
緑を眺めゆったり。
ゲストと憩う暖炉付きテラスハウス
お気に入りアンティークを楽しむ、光と緑の中のおもてなし空間
味わい深い台湾製アンティーク暖炉を手に入れたFさんもそうだった。Fさんは四季折々の花と選りすぐりの調度品を扱うフラワーギャラリーのオーナーで、アンティークへの造詣が深い人物。家具や建具のコレクションを活かした自宅の増改築を何度も行っており、今回はもともとあった屋根付きテラスを改築し、暖炉を楽しむ空間をつくりたいとの要望を持っていた。
「暖炉をお使いになることが目的でしたから、最初はテラスの四方に壁をつくるだけでいい、と思っていらしたようです」と、依頼を受けた建築家の渡辺 仁さん。しかし、かねてよりF邸の部分的な改修を手掛けてきた渡辺さんは、「単なるハコではなく、庭の自然と調和する心地よい空間づくり」を計画。緑豊かな敷地環境や、来客の多いFさんのライフスタイルをふまえてのことである。
渡辺さんがまず決めたのは、既存のガラス屋根を大きなトップライトとして活かすことだった。かつ、増築する壁に大きなガラスの折り戸を入れ、空だけでなく庭との連続性を意識。床石はそのまま使用して、庭の一部とも感じられる“半戸外空間”をつくり上げた。
完成したテラスハウスは、トップライトから燦々と差し込む光と贅沢な緑に包まれて、室内といえども屋外にいるかのよう。折り戸を全開すれば木々の呼吸を感じるすがすがしい外気に満たされリフレッシュ。Fさん自らが選んだアンティークの扉や窓枠も、心安らぐ緑や、今回のプランの発端となった暖炉と見事に調和する。
空間を心地よく感じられる設計上のテクニックも、随所にちりばめられている。たとえば、窓から見える景色を絵画感覚で眺める小さなピクチャーウインドーや、天井が微妙に浮いて見えるガラス張りの隙間などで、視線の動きや軽やかさをプラス。また、トップライトを挟む2つの天井にゆるやかな勾配をつけ、四隅の一部は斜めにカットして空間そのものを多面体とし、柔らかい雰囲気を持たせている。
職人の手で丁寧に磨きあげた塗りのベンチは、Fさんのお気に入り。丸みのあるデザインが座ったときの身体に馴染み、夏はひんやりした感触も加わって気持ちがいい。冬は冬でこだわりの暖炉であたたまり、Fさんからは「テラスハウスの居心地がよくて、つい行っちゃうのよね」との感想をいただいたそう。このスペースの使用頻度は改築前に比べて格段に増え、ゲストを招いての展示会やおもてなしの場として大活躍しているという。
改築前のよさはそのままに、家での時間をさらに豊かにする工夫
なかでも心をくだいたのは、テラスハウスの存在によって母屋から庭を眺める楽しみを奪わないことだった。
そのため、母屋の中でFさんがいちばん長い時間を過ごすダイニングからの視線の向き、角度などを細やかにチェック。できるだけ視界を狭めない設計とし、壁一面の折り戸とアンティーク窓の配置も、母屋にいるときにたくさんの緑が目に触れるよう計画した。もちろん、建物として母屋との統一感を生むべく、外装・内装の色合いや素材にも気を配っている。
言い方を変えれば、渡辺さんは暮らしに新たな楽しみをもたらす場を、それまでの生活・空間のよさを損ねることなくつくりあげたということになる。
「最近、メキシコのアーティストにオーダーしたテーブルを入れたそうです。この空間をどんな風にアレンジして、どんな風に使うか。インテリアや過ごし方をFさんらしく自由に楽しんでいただけたら、設計者としては本当に嬉しいですね」
基本データ
| 所在地 | 愛知県名古屋市 |
|---|---|
| 延床面積 | 25㎡ |
| 家族構成 | 一人暮らし |
| 施主 | F邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

