
豊かな自然が持つパワーを室内に取り込む
ガラスの欄間が巡る家
南北に長い敷地の特徴を生かして計画した
室内と屋外をひとつにするテラス
美しい田園風景が広がる田布施町。恵まれた自然が持つエネルギーが、家の中で満ち溢れるような家にしたいと考えた西本さんは、内部と外部が繋がる開放的なプランを提案。外壁を巡るガラス張りの欄間など、外観からして大胆なデザインとなったが、スタディ模型を製作しコンセプトを説明した。Mさま夫妻は「このプランが実際にどんな家になるのかすごく楽しみ」と、とても気に入ってくださったとのこと。
敷地は南北に細長く、東側に母屋、西側は隣家が迫っている。ただ、西側の隣家は家の敷地よりも低い場所に立つ平屋であり、また、南に位置する道路も敷地の一段下を走っている。しかも、道路はMさま家族以外で通る人がほとんどいない。
そこで西本さんは、外部からの目隠しの壁は道行く人や隣家、母屋から視線を遮ることができる程度とし、開放感や外とつながる心地よさを優先。道路に面する南側にLDKとテラスを設け、邸内の欄間はガラス張りとした。さらに、LDKとテラスの仕切りはガラス、目隠しの壁はテラスと室内で同じものを用いて連続性を持たせている。おかげで外と中の境界線があいまいになり、開放的で気持ちよく過ごせる空間ができた。
テラスには、雨上がりになると現れる小さな水たまりを計画。水がキラキラ光るのがとてもきれいとのことだが、それだけではなく嬉しいサプライズもあったという。
家を引き渡してからしばらくたった後、Mさまより「あの水たまりに野鳥が水浴びに来るんです」と報告を受けたという西本さん。「その様子が嬉しそうで」と語る西本さんは笑顔で、やはり嬉しそうだ。テラスという家のテリトリーの一部に野鳥がやって来るのをリビングから眺めていると、自然がより一層身近なものに思える。自然と家が一体化したように感じられるのだ。まさに狙い通りの、内部と外部が繋がる家、自然のパワーが感じられる家ができた。
壁面に巡らせたガラスの欄間により
光が家中に届く、大らかな空間が実現
また、玄関の手前から三和土までを砂利敷きとし、外部空間を室内に入り込ませた演出も心憎い。中から外へ伸ばすだけでなく、外から中へ引き込むことも意識することでより境界線があいまいになっていくのだ。
「欄間は、室内に光を届けることにも役立ちました」と西本さん。先述の通り下田布施の家は南北に長いつくりをしているため、南のテラスに向かって大きく開口しても奥まで光が入らない。しかし、欄間を巡らせたことであらゆる場所、角度から光が入るようになったのだ。
加えて、室内を仕切る壁も同じように上部はガラスの欄間を設けた。そのおかげで、外から入ってきた光が室内の壁の欄間を抜け、暗くなりがちな室内の中心部、水回りやウォークイン収納なども日光で明るくすることができたという。
欄間がもたらした快適さは他にもある。天井がひとつに繋がり1階の空間全体がおおらかにまとまったうえ、部屋の向こう側まで視線が抜ける伸びやかさも加わった。
プランニングの途中で建築旅行に行くチャンスがあり、そのとき見学したスリランカを代表する建築家であり、リゾートホテルなどを数多く手がけたジェフリー・バワの建物に影響を受けたという西本さん。風が抜け、まるで縁側でくつろぐような心地よさがどこにいても感じられる家になったのは、当然のことだ。
家族への思いを最優先にプランニング。
お互いを尊重し合える家にする
「小さいころ、Mさまはおじいさまと住んでいて、不安なことがあったり眠れなかったりするとおじいさまのところに行って一緒に寝ていたそうなんです。その気持ちを子どもたちにも受け継ぎたいと、いつか新築した家と母屋を廊下で繋ぐ予定でした。それなら、雨にも濡れない距離で繋げられるここが一番良かったんです」と西本さんは語る。
間取りも、要望を押さえたうえで何が大切かという優先順位を見極めて決めた。例えば2階の子ども室。階段を挟んだ両側に設けられた2つの個室の扉は、あえて腰の高さまでのスイングドアにした。また、子ども室内の階段に面した壁は光を通すポリカーボネートを用いている。これも、兄弟で生活音などを配慮し合い、お互いを気遣える優しさを持って欲しいという願いからだ。
子ども室は、1階の主寝室からも欄間を通してさりげなく見守ることができる。プライバシーを守りながら、けれど気配は感じられる距離感をつくることで、家族みんなが尊重し合えるようになれば、というのが目的なのだそうだ。
居心地のよさと家族への思いを表現した下田布施の家はグッドデザイン賞を受賞。それについて伺うと、受賞は結果的なことで、「自分が考えて表現したことを自分の中で完結しないで、いろいろな人の意見を聞いてみることが大事だと考えています。応募は、いいチャンスなんです」とのこと。
西本さんは元Jリーガー。どんなことも自らを高めるチャンスにつなげるこの言葉から、現役時代優れた選手だったことがわかる。サッカーに対するものと同じ情熱を建築に捧げ、常に建築家として前進する。家族それぞれの住まいや暮らし方を大事にし、何が大切かを見極めてプランに反映させる西本さん。Mさまはプランを見て「どんな家ができるか楽しみだ」とおっしゃったそうだが、それはきっと、どのお施主さまも思うことだろう。
基本データ
| 作品名 | 下田布施の家 |
|---|---|
| 所在地 | 山口県岩国市 |
| 敷地面積 | 170㎡ |
| 延床面積 | 88㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | M邸 |
撮影:益永 研司
設計者情報
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