
限られた予算の中、コストを抑えて叶えた
自然の素材に囲まれた暮らしができる家
限られた予算でも、効率的なコストカットで
自然の素材をふんだんに使った家を実現
八坂の家の施主、Kさま夫妻は「健康的な家に住みたい」との思いからハウスメーカーや工務店に通ったり、建売住宅を見学に行ったりと積極的に行動していた。西本さんとの出会いは、西本さんが設計した「木野の家」のオープンハウスに訪れたことがきっかけだったという。
自然の素材が贅沢に使用され、明るく開放的な木野の家。それまで見てきた木の質感を生かした家は和の雰囲気を持ったものが多かった中、木野の家はデザインがモダンでスタイリッシュなところも気に入った。西本さんの親しみやすい人柄にも惹かれ、自宅の設計を依頼することに決めたのだそうだ。
家づくりにあたって、最大の問題は予算だった。「2000万円に満たない予算でも、健康的な家に住みたいという思いに共感しました。無理だと考えずに、いかにご夫妻の思いに近づけるか、実現できるか考えました」と西本さん。
まず、家は1階と2階の床面積がほぼ等しく、構造的に一番無駄のない総2階建てとした。さらに、ひとつ多く配置すればその分コストもかかる窓の数を最低限に抑えるなど、効率的なコストカットに取り組んだ。外壁のサイディングなどの素材も予算に合うものを粘り強く探し出した結果、ついに、ほぼ屋内の全てで床材には無垢のパイン材を、壁面には珪藻土を使用できるようになったというのだからすごい。
実はKさま夫妻が気に入ったという「木野の家」のお施主さまが、今回の「八坂の家」を請け負った工務店を経営されている方なのだという。「ですから、何とか実現してあげたいとかなり工務店さんが協力してくださったんです」と西本さん。Kさま夫妻が望んだ「健康的な家」は、確かな設計技術とコツコツと積み上げられた努力、西本さんと施工関係者の信頼関係によって叶えられたのだ。
窓や壁を減らすことに意味を持たせ
暮らしやすく魅力的な家にする
1階は床面積の約半分をLDKが占めている。家族が集まるリビングは2階までの吹き抜けになっており開放的で、自然の素材を豊かに使用したことによる快適さを際立てている。見上げれば壁面も少なく大らかに仕切られた2階の空間が目に入り、家全体で余裕が感じられる。
LDKは南に向かって大きく開口した。部屋に光を入れ明るくすることはもちろん、窓の外にはウッドデッキを設けて室内から領域を拡張し、内と外を自然につなげる役目を果たしている。
お子さまが3人いらっしゃるKさまご一家。家族が絆を深められるよう、それぞれの思いを共有できるような家にしたいと考え「家族それぞれが個室に閉じこもってしまうことなく、家のどこにいても、核となるLDKとつながるように計画しました」と西本さんは語る。
たとえば間仕切りの壁を少なくし、大きな空間をいくつかつくったのはコストカットの意味もあるが、ゆるやかに空間を区切ることでリビングとのつながりを持たせるためでもあった。ほかにも、リビングの吹き抜けと別に、1階と2階をつなげる階段部分も吹き抜けとした。こちらも、床を省いてコストカットすると同時に1階と2階を一体とさせる役割を持たせたという。大きな一つの空間の中で各居室が収まっているイメージなのだそうだ。
2階に設けられた複数の窓も特徴的だ。数を少なくしたからこそ、効果的に配置することが大切だと考えたという西本さん。敷地に脚立を持って出向き、高さや位置を決めたとのこと。あえて整列させずに、形や大きさを変えてランダムに配置した窓からは、絵画のように美しく切り取られた瀬戸内海を眺めることができる。
「コストは抑えたいけれども、広さは確保したい」という要望をただ叶えるだけでなく、家族がどう暮らしたいかというライフスタイルに向き合った西本さんのプランニング。おかげで眺めのよさなど、心晴れやかに暮らせる魅力が加わって、より愛着を持てる家になった。
テンポよく、密なやり取りを繰り返し
お施主さまが真に求めるものを探し当てる
将来に向けて考えられたこの話や、リビングにすべての居室が繋がる間取りのプランは、すべてKさま夫妻とともに考え、話し合った結果の提案だったという。
西本さんは建築家、設計者としてのこだわりはあるが、そのこだわりは常に住む方々の思いによりそったものでなければならないと考えている。ヒアリングを通してこの家族がどんな風に暮らしていきたいのかを感じ取り、そのうえでプランの提案をするのだそうだ。
ただ、そのヒアリングの徹底っぷりとプラン提案の素早さ、数多さは目を見張るものがある。「何を求めているのか、お施主さま自身もうまく言葉にできないことが多いと思うんですよね」と話す西本さん。何回も何回もプランやスタディ模型をつくって話し合うのは、何度も打ち合わせを重ねなければ見えてこないものがあると考えているからだ。話し合いでプランを大胆に変更したり、小さな改良を加えたりしていくと、最終的にはお施主さまが平面プランを見ながら、室内を歩く想像ができるくらいになるという。
それほど密なやりとりを、時間をかけずに行うのが西本さんの持ち味だ。ポンポンとボールを投げるように提案し、反応を見て素早く対応する。八坂の家でも、10個くらいのプランを提出し、やりとりしながら、それでも基本計画から着工までが半年と驚くほどスピーディーだった。
Kさまご一家は家の完成をとても喜び、今でも毎年、年賀状で家族の集合写真を送ってくださるという。「その年賀状を見るたびに、設計とは幸せな仕事だとあらためて感じます」と話す西本さんと一緒なら、愛着を持って、幸せに長く暮らせる家をつくれるに違いない。
基本データ
| 作品名 | 八坂の家 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県廿日市市 |
| 敷地面積 | 241㎡ |
| 延床面積 | 118㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | K邸 |
撮影:クリハラ写真館 栗原芙由樹
設計者情報
この建築家が建てた家
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