ストーリーを感じる空間は極上の居心地。 視界いっぱいに海が広がる、美しい青瓦の家
沖縄県では珍しいという木造住宅を数多く手がける建築家の岸田さん。優れた性能を確保することはもちろん、デザイン性の高さも岸田さんがつくる住宅の魅力のひとつだ。気候や風土、地域と調和し、住まう人が愛着を持てる家はどのようにつくられるのか。作品のひとつ「グランブルーテラス」を例にとり紹介する。

南北に抜けがあり、自然光と吹き抜ける風、 そして四季の移ろいや景観を満喫できる家
宮城県石巻市に、自然の豊かさを満喫できる邸宅が誕生した。 “南北に抜けがある、明るい自然光が心地よい家”という作品名の通り、南北の空を遮るものはない。四季を感じられる桜や楓を、室内や広いデッキから楽しむことができる。敷地の特徴を活かし、パッシブデザインの導入で環境にも優しい作品をご紹介しよう。

全ての居住空間から中庭を望む! 住宅密集地で叶えた開放感溢れる住まい
広い中庭を中心として、どの部屋からも中庭を望むことができるF邸。外の視線が全く気にならない開放的な住まいだが、実はこの家が建っているのは、住宅に囲まれた住宅密集地である。周囲からの視線が多い環境をいかにして打開し、理想の住まいをつくりあげたのか。今回設計を担当したmizuiro architects一級建築士事務所の葛西瑞樹さんにお話を伺った。

こんなに心地よい自然素材の上質空間!を低価格で実現の秘訣は?
「できるだけお金をかけずに、質の高い本物の木材で建てた家に住みたい!」。30代、共働きのSさんご夫妻は、建築家・市川均さんとともに、都会の喧騒を忘れさせる緑豊かなエリアにこの家を建てた。なぜ、ここまで費用を抑えられたのか?そこには、これまで多くの上質なローコスト住宅を手がけてきた市川さんならではの細やかな配慮や工夫があふれていた。

おうち時間を便利に、豊かに。 家族が憩うリゾートヴィラ風の住まい
建築家の齋藤文子さんが手がけたS邸は、アジアンリゾートのヴィラを彷彿とさせるナチュラルで心地よい空間。光や緑を間近に感じ、家事効率もよい理想的な家だ。どんな要望に応えるときも、生活しやすさ・楽しさをプラスする齋藤さんの設計の魅力とは?

自邸に選んだのは築40年のマンション。 長く快適に住むためのスケルトンリフォーム
建築家の田中晴代さんの自邸は、結婚後に購入しリノベーションしたマンションの一室だ。この家で暮らして8年、家族構成や働き方が変化していく中でこうしておけばよかったと感じる点がひとつもないという。このおおらかさはどのように生まれたのだろうか。

シンプルだけどチープじゃない じっくりとつくり込まれた、写真館兼自宅
「シンプル」という言葉の同義語は「単純」「簡素」「簡略」といったところだろう。しかし建築においては、シンプルなデザインだからといって単純なつくりでも、建築家が手間をかけずにつくるわけでもない。大人気の犬専門写真館をつくったのは、施主とじっくりと対話し、手間暇かけた仕事に定評のある建築家、服部さんでした。

古い空き店舗が建築の力でみんなの居場所に 社会課題の解決に繋がるリノベーション
空き家問題、放課後の子どもの居場所、地域コミュニティーの衰退など、日本には様々な社会課題がある。これらの解決に、とある古いクリーニング店が一役買っているという。その建物のリノベーションを手掛けたのは、YN studioの一級建築士並木さんだった。

パーゴラ、円形の吹抜けリビング…。 ホテル以上にくつろげる、リゾート風邸宅
オン・オフの切り替えができる住まいを望んだ施主さまに、ホテルのようなリゾート風の邸宅を設計したのは、東京・世田谷に事務所を構える株式会社フレイム。玄関を入る前からくつろぎの時間が始まる、上質な空間づくりのポイントを聞いた。




