので、ここで2階建てにするのはもったいないな、と思いました。計画当時はご夫妻二人でしたし、家族が増えたとしても一般的な広さの家ならば平屋が十分に建つ敷地だったので。2階建てにすると階段部分がどうしても2坪くらいは取ってしまうので、そのスペースがないぶんコスト面も安心ですから、平屋でいきませんか、とご提案しました」と岩川さん。
さらに画期的だったのは、北側にリビングを配置し、北向きに大開口を設けたこと。一般的に、過ごす時間が長いリビングは家の中でも一番陽当たりの良い南面に配置したいと思うものだが、岩川さんはそこにとらわれることはなかった。
「敷地の南側は開けていて陽当たりはいいのですが、国道が通っていて交通量があるんです。逆に北側は、目の前に里山があって景色が素晴らしい。この敷地条件だったら、北側を開放した家にしよう、と思ったことがすべての出発点になりました。お施主さん自身は北向きにしようとは思っていなかったと思いますが、山の景色を楽しみながら暮らしたいという要望がありましたので、それならばいっそのこと、リビングを北側にしようと。平屋にしたこともあり、北向きでも南側のハイサイド(高い位置にある窓)から光を入れれば、明るさも十分に取れますので」
里山を望む北側リビングをさらに印象的な空間に仕上げているのが、庭と室内の間に設けた縁側の存在。リビングと同じ杉の板材を貼り、室内の延長のようでありながらも、外の風と空気に触れられる半屋内空間だ。
「普通の縁側とは違って、縁側の外にガラス窓はなく、網戸と雨戸のみ。普段は網戸だけを閉めているので、ここに居ると蚊帳のなかのような感じになるんです。網戸だけなら外の空気や緑の匂いも入ってくるので、半屋外的な感じになるんです。縁側の幅を少し広めにとっているので廊下っぽく見えませんし、外としても中としても自由に使える中間領域。もともとご主人がウッドデッキを要望されていたのですが、完全に外になるウッドデッキとはまた違って使い道も広がると思います」
平屋、北向きリビング、縁側空間など、想像をはるかに超える提案を受けて完成したU氏邸。「お施主さんのこれまで住んできた家の履歴を伺い、住まいの原風景を知ることから始める」という岩川さん独自の設計プロセスは、施主の思い描くイメージの本質を見つけ出し、心の奥にあるものを具現化してくれる。
ストーブを中心にした、“ていねい"なリビング
【岩川 卓也さん コメント】
暖炉は人が自然と集まってくる場所なので、まわりに人が腰かけられるように床を一段下げています。薪ストーブは料理に使うことを一番の目的にしているので、シンプルな輻射式を選びました。暖房としても薪ストーブ一台で家全体の暖房ができるくらいのパワーがありますが、忙しない日常のなかで常に薪ストーブを使うのは現実的ではないので、パネルヒーターも併用しながらうまく使い分けるようにしています。
基本データ
| 所在地 | 静岡市葵区 |
|---|---|
| 延床面積 | 103.17㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 施主 | U邸 |
撮影:畑亮
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

どんな季節でも、雨の日でも。 閉塞感なく暮らせる、通り土間がある家
雪国と呼ばれる地域では、一年の中でも雪深い冬をどう過ごすかが重要だという。建築家の堀井博さんが新潟に建てた自邸は、雪国で生まれ育ったからこそといえる工夫がたくさんある。それだけではない。開放的な通り土間がある家は、毎日の暮らしを快適に過ごすためのヒントにあふれている。

新しいのに昔からあったような佇まい ずっとここでのんびりしていたくなる家
新しい建物のはずなのに、以前からそこに存在していたかのように周囲に溶け込んでいる 建物がある。ここは、とくら建築設計の松尾道生さんの自邸およびアトリエ。住まう家族も 訪れた人も「ここにずっといたい」と思わせる家づくりに迫る。

家の中に公園があるかのよう。 子どもがのびのび遊べる住まいのつくり方
ノアノア空間工房の大塚泰子さんがプランニングしたのは、敷地内の高低差を活かし、中庭を周遊しながら2階に上がっていくスキップフロアの家。大人が心地よくくつろげて、子どもはのびのびと育つ──。中庭はつくり方次第で暮らしの豊かさに大きな差が出ることを実感する、魅力的な住まいのポイントを聞いた。

オーナーの思いを唯一無二の魅力として表現 自然と家族が集まるリビングを内包する家
モダンでシンプルな佇まいの家をお望みだったお施主さま。建築家の山口さんは、線を省き単純化することで要望に応えた。完成したのは、小さなキューブを組み合わせたような四角い家。内部は吹き抜けがあり開放的で、おおらかに空間がまとまっている。自然と家族が集まるリビングはどのように実現したのだろうか。

開放感を思う存分!感性のままに暮らせるプライベートな中庭
日の当たるリビングでいつも自然を感じていたい。日射しや風は入りながらもプライバシーの守られた家を実現したのは中庭でした。中庭を活かしたシンプルな家はHさんご夫婦の感性に響くものがありました。

依頼主の心に散らばる要望を形に! 空室を作らない賃貸併用住宅
東京の下町の空気を残し、今若者にも人気のスポット「谷根千」。谷中、根津、千駄木、木造家屋とお寺が密集する、かつての寺町はいまや観光客で賑わう。そこに漂う昭和の空気を求め、週末になると多くの人が訪れる。そんな、日本の古きよき面影を残した街に、シックな黒壁とそこに木が浮き上がる特徴的なデザインの賃貸併用住宅が1棟ある。街の空気を壊すことなく、でも遠目にも目立つこのデザインには理由があった。

防火地域の10坪の土地に豊かな空間を 不可能を可能にした「天空の光庭」という発想
家づくりはときに、厳しい現実に直面することがある。土地条件や予算により、ハウスメーカーから「その条件では無理」と言われ、思い描いていた家を諦めたり妥協したという人も多いことだろう。Oさんもそうなりかけた1人。そんなOさんの救世主となったのは、キトキノアーキテクチャの小林玲子さんだった。

趣味を超えた工房と理想の間取り!4年の設計期間を経た納得の家
家で仕事をしていて家事もこなすTさん。これからずっと過ごす家をつくるなら、納得のいくものにしたいと細部までこだわり抜きました。その甲斐あって、趣味のものづくりに没頭できる工房、お気に入りの椅子が映えるリビングと、どこをとっても申し分のない理想の家になりました。

琉球畳に座って過ごす空間を実現!山手に佇む事務所×二世帯住宅
自営業を営むAさんの事務所兼自宅が完成したのは、山手の静かな住宅街。Aさんご夫婦とお子さん3人、そしてご両親とお兄様の計8名が暮らす二世帯住宅です。家族がプライベートを確保しつつ集うことができるA邸は、まさにAさんが思い描いた空間そのものだそう。そんな理想の住まいづくりについて、設計を担当したアトリエスプリングの石原潔さんを交えてお話を伺いました。

