
懐かしくて新しい!
大きな屋根の下で、家族も緑も守られる暮らし
ひとつ屋根の下に家族が集まる家
建て替え前の家は大工のおじいさんがつくった家だった。敷地の半分が住まい、残り半分が大工仕事をするや駐車場のあるオープンスペースだったところに、新婚だったIさんご夫婦が二階建てを建てた。その後、お子さんの誕生や成長などに伴って住む人の生活が変わるたびに、変化に応じて寝室をつくったり、階段をつけたりとどんどん手を加えた。初めて見た人には難解なパズルのように見える家も、住人にとっては住み慣れた家。その家を壊して新しい家を建てるのは決して簡単なことではない。いつの間にか増えてしまったものを片付け、建て替えのために引っ越し、新築した家のために家具を揃え、新しい家での生活に慣れるまで、1年がかりの仕事だ。毎回、打ち合わせに参加してくれて、判断に迷えば相談相手になってくれる娘さんたちがいるという安心感は大きかっただろう。
建築家の柳澤さんは、新築のプランを提案する前に、岩手出身の奥さまが結婚前に住んでいた家の写真を見せてもらったそうだ。それはゆうに300坪はある広い敷地に建つ、築200年の立派な屋敷だった。梁には、現代の家からすると信じられないほど太く長い檜が使われている。「写真を見せていただいて、その岩手の家での暮らしのような生活を東京のまん中でもしてもらえるような家にしたいと思いました。お父さんとお母さんにとっては終の住処になるわけですから、やっぱり豊かな場所に住んでもらいたい。そこで『ひとつの大きな屋根の下で暮らす』というコンセプトをお示ししました。」と柳澤さん。大きな屋根の下、LDKも和室も寝室もひとつながりの空間になっている木の家を提案した。
コンセプトには何の異論もなかった。どちらかが倒れても1階で生活できるように、ご主人が車を運転しなくなったら部屋にできるようにガレージも室内に入れてと、先を見据えながら、計画をすすめた。「若いお施主さんは建てる前に何でも決めておかないと不安になってしまう方も多いのですが、お父さんお母さんの世代は気持ちにゆとりがありますね。もともと住み始めたら自分たちでどうにかするという感覚をお持ちなので、こちらも安心して預けられます」と柳澤さん。ご夫婦でゆったりと静かに暮らしてもらえるような家が完成して、さあ、これから住み始めようという頃だった。
この家が引き寄せたのだろうか。引き渡しと相前後するようにして、お孫さんが次々に誕生した。一気に賑やかになり、奥さまは「ゆっくりするつもりだったのにね」と言いながらも嬉しそう。週末に娘さんたちが家族連れでやってくると、夜、帰る時にはご主人が車で順番に送っていくのが恒例だという。ガレージが部屋に変わるのはまだまだ先のことのようだ。
新しさと懐かしさのある木の家
床はフローリング、壁にも木が使われている。木目を残すようにうすく塗装した木材だ。「普通だと壁は石膏ボードで、柱も隠してしまいますが、なにかひと工夫できないものかと考えました。そこで、壁の外側を防火的にも断熱的にもカチッとつくり、室内側に木材を使えるようにしました」。外を城壁のようにかためることで、壁の内側に木が張れるようになった。柱を見せる真壁にしてあり、岩手の古い家や建て替え前の家を思わせる。前の家から持ってきた調度品や娘さんと選んだ木の家具も、この木の家にすんなりとなじんでいる。
基本データ
| 所在地 | 東京都文京区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 115.98㎡ |
| 延床面積 | 132.48㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | I邸 |
設計者情報
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