
光を活かす設計と自由な素材使いで
遊び心と暮らしやすさを両立
小さな家がくっついた愛らしい姿
邸内は「広く感じる」工夫がいっぱい
独立して約7年。「ユウ建築設計室」のオフィスを兼ねた自邸建築にあたって吉田さんが掲げたテーマの1つは、「コンパクトでも広く感じられる住まいをつくる」だった。
現在、奥さまと2人で暮らすこの家は、1階が広い玄関土間とLDK、和室。そしてバスルームなどの水まわり。来客を意識した1階とは対照的に、2階は吉田さんが設計業務を行う仕事スペースと寝室、第2のリビングやウォークスルークローゼットというプライベートな空間になっている。
全体で共通するのは、ほぼ全ての間仕切りが引き戸であること。さらに1階のリビングは吹抜けなので、引き戸を開け放すと家の中が一体感のある大空間になり、各所の窓から入る明るい光が行きわたる。吉田さんによると、これは「広く感じられる住まい」のポイントの1つなのだそう。
「広く感じられる住まい」のもう1つのポイントは、1カ所に複数の機能を集約し、スペースを有効活用していることだ。例えば、広い玄関土間はDIYを楽しむための場所だが、窓際にベンチを設けて接客スペースとしても使えるようにする。洗面室とトイレは隣接させ、トイレの手洗いは不要にする。和室や寝室は床下収納を備える……などなど、1つの場所・モノが複数の役割を果たし、省スペースを無理なく実現している。
2階は、外観で目を奪われる「家にくっついた小さな家」のモチーフを大胆に取り入れた、とても楽しい空間だ。フロアの中に配された仕事スペース、寝室、ウォークスルークローゼットは、全て「おうち」の形。山形天井の大きな空間に、三角屋根の小さな家が3つあるかのようなデザインなのだ。
遊び心満載と思いきや、そこには別の意図もあった。「これも、空間を広く感じる工夫の1つです。各スペースの天井部を斜めにカットして山形にすると、カットされた部分に空間のアキができて視線が抜け、広く感じられる。窓から入る自然光が遮断されないというメリットもあります」と吉田さん。遊び心の裏に実用的な目的をさりげなく潜ませるテクニックは、見事としかいいようがない。
理屈で語れない独自のセンスで
素材の個性が調和する空間に
素材使いを実際に見る楽しみは、外観から始まる。外壁のメインは自然な風合いの掻き落としと独特の質感を出せる吹き付け仕上げ。さらに「家にくっついた、2つの小さな家」は板張りとし、1つは和の趣がある焼きスギを、1つはモダンな印象のカラマツを外壁に使っている。
こうした「素材の展覧会」は邸内にも続く。広い玄関土間の天井はニュアンスのある木毛(もくもう)セメント板。玄関を上がってすぐの床はスプーンで繰り抜いたような模様が楽しい、なぐり加工のオーク材。ほか、床は1階のLDKがカラマツ、2階のリビングや寝室はカバザクラ。2階への階段の踏み板は木目を縦横交互に3層に重ねてあり、切り口に表情が生まれるスギパネル。
特筆すべきは、これだけ多彩な素材を使いながらも、ちぐはぐな印象が皆無なことだ。壁や引き戸を含めた色合いのバランスが抜群によく、階段の手すりにアイアンを使うといった変化球も織り交ぜ、素材同士を巧みに呼応させているからだろう。
クールというよりは温かく、甘すぎないかわいさも感じられる空間は、ルイスポールセンのペンダントライト、マルニ木工の椅子といったこだわりの家具がよく映える。階段や吹抜けの大開口をはじめ、配置を熟考して設けられた窓からは気持ちのよい光や風が入ってきて、緑や夜景といった外の景色も空間を彩る。
全体のまとまりを出すコツはあるのか、吉田さんに聞いてみた。「どうなんですかね……。色はある程度統一させて、重くならないよう明るさも考えて……」と、(失礼ながら)若干あいまいな回答からわかったのは、ぬくもりや落ち着きと洒落た雰囲気を併せもつ素材使い・色使いは、我々が真似できない吉田さん独自のセンスから生まれるということだ。
これまで女性からの設計依頼が多かったと聞き、心の底から納得した。吉田さんは、家としての性能を担保する設計ノウハウやスキルだけでなく、アーティスト的なデザインセンスに秀でた建築家といえる。実用性を重視しつつ洒落たもの・かわいいものに目がない女性たちに選ばれるのは、当然のことだろう。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 千葉県船橋市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 166.01㎡ |
| 延床面積 | 92.04㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | Y邸 |
設計者情報
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