
母と娘が思い思い!
“今の快適”と“未来の安心”の共存の仕方
思い出を残した建て替え。賃貸住宅に転用することも視野
さらに、将来的には2階を賃貸住宅に出来るような可変性も取り入れたいという複雑な要望も。とはいえ当然、敷地には制限があり、それぞれ快適な二世帯分の居住スペース、オフィススペース、可変性を一挙に叶えるのはなかなか難しい。そんな難題を叶えてくれるハウスメーカーが見つからずに困っていたところに現れたのが、建築家の岩川卓也さんだ。
「限られた敷地にさまざまな機能を盛り込まなくてはいけなかったので難しい部分はありましたが、いかに親子がともに心地よく過ごせるとか、ということを第一に考えました。たとえば、仕事の来客もある娘さんとお母さまの生活動線を交わらないようにするため、外玄関のなかに内玄関を設けました。また、スペースの関係上、どうしても洗面室とバスルームが共有になるので、お互い声をかけずに気兼ねなく使える位置に配置しました。将来的には1階に娘さんが移ることになると想定しているので、そうなったときに2階を賃貸住宅として貸せるように、ウォークインクローゼットのところにユニットバスが入れられるようにしています」と岩川さん。
複雑な要望をうまくクリアしたうえで、長年住んだ愛着のある家の建て替えを考慮し、その面影をさりげなく残したこともポイントだ。
「一見わかりにくいのですが、実はお母さまが過ごす1階はあえて建具や天井高を低くしています。以前の家は昔の建物で、建具は180cm程度。これを今のスケール感にしてしまうと居心地が変わってきてしまう。目に見えるものとは別に、感覚的に身についているものってあるんです、人って。なんとなく覚えている感覚、なぜかわからないけど懐かしいという感覚を、気付かないくらいで構わないので醸し出せたら、と。お母さまの年齢を考慮しても、あまり大きな変化はないほうがいいと思って提案しました」
そのほかにも、思い入れのある桐たんすの一部を玄関収納にアレンジしたり、お母さまが大切にしていた足踏みミシンを娘の仕事場に使ったり、庭のもみじを活かしたり。新築だけれども、どこか懐かしさと温かみがそこはかとなく滲み出て、機能的にも情緒的にも居心地のいい多機能住宅となった。
都市の狭小地でも、伸びやかな住空間を
「狭小地で制約が多い場合、確かにある程度、出来ることは決まってしまう部分もあります。でも、だからといって出来ることだけをやるのでは意味がないと思います。今回、1階のお母さまのスペースでは、来客時の動線も考慮して、玄関のそばに料理好きなお母さまのためにコンパクトなダイニングキッチンを配置しました。2階の娘さんの部屋も、生活感の出るキッチンをブラインドで隠せるようにして、仕事場との境界線もフレキシブルにしています。機能を緩やかにつなげたり、障子や照明など光の奥行きで広がりを感じさせるなど、限られたスペースでも豊かな空間を作ることはできると思います」
基本データ
| 所在地 | 東京都豊島区 |
|---|---|
| 延床面積 | 77.50㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+両親 |
| 施主 | X邸 |
撮影:畑亮
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

眺望も心地よさもかなえる新発想。 「斜めの空間」の魅力とは?
眺望を活かしたオリジナリティのある住まいを望んでいた施主さまに、イノウエヨシムラスタジオが提案したのは「空間を斜めに区切った家」。奇抜なのでは? という懸念を吹き飛ばす快適で豊かな住空間の魅力や、全てにおいて「斜めが正解」と確信できる完成までのストーリーを紹介する。

クラシカルな親世帯×リゾート風の子世帯 2つの魅力が光る、代々木の二世帯住宅
以前の家のクラシカルな雰囲気を望む親世帯、テラス付きの開放空間を望む子世帯。建築家の角倉剛さんは異なる要望に応え、大満足の住まいを実現。二世帯、建て替え、都市部の家づくりなど、さまざまなヒントが詰まった『代々木の二世帯住宅』の魅力を追う。

光、風、音を感じながら、自然と共に暮らす森の中の別荘
暑い夏、涼しい場所で過ごしたいとの思いで別荘づくりを決断。 自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。 そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。 田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

余白を生むずれ重なる箱の家 共鳴し合う建築と庭
道路に囲まれた敷地にあり、全方向から建物が見えるという「栃木の家」。建築家の押山さんによればプライバシーを守るために1.5mのコンクリート壁で囲まれた中に身を置くと、驚くことに威圧感や圧迫感が感じられない。家中が明るく、庭仕事が楽しめる気持ちのいい家はどのように計画されたのだろうか。

歴史ある土地建物を驚きのバランスで守る!?セカンドハウス作り
先祖から受け継いだ300坪以上の敷地に建つ家を、セカンドハウスとして建て替えたい。そんな要望を受けて建築家の北園徹さんがつくった住居は、伝統的な日本家屋でありながらエキゾチックで前衛的。遠い過去と現在が、不思議なバランスで邂逅する空間だ。

快適な住まいが自由な創作活動をサポート
画家にとって、アトリエは創作活動を左右する大切な仕事場です。人によってアトリエの好みは分かれますが、Gさんにとっての理想的なアトリエは清潔な部屋であり、暖かく過ごしやすい空間でした。

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを
家をつくるならぜひ欲しい、「広々としたLDK」。だがワンルームの大空間をどんなLDKにするかは、設計者のセンスやスキルで大きく変わる。では、建築家の片山正樹さんの場合はどうだったのだろう? 「大田区の家」から片山さんの設計の魅力を探る。

コンクリート・土・木という素材を共存 将来の家族の暮らし方に配慮した家づくり
不変性の高いコンクリートをコアにして、可変性の高い木造、土壁を組み合わせる設計は、今回紹介するT様邸の実例だけではなく、既掲載のK様邸の家づくりにも共通している。そこには、今の暮らしだけでなく何十年も先の暮らし方や、建物の行く末までを見据えた、建築家・浅井さんの建築思想が深く根付いている。

ネガティブ要素を逆手に取り唯一無二の家に この条件だからこそ実現した開放感
自宅を新築するため、候補に挙がったのは明確な理由により価格が抑えられた土地。相談を受けた建築家の村上さんは、ただ1つだけ納得できればいい家ができると判断した。完成したのは自然豊かで開放的、さらに素晴らしい眺望が楽しめる家だ。そしてそれは、懸念した条件があったからこそ実現したともいえるという。

